「けむたい姉とずるい妹」(毎週月曜夜11:06-11:55、テレ東系)が11月27日に最終回を迎え、じゅん(栗山千明)とらん(馬場ふみか)、そして律(柳俊太郎)が、呪いのような“家族の絆”から解放されて、自分らしく生きる事を決めた姿が描かれた。そして、じゅん・らん姉妹の長年の確執も、それぞれの成長と気付きによって解消された。(以下、ネタバレを含みます)

■「お姉ちゃんから貰ったもの、全部返す」

同ドラマは、ばったんによる同名のマンガが原作。妹の略奪愛が原因で音信不通の不仲となった姉妹が母の死をきっかけに同居することになり、姉・じゅんの元カレで現在は妹・らんの夫である男性・律を巡る争いを軸に、それぞれの心の傷と向き合い成長していくストーリーだ。

自分と向き合い、律への感情は愛ではなく、自分を見てくれなかった母親の代わりにして寂しさを埋めようとしていただけだったと気付いたらんは、律と離婚する事を決めた。そして、予想外のらんの決意に戸惑うじゅんに、素直に「ごめんなさい」と今までの事を謝った。だが、じゅんはどう対応していいのかわからず、「そういうのいいから。キモいからやめて」と気まずそうに言い、謝ったから許されると勘違いしないでほしい、とケンカ口調で返すしかなかった。

そんなじゅんに、「許すのは難しいことだから、許さなくていい。謝ったのは自己満足」と告げるらん。短期間で格段に成長して、相変わらず憎まれ口しか叩けない姉のじゅんの方が子供っぽく見えてしまう。

「家族の絆」は呪いみたいなもので、逃げてもどこまでも追いかけてくる。だから自分から断ち切ることにしたのだ、と自らの決意の理由をじゅんに話すらん。そして、じゅんから奪った母親のネックレスを返しながら、「お姉ちゃんから奪ったもの、全部返す」と告げて、らんは1人で家を出て行った。

■1人になった家でじゅんは…

残された律は、らんの名前が書きこまれた離婚届と彼女の結婚指輪を見つめながら、らんのことばかり頭に浮かぶのだった。じゅんは、再び律と2人きりになった夜、縁側で佇む彼の背中に声がかけられなかった。そして翌朝、これまでさんざん思わせぶりな態度をとってきた律に、自分はどんな存在だったのかと尋ねたが、彼は「ごめん…」としか答える事ができず、家を出て行った。

広い家で1人になったじゅんは、先日らんに言われた「正論を吐ける人生がうらやましい」との言葉を思い返した。意図したわけではなかったが、結果的にそうやって誰かを追い詰めてきたのではないか、と今までの自分を振り返った。
■じゅんへの想いは、愛ではなく憧れだったと気付いた律

後日、荷物を取りに家に戻ってきた律は、じゅんに、自分にとってじゅんは憧れだったのだと告げた。高校で出会った時から、まっすぐで強くて自分の正しさを持つ、きれいな目をした彼女がまぶしくて、じゅんのようになりたいと憧れていたのだと。その感情は恋愛ではない。だから、そもそも上手くいくはずがなかったのだ。でも律は、じゅんに再会して彼女を求める気持ちを止められなかった。一方じゅんも、律と再会し、高校時代のキラキラした関係へのノスタルジーから彼を求めたのかもしれないと感じていた。2人とも、お互いへの気持ちの正体がわからないまま、突っ走ってしまっていたのだ。

律は、これからは欲しいものは諦めずに自分で取りに行き、じゅんに嫉妬しない人間になると彼女に告げ、久々に自分から母親に電話をして、らんと離婚したこと、そして小説を書き始めたことを報告した。彼が母親と向き合って、自分の想いを伝えたのは、大きな一歩だ。

■「家族は選べないけど、どうするかは自分で選べる」

らんは、律との関係も整理し、姉と母のことも忘れて、1人で海外に旅立つことにした。空港に向かう彼女を、じゅんが追ってきて「まだ言い足りないことがある」と、母親の墓前にらんを連れて行った。そして「家族の絆はいつでも切れるから、切りたくなったら切ればいいし、頼りたくなったら頼る。家族は選べないけど、どうするかは自分で選べる」と、らんに告げるのだった。

それから1年。じゅんは心理カウンセラーとして順調に仕事をこなし、律は子供向けの小説で作家デビューを果たした。内容は、ずっと温めていた“カメの背中に乗ったウサギ”の話だ。

■1年ぶりに再会した姉妹は…

ある日、じゅんが帰宅すると、誰もいないはずの家に明かりが…。玄関も鍵がかかっておらず、不審に思いながら家に上がると、らんが待っていた。今日はらんの誕生日で、海外のひとり旅から1年ぶりに帰国した彼女は、じゅんに祝ってもらおうと家に来たのだった。

無邪気に甘える妹と、ウザがる姉。お互いに「キラい」と言いながらも、穏やかな時間が流れていく。そしてらんは、じゅんがタバコを吸っていても、以前のように「けむたい!」と怒る事はなかった。じゅんは、子供の時に自分から奪ったおもちゃの変身ステッキを持ってはしゃいでいる妹を見ながら、「家族ってめんどくさい…」とぼんやりと考えていた。選べないし、人生をメチャクチャにされるし、なかなか捨てられないし…とマイナスな事ばかり浮かんだが、じゅんの表情は穏やかだった。そして、彼女は生まれて初めてらんに言った。「誕生日、おめでとう」。それを聞いたらんは、とびきりの笑顔を見せた。

この姉妹は、もう以前のように憎しみ合う事はないだろう。もし同居をしなかったら、ぶつかる事もなく、自分を見つめる事も出来ず、今でも険悪な関係のままだったはずだ。今の彼女たちは1人で自分の選んだ道を歩いて行けるようになったからこそ、良い距離感で付き合っていけるようになったのだ。まさに文字通り「ケガの功名」となったわけだ。

■気になる律の様子

姉妹水入らずで誕生日を祝っている姿を、律は庭から黙って見ていた。ドラマ上では、この1年、彼が2人と交流があったのかはわからないし、食事の誘いを用事があると断ったのも、家に来たのも、らんに呼ばれたからなのか、「誕生日だから、らんが来るのでは…」と勘が働いてやって来たのか、など、疑問は尽きない。SNSでは、律にもう姉妹にかかわらないでほしいとの意見も多かったが、自分の望む人生を歩き始め、以前とは変わった律と、じゅんとらんが気楽な関係を築けるようになれば、いとこのひかる(桜田通)も交えて新たな交流が生まれるかもしれない。

◆文=鳥居美保

※柳俊太郎の柳は正しくは「木へんに夘」