MBS・TBS系列全国28局にて放送・配信中のアニメ「呪術廻戦」(毎週木曜夜11:56-0:26ほか、TBS系/ABEMA・ディズニープラス・Huluほかにて配信)の第2期20話(第44話)「理非-参-」が12月7日に放送された。目の前の惨状に呆然と立ち尽くす虎杖悠仁(CV.榎木淳弥)。虎杖の心はもう限界を超えていた。一方、思い描く理想の展開に「呪い」として興奮する真人(CV.島崎信長)は、さらに虎杖に追い打ちをかける。ついに真人はトドメを刺そうとするが、そのとき東堂葵(CV.木村昴)が現れる。アニメオリジナル満載となった今話は、特に東堂の黒閃に注目が集まった。(以下、ネタバレを含みます)

■遅れてきた助っ人、ブラザー東堂

慕っていた七海健人(CV.津田健次郎)に続き、釘崎野薔薇(CV.瀬戸麻沙美)までもが目の前で非業の死を遂げる。虎杖の心は限界を超え、元凶の真人はその様子を見て「ゾクゾクする!!自分の才能に!!」と愉悦に高ぶりながら黒閃を決める。無抵抗のままにやられ、真人がトドメを刺そうと鎌を振り抜いたとき、静寂の中に「パン!」と拍手(かしわで)が鳴り響く。それと同時に虎杖が真人の前から消え、平家物語の一節を詠いながら悠然とした足取りで1人の男が現れる。遅れてきた援軍は、自称“虎杖のブラザー”の東堂だった。

「起きろ虎杖(ブラザー)!」と倒れ込んでいる虎杖に発破を掛ける東堂。しかし、爺ちゃんの最期の言葉を胸に人を助けるために生きてきた虎杖にとって、今自分の目の前で起きているのはその信念と真逆のことばかりだった。宿儺を抑え込めなかったことで渋谷の人々が大勢犠牲になり、渋谷駅の戦いでは一般人が真人に改造人間にされて次々と巻き込まれていく。そこに追い打ちをかけるように起こった2人の死だったのだ。自分の信念だと思い、宿儺を取り込んでから呪術師としてやってきたことは、自分のための言い訳でしかなかった。そう嘆き、立ち上がれない虎杖は、「俺はもう俺を許せない」とうずくまってしまう。

そんな虎杖に東堂がかけた言葉は、呪術師として生きる者の因果を説くものだった。「散りばめられた死に意味や理由を見出すことは時に死者への冒涜となる!!」「それでも!!オマエは何を託された?」と投げかけられ、虎杖は七海と釘崎の最期の言葉を思い出す。同行していた新田新(CV.浅利遼太)に釘崎の助かる可能性はゼロではないと聞かされると、再び立ち上がり、真人に挑んでいく。

■黒閃で東堂のキモさが爆発

「呪術廻戦」第2期のバトルシーンは、そのときクローズアップされるキャラクターによって作画と演出に変化が現れるのが特徴になっている。宿儺と漏瑚の一戦は荒ぶるタッチで大スケールの地上戦が表現され、脹相と虎杖の一戦は電光板など渋谷駅構内のオブジェを効果素材として利用し、リアルスティックな描写を作り出していた。そして東堂が参戦した今回は、随所に漫画チックなカットが飛び込んでくるのがポイントだった。何でもありの真人と、脳内妄想が激しいキモ格好いい東堂のせいなのか、違う世界線のバトルのよう。その面白さの中、極めつけは東堂の黒閃シーンだった。

唐突にギャラクシーゾーンに突入し、きらめきを帯びながら加速していく東堂。何だかむさ苦しいことを言いながら黒閃を繰り出すのだが、この「たんたかた〜ん」の一瞬には理解不可能な情報が大量に詰め込まれていた。スロー再生で見ていくと、(おそらく東堂が勝手に妄想している存在しない記憶である)京都校の仲間と虎杖との青春、友情シーンと、東堂がゾッコンの高身長アイドル・高田ちゃんとの回想がめくるめく日々のように差し込まれており、最後にはトラウマになりそうな東堂のひどいキス顔が画面奥から迫ってくる。

これには視聴者も騒然として、「突如視聴者の脳内に溢れ出したのは東堂葵の青い春と存在しない記憶」「東堂の黒閃頭おかしくて笑った」「大好きな東堂がちゃんと気持ち悪くて良かった」といったコメントがXに続々とあがる。中にはこのシーンに「僕のヒーローアカデミア」を連想した人も多くおり、「東堂がクソキモいオールマイトw」「ワンフォーオールを受け継いでオールマイト化した東堂、一生おもろい」など、ネタ(?)に喜ぶファンも続出していた。

ちなみにこの黒閃のときの演出は、原作には全くないアニメオリジナル。遊び心がありつつ、東堂というおかしなキャラクターをこれ以上ないくらいに表現してくれたと言っていいだろう。原作勢は気付いたと思うが、胸のペンダントが妙にクローズアップされているのにも実は意味がある。また、最後に迫るキス顔は原作15巻の扉絵に描かれているものであり、興味がある人は元絵のキモさも見てみるといいだろう。

※島崎信長の崎は正しくは「たつさき」

■文/鈴木康道