名古屋市千種区の東山動植物園では、国の天然記念物で絶滅危惧種「ツシマヤマネコ」の子猫が、2023年8月29日から9月28日まで期間限定で公開されました。 通常は一般公開されませんが、ストレスに慣らして種の保存を守ることや絶滅危惧種であることを広く知ってもらうために行ったということです。 東山動植物園には他にも多くの絶滅危惧種がいますが、種を守っていくために様々な工夫をしていることがわかりました。

■今後は予定なし…絶滅危惧種のツシマヤマネコを一般公開した理由

 ツシマヤマネコのメス「したる」ちゃんは、2023年4月23日に体重101グラムで生まれ、9月中旬時点では2.3キロほどにまで大きくなっていました。

したるちゃんは甘えん坊でちょっとわがままな性格で、冷房の効いた寝室を出たり入ったりする好奇心旺盛な姿に見入ってしまう来園者が大勢いました。

ツシマヤマネコは100頭弱しかいないと推定される絶滅危惧種で、通常は一般公開されず、今後も予定はないということです。 東山総合公園管理課の担当者: 「(今回の公開は)人に少し慣らしておくことが、親となって繁殖する時にストレスに強い個体になるのかなという目的。保護していかなきゃいけない動物だとわかっていただけると、すごく嬉しいなと思います」

■約4分の1が「絶滅危惧種」…東山動植物園が積極的に飼育する理由

 東山動植物園には約450種の動物を飼育していて、日本一を誇ります。コアラにイケメンゴリラの「シャバーニ」。

個性的な鳴き声のフクロテナガザル「ケイジ」。

ライオンにホッキョクグマなど数々の人気者がいますが、これらの動物は全て「絶滅危惧種」に指定されています。

他にも国内最高齢の“ニルギリ”で話題の「インドサイ」やキリン、オオアリクイ、フンボルトペンギンなども絶滅危惧種です。

副園長の今西鉄也さんによると、東山動植物園で飼育している絶滅危惧種は全体の4分の1にあたる約130種で「おそらく日本で一番多いと思う」ということです。 東山動植物園の副園長 今西鉄也さん: 「人気のある動物は基本的に絶滅危惧種。絶滅危惧種を飼育していかないと動物園として成り立たない」

■絶滅危惧種を積極的に飼育する背景は

 東山動植物園では、園としての魅力を高めるために積極的に絶滅危惧種を飼育しているといいますが、背景には大きく2つの目的があります。 1つは「繁殖」です。2022年、東山動植物園としては2頭目となるアジアゾウの赤ちゃんが生まれました。このアジアゾウも絶滅危惧種に指定されています。

ゾウ舎では5頭のゾウが群れで暮らしていますが、繁殖がすすむように本来の生態系に近づけています。

今西さん: 「本来の生態がメスを中心とした群れで暮らす動物なので、それを再現しないと繁殖もうまくいかないと考えた」 そしてもう1つの目的が来場者に生息地をイメージしてもらい、絶滅危惧種への意識を高めてもらうということです。そのために「野生に近い展示」を意識しているといいます。 その1つの例が2023年7月にオープンした「アジアの熱帯雨林エリア」です。ここでは絶滅危惧種のスマトラオランウータン、コサンケイ、スマトラトラが飼育されています。

動物の姿を間近に観察できるビューイングトンネルに…。

三次元的に動く姿を観察できる屋外運動場など、動物たちがのびのびと暮らし、野生に近い動きが見られるような構造を意識したということです。

今西さん: 「(野生の暮らしを)知ってもらうのがまずは一番。知ってもらうことで場合によっては生息地を守る活動をしようとか、守る活動をしている団体を支援しようとかの発想が出てきます」

他にもシャバーニの檻ではツリーを作り、木に登る様子などを見られるようにすることで、野生の姿をイメージできるようにしています。

2023年10月には「ジャガー舎」も誕生しました。ジャガーは準絶滅危惧種で、斜面で活発に動くことから大きな斜面を作りました。また水に潜るのが得意なため、ジャガー舎としては日本一深い温水プールが設置されています。

今西さんは「現状を知ってもらうだけで多くの人の行動が変わってくる。個人個人がちょっとした配慮をしてもらえると大きな形となって動物たちの世界に返ってくる」と信じています。 2023年9月29日放送