今、日本の音楽シーンで人気のコンテンツとなっているのが、デビューの椅子を賭けて過酷な競争を勝ち抜くサバイバルオーデョン番組だ。コンセプトが異なる同種の番組はいくつか存在するが、中でもJO1、INIを生んだ「PRODUCE 101 JAPAN」の人気は高く、2023年12月にはガールズグループ・ME:I(ミーアイ)も誕生した。ME:Iは4月にデビューシングルをリリース、フェスやイベントにも出演し注目度が高まっている。そこで興味を覚え、推しを見つけたいという方もいるだろう。そんなME:Iの魅力はどこにあるのか。オーディションからの軌跡を振り返っていく。

■元ハロプロ、元Cherry Bulletも参加で話題に

「PRODUCE 101」は韓国の人気サバイバルオーディション番組で、101人の練習生から、国民プロデューサー(視聴者)による投票で選ばれた11人がデビューできるというものだ。HKT48の宮脇咲良(現LE SSERAFIM)が在籍したことで知られるIZ*ONEも同番組から誕生。

「PRODUCE 101 JAPAN」は、その日本版として2019年にスタート。ボーイズグループのJO1、INIが同番組からデビューした。そして、2023年にはガールズグループオーディションとなる「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」(Leminoにて配信中)が開催。通称“日プ女子”と呼ばれる本オーディションは、100人(1名辞退)の練習生の中にハロー!プロジェクトのアンジュルムの元メンバー・笠原桃奈、K-POPグループのCherry Bulletの元メンバー・加藤心がいたことで大きな話題に。毎週配信されるオーディション&レッスン模様がSNSを沸かせ、K-POPルーツのため女性視聴者による盛り上がりも大きかった。

サバイバルオーディション番組の見どころは第一にパフォーマンスにあるが、同番組では国民プロデューサーの投票で生き残りが決まるのがポイントになっている。もちろん歌では歌手の青山テルマ、ダンスでは仲宗根梨乃らその道のプロたちがトレーナーとしてレッスンを付け、個々のレベルを視聴者に分かりやすく評価するが、デビュー組を決める最終的な判断は国民プロデューサーに委ねられている。このシステムが“自分たちで推しをシンデレラガールにする”という気持ちを高め、練習生たちが引き起こす友情、競争といった日々のドラマにも一層のめり込んで観るようになっていく。

■シンデレラガールを生むオーディションのドラマ

一見、人気投票にも思えるかもしれないシステムだが、デビューに足りないと判断された練習生はやはり脱落していく厳しい現実があった。そして、そこにあるドラマがまた引き込まれるポイントでもある。

例えば、最終7位で選ばれた飯田栞月(SHIZUKU)は音大在学、宝塚歌劇団を目指していたという練習生。歌は上手いがアイドルらしからぬクラシック歌唱のせいでデビュー圏外をウロウロしていたが、途中ついに脱却しデビュー評価を勝ち取った。また、最終6位の佐々木心菜(KOKONA)は歌もダンスも未経験だった18歳。しかし秘めたポテンシャルは逸材そのもので、感情表現のなさを克服してからはパフォーマンスが爆発。それこそ一般からデビューを射止めたシンデレラガールとなった。

一方、前述した加藤心(KOKORO)は危なかった。途中までは笠原とワンツーをキープしていたが、投票可能な人数が絞られていく後半では順位を落とす。終盤には“身勝手な単独行動”でペナルティーを受け、アピールに欠かせないソロ動画を一時停止させられるというピンチも。最終的に11位で発表された瞬間は大きく泣き崩れ、バディだった笠原も大号泣という感動シーンが話題になった。

そして、最終1位になったのは笠原桃奈(MOMONA)。オーディション中、終始貫禄のパフォーマンスを見せつけ、2位に40万票以上の大差を付けた100万票超えの圧勝だった。“スキルのハロプロ”出身で、練習生の中で断トツの場数を踏んできた元プロ。下馬評通りと言えばその通りだが、そのバックボーンがあるだけに絶対に負けられないというプレッシャーは相当にあったはず。努力を惜しまず、ライバルである練習生仲間のことも気にかけるという人格者な面も評価され、ME:I結成時にはリーダーにも就くというドラマティックなフィニッシュを飾った。

もちろん、ここに挙げた4名以外にも印象的なドラマは数多く生まれており、今からME:Iで推しを見つけたいという方は、まずはオーディション過程から振り返ってみるのがいいだろう。


■新人発掘、セカンドチャンスの日本版「PRODUCE 101」

「PRODUCE 101 JAPAN」は韓国同番組の日本版と説明したが、大きく違うところが1つ。韓国版では、デビューしたグループの活動は期間限定である点だ。そのため事務所所属のレッスン生や現役アイドルもオーディションに参加する。先の宮脇もHKT48所属のままでのオーディション参加だ。活動期間が終了すれば元のグループに戻ったり、ソロや別のグループに移るといったことが普通だ。こうしたシステムのため韓国版は総じて練習生のパフォーマンスレベルが高いのが特徴だ。

一方、日本版でのデビューグループは、活動期間に制限はない。かつてのASAYANオーディションのような新人発掘のフォーマットが強いため、笠原、加藤のような活動経験者であっても一度グループを辞め、再デビューを目指している。笠原が「グローバルな活動にチャレンジしたい」と夢を追い、アンジュルムを卒業したのもこの道を選ぶためだった。また、加藤も参加理由には、体調の問題でCherry Bulletの活動を辞退したが、もう一度夢を追いたかったと語っている。

視聴者参加型ゆえに番組配信時からK-POPファン、アイドルファンの関心は高く、デビューが決まれば国民プロデューサーは、今度は推しを応援するファンに切り替わる。世界で認められるK-POPの一員でもあり、これが「PRODUCE 101」シリーズのスターダムシステムにもなっている。

この先JO1、INIのような活躍ができるかは彼女たちの実力次第だが、アイドルを目指す未経験者も、夢を追う再デビュー組も集う日本版は、一層ドラマティックなオーディションであると言えるだろう。

◆文=鈴木康道