今や文句なしに“イケメン”の代名詞のような存在となった吉沢亮。彼の“顔だけじゃない”活躍が、この数年、特に輝きを増している。

吉沢の俳優デビューは2011年。途切れることなくさまざまなドラマや映画に出演し続けてきた彼の役者人生は、よどみないように見えて、実は決して順風満帆といったものではない。

「仮面ライダーフォーゼ」(2011〜2012)のメテオ役で本格的なスタートを切った吉沢は、当初からそのイケメンぶりと演技力が注目されていたものの、以降なかなかその実力を発揮できる機会に恵まれなかった。その転機は2013年の主演ドラマ&舞台「ぶっせん」。

座長としてのふがいなさに打ちのめされ、「役者という仕事を省みるきっかけになった作品」と本人も公言している一作だが、以降、ひょうひょうとした雰囲気をまとったその奥に、確かにともった火を大切にくすぶらせながら、役者としての存在感をじわりじわりと強めてきた。

そして2017年。実写映画『銀魂』で原作ファンをも歓喜させるほどの再現度を伴って人気キャラクター、沖田総悟を完璧に演じ切り、改めてそのビジュアルや演技が話題になると、次回作が注目される中で出演した『斉木楠雄のΨ難』(2017)では悪の組織と戦う“中二病”の少年をキレッキレかつ自然に演じ、役者としての幅の広さを見せた。

それがどこまで考えられてのことかは不明だが、役者、吉沢亮の“面白さ”に、誰もが気付いた瞬間であったことは確か。そして翌2018年には、映画8本、ドラマ2本に次々と出演。その都度まったく違った役どころで多彩な表情を見せ、観客の心をつかんでいった。

―余談だが、そんな俳優活動の一方で、ひとたびバラエティ番組などに出演すれば、あけすけなコメントで場を沸かせ、芸人との勝負にも全力で挑むなど、まったくカッコつけたり気負ったりしない。(その憂いを含んだ美しい顔面から連想するに)やりそうにない役、やりそうにないこと。そういったイメージをことごとく覆し、“イケメン”というキーワードすらも楽しげに武器に変えてしまうあり方も、彼の魅力になっている。

露出の多かった2018年を経て、自身で「勝負の年」と定めていたという2019年。ここではグッと出演作品数を抑え、深く濃く、観る者の記憶にその存在を刻み付けるような仕事ぶりが印象に残った。

NHKの連続テレビ小説「なつぞら」ではヒロインの初恋の人であり永遠の目標であり続けた山田天陽役で“天陽ロス”を巻き起こし、アニメ『空の青さを知る人よ』では声優にも初挑戦。中でも、映画『キングダム』(2月1日[土]よる8:00 WOWOWシネマほか)では、確実に役者としてのさらなる飛躍を感じさせた。

そもそも漫画が大好きだと言い、これまでにも数々の漫画原作ものの作品に喜々として挑んできた吉沢。そんな彼が『キングダム』では、大将軍になるという夢を抱く主人公、信(山崎賢人)の幼なじみである漂と、漂とうり二つの王、嬴政(えいせい)という2役を熱演。

奴隷の漂には真っすぐな野心を抱いたたくましさを、王の嬴政にはあふれ出るオーラと気品、崇高な雄々しさをまとってみごとに演じ分け、観客を驚かせた。

同じ背格好に同じ顔、同じ声なのに、まったく違う人が演じているかのように各キャラクターを魅力的に生きた、彼の骨太で説得力のある演技が、作品の面白さを、熱を、感動を、2倍にも3倍にも引き上げたと言っても、決して過言ではない。

吉沢はこの作品と役を通し、改めて自身のオールラウンダー俳優ぶりを実証して見せたのだ。

今後の彼にとって大きな意味を持つことになりそうな2019年を越え、2020年は、スペシャル・ドラマ「半沢直樹Ⅱ エピソードゼロ〜狙われた半沢直樹のパスワード〜」の主演でスタート。

映画も2本が公開を控える。そして2021年の大河ドラマ主演作「青天を衝け」に向けて既に走り出している吉沢亮。今、役者として急速に、かつ大きく変化しつつある彼だが、ひとつ確かなことは、ここがピークではないということ。

何より、彼の“この先”をもっと見たい、と、日本中が欲している。まだまだ未知の領域をたくさん隠していそうな彼が、次はどんな形で人々を魅了していくのか。その活躍が、ただただ楽しみだ。

※記事内、山崎賢人の「崎」は正しくは「立さき」

■ 文=深田尚子

映画雑誌の編集者を経てライターに。「日本映画navi」「TVnavi」ほか、情報誌、WEBなどでインタビュー記事や製作現場リポート、レビューを執筆中。(ザテレビジョン)