サイドを上下動し続けたアタッカーの記憶

2009‐10シーズンの再現は起きるのか。インテルがチャンピオンズリーグ決勝へと駒を進めてきた。

2009‐10シーズンといえば、ジョゼ・モウリーニョの下でインテルが3冠を達成した伝説のシーズンだ。CL決勝は当時以来のことになる。

しかも対戦相手はジョゼップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティだ。当時のインテルを語るうえで、CL準決勝でグアルディオラ率いるバルセロナを打ち破った180分間は外せないエピソードと言えよう。

ホームでの1stレグで3−1の勝利を収めたインテルは、アウェイでの2ndレグで徹底した守備戦術を見せた。これは前半28分にMFチアゴ・モッタが退場処分を受けたことも影響しているが、モウリーニョはDFルシオ、ワルテル・サムエル、MFエステバン・カンビアッソら職人と呼べる選手たちを軸に守り通す戦術を選択。バルセロナの反撃を1点に抑え、決勝へと駒を進めた。

今回の決勝も、かなり高い確率でグアルディオラ率いるシティにボールを支配されることになるだろう。組織としてのクオリティではシティが上で、準決勝ではあのレアル・マドリードを2戦合計5−1のスコアで粉砕している。インテルは守りの時間が長くなるはずだ。

米『ESPN』も2009−10シーズンの再現なるかとインテルに注目しているが、SNSでは『攻撃陣の献身性がカギ』との意見が多く出ている。その中で当時を知るサポーターが改めて絶賛したのは、FWながらサイドで上下動を続けた元カメルーン代表FWサミュエル・エトーだ。

当時のインテルは司令塔にウェズレイ・スナイデル、センターフォワードにディエゴ・ミリートが構えており、決勝のバイエルン戦でもこの2人で2ゴールを奪って優勝している。しかし、当時のインテルでモウリーニョの要求に応えて走り続けたエトーやゴラン・パンデフといったアタッカーの存在も忘れてはならない。

ハビエル・サネッティやクリスティアン・キヴ、マイコンなど守備陣にも実力者が揃っていたが、守備陣だけで防げるほど当時のバルセロナは甘くない。それは今のシティも同様で、ラウタロ・マルティネスやエディン・ジェコら攻撃陣も守備に走ることが求められるだろう。チーム全員での守備がシティ撃破の条件だ。

サポーターの記憶には当時のエトーが強烈に残っているようだが、エトー役をこなす選手はいるのか。今のシティは当時のバルセロナと同じく、一瞬でも隙を見せれば終わりだ。