吹奏楽に青春を捧げ、全国大会での金賞を目指す高校生たちの姿を描いた「響け!ユーフォニアム」(毎週日曜昼5:00-5:25ほか、NHK Eテレ/NHKプラス・Lemino・ABEMA・ディズニープラス・FOD・Huluほかで配信)、シリーズの「最終楽章」となるTVシリーズ第3期。新部長に就任した黄前久美子(CV:黒沢ともよ)は3年生に進級し、部員たちとともに高校最後の大会へと臨んでいく。第七回は、久美子の進路についてと、黒江真由(CV:戸松遥)との対峙が描かれた「なついろフェルマータ」。(以下、ネタバレを含みます)

■久美子をプールに誘う麗奈が可愛すぎる

京都府大会の結果は金賞で、関西大会進出校に選ばれた。次の関西大会に向け、日々の練習にも熱気が増していく北宇治吹奏楽部。久美子は真由に対して苦手意識を感じていることを自覚し、何度か真由に話しかけようとするもタイミングが合わず、なかなかふたりきりで話せないでいた。そんななか、吹奏楽部の練習のないお盆の三日間を利用して、大学説明会への参加とプール遊びの計画を立てる久美子たち。多くの部員たちを巻き込んで、夏休み唯一の休みの予定を埋めるのであった。

序盤のハイライトは、久美子と高坂麗奈(CV:安済知佳)による、まさに「特別」なやり取りだ。お盆休みにいっしょにプールに行きたい麗奈は、久美子とともに過ごす時間を大切にしたいと思う、不器用で健気な様子を見せる。そして、そんな麗奈の気持ちに気づかず、麗奈の態度を笑ってしまった鈍感な久美子。ふたりは既に長年連れ添ってきたかのような距離感ではあるが、やはり麗奈と久美子ではテンションが異なっている。怒りっぽくてめんどくさい麗奈と、それをなだめすかす久美子という構図で、今は揺るぎないとしても、将来に向けて一抹の不安も感じさせる一幕だった。これにはSNSでも「麗奈のプールの誘い方が可愛すぎ」「萌え麗奈すぎる!」などの声があがっていた。

■葉月も進路が決定し、残された久美子はどうする…

お盆休みの直前、部員たちが教室の大掃除をしていると、卒業生の中川夏紀(CV:藤村鼓乃美)と吉川優子(CV:山岡ゆり)がやってきて、部員たちにアイスを差し入れる。全国にいったら応援に行くと言う優子に対し、来てくれたら部員たちも喜ぶと答える麗奈。昔なら考えられなかった麗奈の大人の態度に、成長を感じるふたりなのだった。こうしてお盆休みに入った久美子は、加藤葉月(CV:朝井彩加)とふたりで大学説明会に参加。いろいろなブースを回ってヘトヘトとなったふたりは、喫茶店で休憩し、将来について話をする。葉月は副顧問の松本美知恵(CV:久川綾)からの提案もあり、短大へ進学して保育士になることを決めるも、久美子は依然として進路未定。そして、進路の話は家に帰っても続く。帰省中の姉の黄前麻美子(CV:沼倉愛美)は「やりたいこと優先」、対して母は「安定を優先」とバラバラで、久美子の悩みはますます深まるばかりなのだった。

これまでもたびたび描かれてきた久美子の進路問題だが、今回も大きくクローズアップ。久美子と同じく進路を決められていなかった葉月がついに保育士になることを決意するなど、いよいよ追い詰められてきた感のある久美子だが、それでも安易な進学はしたくないと悩み続ける姿が印象的だ。「部長」という責任感もあり、学校ではどこか背伸びをしたような大人の振る舞いを見せている久美子だが、葉月や家族との会話では久しぶりに気負いのない素顔を覗かせており、観ているこちらもホッと一息つけるシーンとなっている。

■真由に抱いていた苦手意識の正体に気づく

お盆休み最後のイベントはプール。久美子が声をかけ、低音パートを中心に十数人が参加。みんながプール遊びを楽しむなか、ひとりきりになった真由を見かけた久美子は、思い切って話しかける。他愛のない世間話から始まった会話だったが、やがて真由は、普通の人よりも「自分」というものがなく、たいていのことはどちらでもいい人間であることを告白。久美子はその話を聞き、真由に抱いていた苦手意識の正体が「中学時代の自分とダブる」からであることに気づくのだった。

視聴者もお待ちかねだったプール回だが、手放しでは楽しめないエピソードとなった。もちろん水着姿で無邪気に遊ぶキャラクターたちの姿は観ていて微笑ましいのだが、それと同じくらい真由の深くて暗い闇も心に刺さってきて、そのギャップがなんとも複雑な気持ちにさせる、異色のシーンに仕上がっている。とくに、これまでずっと前を向いて話していた真由が、最後に久美子の目をみて「そういうのがまったくない人のこと、本気で好きになることは絶対にないって」と真顔で言い放つシーンは背筋がゾクッとするような不穏さがあり、改めて一筋縄ではいかない人物であることを思い知らされる。ただ、これまであやふやだった久美子の真由への苦手意識の根源がハッキリしたのは良いことだろう。真由もまた、久美子に対してやっと素直な自分の気持ちを打ち明けたわけで、ふたりの関係性が新たなステージに突入するのは間違いなさそうだ。これにはSNSでも「ユーフォの水着回はいつも不穏w」「緊張感ありすぎだろ!」などの声が寄せられていた。

今週は久美子と麗奈の痴話喧嘩から始まり、大学説明会での葉月との会話、黄前家での家族の会話、プールで明らかになった真由の本心…と、学校以外でのイベントが盛りだくさんなエピソードだった。お盆休みも終わり、これからは関西大会に向けての追い込みが始まると思われるだけに、みんなが元気にはしゃぐ姿を見れたことは素直に嬉しい。さて次回第八回は5月26日(日)放送予定。期待して待とう!

■文/岡本大介