「仮面ライダーリバイス」(2021年、テレビ朝日系)にて門田ヒロミ/仮面ライダーデモンズを演じ、注目を集めた俳優・小松準弥が、12月2日(土)より上演がスタートする歌劇『桜蘭高校ホスト部』Fineに須王環役で出演する。

幼い頃から憧れていた「仮面ライダー」作品への出演を見事叶え、ますます躍進している小松。「俳優以外になりたいものはなかった」と語るほど、この仕事にこだわる理由をひも解いた。

■藤岡弘、に憧れて俳優の道へ

――最初に、小松さんが俳優を目指したキッカケを教えてください。

小さい頃から仮面ライダーが大好きだったんです。なかでも、仮面ライダー1号の藤岡弘、さんが好きでして。僕の地元の宮城県石巻市は、仮面ライダーの生みの親・石ノ森章太郎さんの第二の故郷と言われている場所なんです。石ノ森萬画館という施設ができて、そのオープンイベントに藤岡さんがご出演されていました。それで、当時、小学2年生だった僕は藤岡さんに握手をしてもらったんです。

自分の目の前に本物の藤岡さんがいるということが衝撃でしたし、藤岡さんは渋くてダンディーな方という印象をもつ方が多いかと思うのですが、僕にとってはすごくキラキラした存在で。それが俳優を目指したいと思ったきっかけです。
――憧れの方に直接会う機会があって、そこで思いが強くなったんですね。

ただ、僕の周囲の人からすると、芸能人は雲の上の存在という感じだったので「芸能界なんて無理だよ」と言われることが多くて、だんだんと僕も口に出さないようにしていたんです。でも、じゃあ何になりたいのかって他の道をいろいろ考えても、やっぱり俳優になりたいという気持ちが消えなくて。だから、大学生になってからいろいろと行動を起こして、今に至ります。

――仮面ライダーに憧れて俳優を目指し、そして実際に2021年より放送の「仮面ライダーリバイス」にて門田ヒロミ/仮面ライダーデモンズ役を射止めました。

去年、石ノ森萬画館で開催されたイベントにゲストとして呼んでいただける機会があったんです。そのときに、子供たちがたくさん集まってくれて、「サインください」「握手してください」と言ってくれて。今の子供たちが、当時、僕が藤岡さんと会ったときのような気持ちを感じてくれていたら、それほどうれしいことはないですし、少しでも夢を与えられていたら幸いです。

■満を持しての「仮面ライダーリバイス」出演

――「仮面ライダーリバイス」は小松さんにとってテレビドラマ初出演作でもあります。放送が終了した今、当時を振り返ってみていかがですか?

やっぱり仮面ライダー作品に出たいというのが僕の大きな夢のひとつだったので、初めてのことだらけでしたけど、それすらすべて楽しかったです。実は僕、「仮面ライダー鎧武」、「仮面ライダードライブ」のオーディションも受けていて、最終選考まで行ったこともあったんです。

「リバイス」のプロデューサー・望月卓さんは、僕がこれまでにもオーディションで悔しい思いをしていたことも、仮面ライダーが大好きだということも知ってくださっていました。衣装合わせで初めて東映に行ったときに、望月さんから「ようこそ」と仰っていただけたときは、言い表せられないぐらいの感情が込み上げてきました。この気持ちを噛み締めようと強く思ったのを今でも覚えています。
――「仮面ライダー」作品のオーディションは俳優としての魅力だけではなく、その年のテーマ性に合っているかも重要視されると言われていますよね。まさに「リバイス」では、満を持しての出演だったのかなと。

そうですね。それこそ、これまで舞台でのお仕事をたくさんやらせてもらっていたので、その経験値があったからこそ、現場ではアクション含め俳優として求められていることにすんなり対応することができたのかなと。

自分がそうやって要望に応えられる状況で「リバイス」に出演できたのも、タイミングとしてはよかったと思いますし、全力で仮面ライダーの世界を生きる準備をこれまでしてきたんだと感じました。やっぱりすべての点と点は繋がっているんだ、と実感できた日々でした。

――キャストの方々とは今も連絡を取られているんですか?

みんなと取っていますね。この間も井本彩花さんの誕生日だったので、みんなでおめでとうとメッセージを送ったり。あとは濱尾ノリタカも「近々、家に行っていいですか?」と連絡をくれました。濱尾とは、お互いにメンタルを支え合えるような存在なんです。もちろん、前田拳太郎や日向亘ともいい関係が続いていますし、今後も仕事をやっていく上で大事な仲間ができました。この絆はこれからも大切にしていきたいですね。

■蜷川幸雄から学んだ役者としての基盤

――これまでの活動の中で、とくに印象深い作品を教えてください。

初舞台となったNINAGAWA×SHAKESPEARE LEGEND「ロミオとジュリエット」(2014年)は印象に残っています。右も左もわからない状態でしたが、蜷川幸雄さんに“自分が自分であるためのお芝居”という考え方を教えていただいたんです。自分がやるからこそどうするんだ、という役者としての基盤というか、大事なことを学ばせていただいたなと。

