コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、ヤンチャンWEBにて連載中で、沖田臥竜さんが原作を、信長アキラさんが漫画を手掛ける「ムショぼけ〜懲役たちのレクイエム〜」。

この作品は「14年ぶりに出所したら世の中変わっていた話」として、2024年3月18日にX(旧Twitter)にて投稿されると、瞬く間に7000件以上のいいねを集めて話題になった。このポストには「めっちゃおもろいやんけボケコラァ!!!」「すばらしい」「最高!」といったコメントが殺到。この記事では作者の沖田臥竜さん・信長アキラさんに、作品のこだわりなどについてインタビューを行った。

■2ヶ月ぶりのシャバで…

自称元ヤクザの三浦ヒロは、アウトロー系YouTuberの”HIRO”として活動している。
ある日、ヤクザ時代のアニキで、14年間刑務所に入っていた陣内に会いにいくことに。それを嫌がるヒロ…なぜならHIROと陣内にはある因縁があった。

平成9年。まだヒロがカタギだった頃に遡る。
窃盗で捕まったヒロは、2ヶ月間の拘留を終えシャバに出た。門の前には先輩である陣内の姿が。迎えに来てくれる友達もいないヒロを、放免祝いしにきたという。半ば強引に車に乗せられ着いた先は…。

紹介されたのは陣内が所属する徳島組の若頭である平松だった。陣内は息を吐くように嘘を重ね、ヒロがどうしても組に入りたいと言っているから、入れてやってほしいという話に。話はとんとん拍子に進んでいき…。

「オレ、ヤクザなんて無理やって!」と、逃げ出すヒロ。突っかかってきたチンピラたちをどやしているところを、陣内に見つけられ呆気なく連れ戻される羽目に。

口だけは達者な小心者ヒロの、どけちヤクザ組から逃げられないドタバタ任侠生活がはじまる。


■漫画・信長アキラさん「タッグを組んで単行本を出せたことが夢のようです」

ーー『ムショぼけ〜懲役たちのレクイエム〜』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

沖田:秋田書店の担当編集のかたからご連絡をいただき、信長アキラ先生がドラマ「ムショぼけ」を観て、私と一緒に仕事をできたらというオファーからのスタートでした。幾度か担当編集のかたと打ち合わせを重ねて、同じ「ムショぼけ」をやるならば、小説にもドラマにも描かれていない陣内宗介とヒロの過去にフューチャーし、新しいムショぼけの世界を書き下ろしていこうとなったのがきっかけです。

信長:2021年に朝日放送より放映されたドラマ「ムショぼけ」に感動しぜひ漫画を描かせて欲しいと、編集部を通じて沖田臥竜先生にコンタクトをとって頂きました。それが実現し、こうしてタッグを組んで単行本を出せたことが夢のようです。

ーー今作を描くうえで「こだわった点」や、「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。

沖田:ドラマ「ムショぼけ」でも小説でも私が1番こだわったのは、私の地元、兵庫県尼崎市を舞台にすることでした。それをマンガ「ムショぼけ」でも大切にしています。今、物語の軸になっている平成9年は暴走族が消滅していく時代の転換期になります。そこで陣内とヒロはどんな時代を過ごして現代へとつながっていくか。そこには当たり前の喜怒哀楽があり、それを物語を通して感じていただければと思っています。

信長:笑いと人情を感じられるのが、小説、ドラマの「ムショぼけ」でした。今作はバイオレンスシーンが多く緊張感ありながらも、その部分は大事にしていきたいと心掛けています。また、私も沖田先生と同じく近畿在住ですので、地元ならではの息遣いを感じて欲しいですね。

ーー今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

沖田:物語を作る上で1番強いのは取材ではなく、実体験なんです。それを取り入れることができる作品は観る側、読む側にリアルティーを感じてもらうことができると思います。そこから生まれるのが生きたセリフです。ムショぼけという言葉ひとつにしても、一般的には知られていませんでした。それを物語を通して伝えていくことも私の仕事だと思っています。登場人物1人1人のセリフの言い回しには、私なりの経験から生み出したこだわりを入れているので、そこに惹きつけられて欲しいと思っています。

信長:第5話のヤクザならではの会話で半グレを黙らせる場面。ここは沖田先生の実経験が生きるリアルなシーンで、説得力あります。同じく第5話のCBX400F暴走シーン。友人に実機を取材させて頂いたので臨場感を出せました。

ーー普段作品を描く際に大切にしていることがあればお教えください。

沖田:登場人物の個性です。私はその個性をセリフから作っていく作業を大切にしています。難しい言葉や特別、目立ったクセを使わなくとも、個々にキャラクター立ちさせることはできます。だからこそ、登場人物が読者や視聴者の方々に共感を得ることができるのだと思っています。キャラクター作りはいつも大切にしています。

信長:「楽しんで描く」をモットーとし、気分が乗らないときは描かないようにしています。

ーーご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。

沖田:一巻はあくまで、小説「ムショぼけ」、ドラマ「ムショぼけ」がマンガになって帰ってきたことを伝えることが目的で、ここから小説にもないドラマにもない派手さで緊張感を与えていきたいと思っています。その上で、いつも私が物語のテーマにしているのが笑えて泣ける物語を作っていくという事です。どの作品からも最後は胸が締め付けられて、寂しい気持ちになる、また登場人物に会いたくなる、という作品を残していきたいと思っています。

信長:少しでも多くの方に面白い!と言ってもらえるような漫画を描き続けていきたいです。作品の映像化も目標の一つです。

ーー最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

沖田:読んでくださった読者の方々に愛される作品にしたいと思っています。ここから一気にドライブがかかっていきます。まだまだ始まったばかりですが、ずっと続く物語をムショぼけで描いていけたらと思っております。愛される作品になれますように。

信長:すでに沖田先生より、先のシナリオを頂いております。これからグッと、さらに2〜3段階ハードな濃い展開になります。早く描きたくてたまりません…ぜひ楽しみにしていて下さい!