サラリーマン・三上悟がスライムのリムル=テンペスト(CV:岡咲美保)として異世界に転生、さまざまな種族が共に暮らせる理想の国作りに奮闘する「転生したらスライムだった件」(毎週金曜夜11:00-11:30ほか、日本テレビ系ほか/ABEMA・ディズニープラス・TVerほかで配信)。2021年以来となるTVアニメシリーズ第3期では、「魔王達の宴(ワルプルギス)」を経て正式に魔王となったリムルの元へ、魔物を敵視する神聖法皇国ルベリオスの聖騎士団長・ヒナタ(CV:沼倉愛美)が訪れる「聖魔対立編」が描かれる。第50話(第3期2話目)は、中庸道化連やルベリオス、ファルムス王国から見た魔王リムル誕生へのリアクションを描いた「聖人の思惑」。(以下、ネタバレを含みます)
■クレイマンへのやや冷ややかな反応も一興?
「魔王達の宴(ワルプルギス)」にてリムルがクレイマン(CV:子安武人)を倒したことを知り、ショックを受ける中庸道化連。組織のボスであるユウキ・カグラザカ(CV:花江夏樹)は、魔王たちのことを甘く見ていたことを反省、クレイマンに預けていた拠点や軍勢、財産までも失った損失は大きいと判断して、しばらくの静観を決める。
クレイマンの後ろ盾であり、黒幕である中庸道化連のメンバーが久々に勢揃い。クレイマンと言えば、姑息で狡猾な卑怯者ではあったが、最後の最後まで中庸道化連の仲間たちのことは慕っていた。今回の描写で、ラプラス(CV:中井和哉)以外の仲間たちも本気でクレイマンのことを心配していたことが明らかになった。第2期のラスボスとして視聴者のヘイトを集めまくり、小物ながらも究極のヒールとして立ち振る舞ったキャラクターだけに、SNSでは「クレイマンにも悲しんでくれる人がいてよかったな」「全然悲しくないんだがw」と、やや冷ややかな反応も。実際のところは分からないが、ミリム・ナーヴァ(CV:日高里菜)の力を経て暴走し始める前のクレイマンは、仲間からしてみれば、どこか抜けた、守ってあげたくなるキャラクターだったのかもしれない。ちなみに中庸道化連の目的は「世界制覇」だが、途中から組織のボスとなったユウキの真意は謎に包まれている。彼が中庸道化連を利用して何かを企んでいる可能性は大きく、今後の動向にも注目していきたい。
■ヒナタの過去と信念が明らかに
神聖法皇国ルベリオスの聖騎士団長・ヒナタの目線から、これまでの彼女自身の過去が語られる。師であったシズ(CV:花守ゆみり)のやり方を「手ぬるい」と感じてたもとが分かったこと。強くなるために西方聖教会に入団し、1年で聖騎士(ホーリーナイト)に、2年で聖騎士団長にまで上り詰めたこと。法皇の正体がヴァンパイアであることに気づいて戦いを挑んだ末、魔王であるルミナス・バレンタイン(CV:Lynn)に敗れて軍門に下ったこと。さらにヒナタはルミナスの考えに賛同したことで、今では忠義にあつい側近となっていたのだった。
これまで明かされてこなかったヒナタの心情がついに描かれた。第30話(第2期6話目)「動き出す麗人」でリムルの前に現れたヒナタは、こちらの言い分を一切聞こうともしない頑固者なイメージが強かったが、彼女は彼女なりに悩み、結果としてルミナスによる統治に希望を見出したのだ。ルミナスは魔王でありヴァンパイアではあるものの、国民に危害を加えることはなく、それでいてルベリオスは西側でも随一の秩序と公平さが保たれていることを考えれば、ヒナタが納得するのも頷ける。ファルムス王国と手を組んでテンペストに攻め入った判断は結果として失敗に終わったものの、基本的には教義にのっとったものであり、敬虔な信者であるヒナタからすれば当然のことだったのかもしれない。ともあれヒナタは、これまでのイメージほど冷酷非情な人間ではないということが分かったことは大きく、彼女に対する解像度が上がったシーンとなった。
■ヴェルドラの凄さ&ヒナタの頑固さに反響
