2024年6月9日に90歳の誕生日を迎えたドナルドダック。そんな彼のスクリーンデビュー90周年を祝して、同日から新作短編作品「ドナルドのD.I.Y.」に加え、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが製作したクラシック短編コレクションの中から「ドナルドはデイジーに首ったけ」「リスのコールタール騒動」(ともに1950年)がディズニープラスで配信された。人間でいえば“卒寿”を迎えためでたいタイミングということで、今回は変わらずおっちょこちょいなドナルドダックがほほ笑ましい最新短編作品を解説し、彼の魅力を掘り下げる。(以下、ネタバレを含みます)

■“ミッキーマウス”よりも出演本数が多い人気者

短期な性格で喜怒哀楽がとても激しいにもかかわらず、どこか憎めないお調子者の“愛されキャラ”ドナルドダック。今から90年前、短編シリーズ「シリー・シンフォニー」(1929-1939年)の45作目「かしこいメンドリ」(1934年)でディズニー作品に初登場した。

同作のドナルドダックは主役ではなく、脇役で登場しており、主人公のメンドリのお願いを仮病で断ってしまうような相変わらずな姿が逆に注目を集め、今ではミッキーマウスを上回る出演本数をたたき出す人気者へと成長。2023年にはディズニーが創立100周年を迎えることを記念して、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが製作したクラシック短編コレクションの初期作品から、新たに修復した作品が多数配信されたが、「ドナルドの腕白教育」(1938年)、「食いしん坊がやってきた」(1939年)、「リスの船長」(1956年)などドナルドダックが活躍する作品も多かった。

そんなドナルドダックが活躍する作品といえば、彼の宿敵であるシマリス・チップとデールの存在も大きい。この2匹とは数々のおかしな決闘を繰り広げており、最終的には一枚上手なチップとデールのコンビにこてんぱんにやられてしまうのがお決まりのオチとも言える。

「リスのコールタール騒動」では、木の手入れをするドナルドダックが食料のどんぐりを集めるチップとデールにいたずらを仕掛けるところから物語は始まる。手入れに使うハサミの動きに怯えるチップとデールだったが、次第にそのいたずらの犯人はドナルドダックだと分かり、2匹は木の上から下にいるドナルドダックに向けて石を投げ落として反撃をし始める。怒りの沸点が低いドナルドダックは怒りながら木の枝を走って回り追い掛け回すが、やはりここでも上手な彼らの罠にハマり、木の枝ではなく電線に乗ってしまい高電圧でまっ黒焦げになってしまう哀れな姿が映し出される。

一方「ドナルドはデイジーに首ったけ」では、ペニー・ファージング型の自転車に乗り、プレゼントを片手におしゃれな格好で恋人のデイジーダックの家へ向かうご機嫌なドナルドダックが登場。すれ違いざまにグーフィーやミッキーマウスとミニーマウスのカップルが登場するなど、粋な演出もあり、ルンルンな姿のドナルドダックがとてもかわいく描かれている。

そんな中、再び彼を邪魔するのがチップとデールだ。2匹とのコミカルな攻防戦の末、ドナルドダックは改造した自転車の車輪部分にチップとデールを乗せ、彼らを必死に走らせながらデイジーダックの家へ向かうことに成功。ドナルドダックの勝利が見えたのだが、デイジーダックはチップとデールのことをかばい、恋人から平手打ちを受けるというショッキングな結末がなんとも“ドナルドダック”らしい。


■名アニメーターが描く、ドナルドダックの不運な“DIY”

ドナルドダック生誕90周年を記念して製作された新作短編「ドナルドのD.I.Y.」は「リトル・マーメイド」(1989年)のアリエルや「アラジン」(1992年)のジャスミンなど、数々のディズニープリンセスを手掛けたレジェンドアニメーターのマーク・ヘン氏が監督を務めた。

自宅で読書をするため、スタンドランプの電気をつけようとするものの故障してしまい、ランプを交換するところから不運な“DIY”がスタート。コンセント、部屋の壁、窓ガラスなどを危なっかしい手つきで作業をするたびに次々と壊れていき、しまいには家全体が大爆発してしまうことになる。

わずか3分ほどの作品にはドナルドダックの象徴とも言える怒りっぽさがふんだんに詰め込まれており、イライラが加速するにつれて、次々とハプニングが発生してしまう彼のおっちょこちょいな愛くるしさもてんこ盛りだ。

晴れて迎えた“卒寿”90歳を祝し、ドナルドダックの“珍”活躍を振り返ってみるのも良いかもしれない。

◆文=suzuki