真田広之が主演&プロデュースで参加し、ハリウッドの制作陣が手掛けたドラマ「SHOGUN 将軍」が4月23日配信の第10話をもって完結した。日本人の役柄はエキストラも含めてすべて日本人が演じるなど、徹底して「世界に“日本”を正しく伝えたい」という思いで制作された本作は、本国アメリカでも大絶賛。各レビューサイトで満点に近い評価をたたき出し、「エミー賞」ノミネート予想にも名前が挙がるなどにぎわっている。それほどまでに本作が高評価を得ている理由を、ドラマの印象的なシーンとともに振り返ってみたい。(以下、ネタバレを含みます)

■理由その1:オリジナリティーあふれる人物たち

舞台は戦国時代末期の日本。“太閤”亡きあと政治を担ってきた“五大老”の確執が表面化し、筆頭格である石堂和成(平岳大)は他の五大老と団結。関東領主である吉井虎永(真田)の権勢を奪わんと大坂城に呼び出す――。

そんなふうにスタートする本作。設定だけを見ると広く知られた“関ヶ原前夜”の物語だが、登場人物の名は見慣れないものばかり。それもそのはず、本作はジェームズ・クラベルのベストセラー小説を原作としたオリジナルストーリーだ。

虎永は徳川家康、石堂は石田三成…など歴史上の人物にインスパイアされてはいるものの、それぞれの人物のプロフィルや描かれ方には史実と異なる部分が多い。さらには、完全オリジナルキャラクターも多数存在する。だからこそ、戦国末期を舞台にしながらも史実をベースにしたドラマとは異なりストーリー展開が読めず、生き生きと躍動するキャラクターたちの物語に没入することができる。

例えば虎永の息子・長門(倉悠貴)は、特定の人物にインスパイアされた存在ではない。第7話では、虎永から跡取りとして期待されていた長門が衝撃の最期を遂げ、跡取りを失った虎永は窮地へと追い込まれていく。“跡取りの死”という史実とは明確に異なるエピソードを経て、虎永の物語は予測がつかないスリリングなクライマックスへと突入していく。

伊豆の領主・樫木藪重(浅野忠信)も、具体的なモデルがいない。自身の領地にオランダ船が漂着したことで、藪重はそこに積まれた強力な大砲や武器にチャンスを見いだす。浅野がケレン味たっぷりに演じる戦国きっての野心家・藪重が、にらみ合う虎永と石堂の間で人間くさく立ち回り、ストーリーを大きく引っかき回す。

■理由その2:世界が恋に落ちた!魅力あふれる女性たち

本作「SHOGUN 将軍」がアメリカをはじめ英語圏の視聴者を引き付けた大きな要因の一つが、魅力的な女性キャラクターたちの存在だ。

メインキャラクターの戸田鞠子(アンナ・サワイ)は細川ガラシャにインスパイアされた人物。按針(コズモ・ジャーヴィス)の通訳として、ドラマの複雑な政治的背景や虎永の思惑を按針に、そして視聴者にわかりやすく伝える役割を担っている。演じるサワイの凛とした立ち姿、第3話と第9話で見せたなぎなたを振りかざして戦う美しい所作、「ござりまする」というしゃべり方にハマる視聴者も続出し、英語圏では“marikosama”がSNSでトレンド入りする反響を呼んだ。

太閤の側室でお世継ぎの母・落葉の方(二階堂ふみ)の強烈な存在感も外せない。彼女が虎永の最大の敵として大坂城に君臨することで、虎永の物語がよりハードでドラマチックなものになっていく。落葉の方は淀殿にインスパイアされたキャラクターだが、同時に鞠子とは幼なじみという設定。第9話では、落葉の方と鞠子による魂震わせる対話が視聴者の心を捉えた。

その他、毅然とした態度で銃を構えた第4話のシーンが「世界が恋に落ちた!」と大反響を呼んだ按針の正室・藤(穂志もえか)、なんともなまめかしく美しく按針と鞠子をもてなした第6話のシーンが注目を集めた遊女・菊(向里祐香)ら、日本ならではの美しさを体現した女性キャラクターたちの存在も本作の大きな魅力の一つだ。

■理由その3:ハリウッドスケールの映像美

もう一つ、「SHOGUN 将軍」ならではの魅力といえば、やはりハリウッドスケールの映像美が挙げられる。第1話冒頭、難破船が霧の中からぬっと立ち現れるシーンや、第2話での嵐の中で激しく揺れる船内のダイナミックな映像などは、本作が「戦国版ゲーム・オブ・スローンズ」とも言われる所以。鞠子の鼻先を矢がかすめるシーンや武士たちの切腹後の介錯で首がゴトッと落ちるシーンも、思わず目をそむけたくなるほどの生々しさだ。

さらに、本作はプロデュースにも名を連ねた真田が「正しい“日本”を世界に伝えたい」の思いで、これまでハリウッドで散見されてきた不正確な日本描写を徹底的に排除している。それを実現するための仕込みがまた桁違い。役名のある主要登場人物はもちろん、侍A、B…といったエキストラに至るまですべての日本人キャラクターを日本人俳優が演じることもその一つだ。

日本人キャストはみな、日本から参加した3人の所作監修スタッフによる指導の下、着物の着方や歩き方、座り方、障子の開け方などを徹底確認。殺陣も猛特訓を重ねて本番に挑んだ。日本人俳優のためにケータリングした日本食は現地スタッフにも好評で、1日に90〜200人分が用意されたという。

こうした画面に映らない努力も含め、ハリウッドスケールで設えられた壮大な世界観も本作が視聴者を引き込んだ理由の一つだろう。

第8話で虎永と「ドラマ史に残る名シーン」ともいわれるほどの迫真の対話を演じた戸田広松役・西岡徳馬が「ハリウッドが制作した日本の時代劇ではナンバーワンだと自負しています」と語った自信作。「SHOGUN 将軍」は、その言葉も納得の反響を世界で巻き起こしている。

日本はゴールデンウイーク。全話配信となったこのタイミングで一気見し、このエポックメーキングな“ハリウッド発の戦国時代劇”に没入するのもよいかもしれない。

「SHOGUN 将軍」は、ディズニープラスのスターで全話独占配信中。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

※西岡徳馬の「徳」は心の上に一本線が入るのが正式表記