そんな折り、ルミナスの代わりに魔王を名乗っていたロイ・ヴァレンタイン(CV:水中雅章)が殺されたことが分かる。ロイの双子で法皇のルイ・ヴァレンタイン(CV:水中雅章)とヒナタは、「魔王達の宴(ワルプルギス)」から帰還したルミナスを交えて現状を整理し、今後の対策を検討する。新たな魔王となったリムルを警戒し、その盟友であるヴェルドラ=テンペスト(CV:前野智昭)を倒すことを進言するヒナタだったが、ルミナスは「ヒナタはヴェルドラには勝てない」と説く。ヒナタはさらに、リムルの存在が天使の侵攻を早める可能性があると指摘するも、ルミナスは今は傍観するほかないと結論づけるのだった。
中庸道化連に続き、ルベリオスでも魔王となったリムルへの対策会議が開かれたが、ここでも結果は同じで「傍観」。自陣営の力を削られたために静観を決め込んだ中庸道化連とは違い、こちらはヴェルドラの圧倒的な力に対する警戒が強く、下手に手が出せないといった雰囲気だ。またこのシーンで面白いのは、ヴェルドラへの評価の高さと、それに挑む気満々のヒナタだろう。ルミナスはヴェルドラのことを「あれは自然エネルギーそのもの」と評するなど、魔王クラスから見ても脅威であることを認めてヒナタに自重を求めるも、そのヒナタは心中「万が一の場合は私が斬る」と考え、拳をギリっと握りしめるのだ。自分の信念を貫き通す、猪突猛進な性格であることが伺えるシーンで、SNSでは「ヒナタでも勝てないと言われるヴェルドラのヤバさよ」「ヒナタ、絶対に自重しなさそうw」など、ヴェルドラの凄さとヒナタの頑固さにコメントが集まっていた。
■王国貴族たち、舐めプ発言から一気に絶望へ
一方ファルムス王国では、テンペストから突きつけられた終戦協定について会議が開かれていた。リムルやヴェルドラの力を軽んじている貴族たちは「戦争継続」を支持するも、リムルがクレイマンを倒して八星魔王(オクタグラム)となった報せが届くと、おし黙ってしまう。こうしてファルムス王国は「王の退位&賠償金」の要求に同意し、テンペストと終戦協定を結ぶのだった。
王国での会議シーンは、全体としてシリアスな雰囲気が漂いつつも、まるでコントのような流れで展開していく。リムルやヴェルドラなど恐るるに足らんと息巻く貴族たちだったが、「ブルムンド王国がテンペストを支持する」という旨の書状が読まれると、強気だった貴族たちは一気に動揺し始める。さらに「リムルが魔王を宣言した」との一報が届くと、魔王たちがリムルをボコボコにしてくれるはずという謎のポジティブシンキングを発動。しかし最後には「リムルがクレイマンを倒し八星魔王(オクタグラム)となった」という報告を受け、ここでジ・エンド。新しい報せに一喜一憂する貴族たちの様子がテンポよく描かれており、見ていて気持ちのいい一幕だった。
今回は「魔王達の宴(ワルプルギス)」前後の時間軸における、中庸道化連、ルベリオス、ファルムス王国という各陣営のリアクションが描かれ、まさに「転スラ」が「会議アニメ」であることを改めて見せつけたお話だった。「会議アニメ」と聞くとネガティブなイメージを抱く人もいるかもしれないが、本作の会議シーンは抜群に面白く、これはむしろ褒め言葉である。ではなぜ会議シーンが面白いのかについては、いくつかの理由がある。それぞれの陣営の策略や駆け引き、交渉といったストレートな楽しさはもちろんのこと、会話中にまだ明かされていない事情が隠れていたり、思慮遠謀すぎて理解が追いつかない部分があったりと、視聴者に対する厳密な情報統制がなされているのだ。今回もユウキの「仕掛け」がなんなのかは謎のままだし、「天使」や「天魔大戦」といった新ワードがしれっと登場するなど、本当に気が抜けない。「転スラ」の会議シーンは、油断大敵&うたた寝厳禁なのが魅力で、このままずっと会議を見ていたい気持ちにさせてくれる不思議な魔力があるのだ。さて次回第51話「平和な日々」は4月19日(金)放送予定。期待して待とう!
■文/岡本大介
<転スラ>各陣営での「会議」連発に、「これぞ会議アニメの本領」「もうずっと会議でもいいわw」の声
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