そして、舞台出演2作目となった『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』(2016年)では、初めて役付きで、蓮巳敬人という役をやらせてもらいました。そのときに、蜷川さんの言葉を思い出して、僕がやれることはなんだろうと考えながら役に向き合うことができたんです。“あんステ”は2年間やらせてもらいましたし、今でも自分の基盤になっている作品です。

――それこそ「仮面ライダー」作品は、小松さんの俳優としての基盤になっている“自分だからこそできることは何か”というものが色濃く出る作品なのかなと。

そうですね。俳優自身の特性を活かしながら、どんどん展開が変わっていくというのは「仮面ライダー」ならではですよね。僕が演じた門田ヒロミの出身地が、僕と同じ宮城県石巻市という設定になったこともそうですし。それは、すべての関わったスタッフさんたちからのプレゼントだと感じていますし、悔いなく役を生き切ることができたので、本当に感謝しています。

――では、ターニングポイントだと感じた出来事はありましたか?

舞台「アラタ〜ALATA〜」(2017年)です。もともとは、早乙女友貴さんが主演をされていた作品なんですけど、観劇してとても感動したんです。自分もこんな殺陣をできるようになりたいと思って、演出担当の岡村俊一さんに「僕も出演したいです!」と直談判しにいって。そうしたら、公演期間中にも関わらず、チャンスをいただけることになったんですけど、10日間、20時間で1000手の殺陣をマスターすることが条件でした。

――短い期間で1000手の殺陣というのは、だいぶ厳しい条件だったのでは?

だからこそ頑張りましたし、できなかった、というのは許されないと思っていました。今振り返っても、僕の中でも大きな挑戦でしたし、条件を達成して、早乙女さんの後を継いで主演をやらせていただいたときに、自分にはもう怖いものはない、と感じました。

――小松さんは剣道を10年やられていて、全国大会にも出場経験があるそうですね。学生時代のその経験が今のメンタリティに繋がっているのかなと。

それはあると思います。剣道は礼儀作法から学びますし、剣の道と書くように、ひとつの道を極めるために鍛錬していきます。その経験のおかげで、忍耐力や謙虚さというものは自分の中に染みついているので、たぶん何事も極めていきたいタイプなんだと思います。

■東日本大震災を経験し、考え方に変化

――12月2日からは、歌劇『桜蘭高校ホスト部』Fineにもご出演されます。“ホスミュ”は今作で幕を閉じることとなりますが、初演から須王環を演じてきた小松さんとしては、どのような思いを持っていますか?

ここを目指してやってきたというところもありますし、“ホスミュ”としての集大成にもなるので、大切に演じていきたいなと思っています。2.5次元作品の中でも、しっかりとフィナーレと銘打ってやらせていただける作品は少ないと思うので、すごく幸せに感じています。もちろん、それは応援してくださるファンのみなさまとスタッフの方々のおかげなので、期待に応えられるように精一杯やらせていただきます。

――今後、俳優として挑戦してみたいことや目指していることはありますか?

もっともっとお芝居を極めたいです。これまでいろいろな経験をさせてもらってきたからこそ、経験値や技術、表現力という引き出しは、僕の中にあると思うんですけど、それをもっと大きくしていきたいし、ひとつひとつの精度を上げていきたい。そのために、今はさまざまなレッスンを受けさせてもらって、自分と向き合う時間を作っています。

――お話をしていると、何事も前向きに捉えている印象ですが、そのような考え方をされるのはもともとの性格でしょうか?

いや、昔はそれこそ人前で喋るのなんて嫌だったし、学芸会でも一番セリフが少ない役を選ぶくらいシャイでした。でも、東日本大震災を経験してから、少しでも後悔しない生き方をしたいと考え方が変わりました。だから、芸能界にも飛び込めたし、前向きさもそこから来ているのかなと。

僕が俳優という仕事にこだわる理由は、小さい頃に藤岡さんに会った時もそうですし、たくさんの芸能人の方が被災地に来てくれたことが、すごくうれしかったからなんです。会えたことで元気が出て、明日も頑張ろうと思える。人に笑顔や勇気を与えられる、誰かのそういう存在に僕はずっとなりたかったんですよね。だから、それがずっと根っこにあります。

――プライベートでのリフレッシュ方法についても教えてください。

地元の親友に会うことですね。その親友のお父さんが僕の剣道の先生で、僕も実の父親のように接している人なんです。あとは母親、おばあちゃんに会うのもリフレッシュになります。

もちろん、ファンの方々と接することも力になっています。お手紙をいただくだけでもとてもうれしいのですが、イベントなどで直接お話できるのはやっぱり特別ですね。僕の次の作品を楽しみに頑張っていますというお話を聞くと、自分の活動はちゃんと届いてるんだなと実感できます。
◆撮影=八木英里奈/取材・文=榎本麻紀恵/ヘア&メーク=田中宏昌/スタイリスト=齋藤良介