1977年に岐阜県岐阜市の柳ケ瀬にオープンした「高島屋岐阜店」は、2024年7月31日に閉店します。名古屋駅などに買い物に行く人が増え、2023年度も赤字が見込まれていました。 苦境にあえぐ百貨店業界ですが、独自路線で売上を回復している店舗もあります。

■岐阜県は4つ目の“百貨店なし”県に…人気の「北海道物産展」の始まりは?

 日本百貨店協会によりますと高島屋が撤退することで、全国でデパートがない都道府県は4つとなります。既にない山形県、徳島県、2024年1月でなくなる島根県、そして岐阜県です。

昭和や平成の百貨店には人が溢れていて、その後も様々な取り組みで客足を伸ばしてきました。 特に人気の催事が「北海道物産展」です。今ではどのデパートでも行われていますが、北海道主催のものは、1951年に「高島屋大阪店」が始めました。 高島屋史料館の担当者によりますと当時は戦後の混乱期で、北海道のネームバリューもなく、「採算がとれない」と言われながらも始めたということです。

当初は船や貨物車で輸送していたためコストもかかり、鮮度にも限界があったため、魚介類も巻き寿司などがメインでしたが、1988年に青函トンネルが開通したことにより、イートインで握りずしも提供できるようになりました。

第2回からは話題作りにも力を入れました。屋上で牛の乳しぼり体験ができるようにしたり、その後もキタキツネや流氷などを見せることで、集客の話題作りをしたということです。

高島屋史料館の担当者は「当時は百貨店が、世の中の新しいモノを率先して紹介する役割を担っていた」と話しています。

■30年で売上はピークの半分に

 しかし、百貨店の売上はしだいに下がっていきます。日本百貨店協会によりますと全国の百貨店の売上高は、ピーク時の1991年は約9兆7130億円でしたが、2022年は約4兆9812億円と半分ほどになっています。

原因について、全国250軒以上の百貨店を回り「胸騒ぎのデパート」という本も出版したデパート愛好家の寺坂直毅(てらさか・なおき)さんに話を聞きました。

デパート愛好家の寺坂直毅さん: 「サザエさん見ていると、ワカメちゃんがつばのある帽子をかぶってリボンなんか付けたような服を着て、みんなで正装してデパートに行くような。本当に昔のデパートはそういう“ハレの日”に行く、遊ぶ場所って感じだったんですけど、今本当にそれが郊外にあるショッピングモールになったなと思います」 松坂屋や大丸を運営する「J.フロント リテイリング」は「統合報告書2023」の中で「百貨店はアパレルとともに成長してきた『かつての成功体験』」から抜け出すことができず、婦人服に過剰に面積配分した状況が続いたことで、客の嗜好や購買行動とのズレが生じた」としています。

■ダウンサイジング×本当に売れるモノ いま百貨店に求められること

 いま百貨店に求められていることはどんなことなのか、寺坂さんは「規模を縮小する」ことだと指摘しています。 山梨県の「岡島百貨店」は自社ビルで営業していましたが、2023年3月、近隣の複合商業ビルへ移転し、売場も7分の1(10フロアから3フロアへ)に縮小しました。その結果、ビルの管理費など固定費が削減でき、収益性が上がっているということです。

寺坂さんによると、本当に売れるものに絞る専門性を高めた“ダウンサイジング型”の百貨店が増えています。 専門性や独自性を高めている百貨店は各地で登場しています。神奈川県藤沢市の「ODAKYU湘南GATE」は図書館があり、静岡市葵区の「松坂屋静岡店」には水族館が併設されています。

ダウンサイジングしながら、人が集まる場所を作り出すという手法です。

■1階の“化粧品スペース”には「パン」…好調キープする名古屋の「星ヶ丘三越」の独自路線

 名古屋市千種区の「星ヶ丘三越」も、独自路線で好調を維持しています。23年度上期の売上は、前年比で107%と好調をキープしています。

売上の50%以上は、「食品」です。   「星ヶ丘三越」の山村雅美店長: 「私どもの店が食品の売上が50%を超えていますので、これは百貨店の中でも非常に特徴的なお店になるかと思います。ターゲットとしている30代〜40代の子育てファミリーや近くに大学もあるので学生にも人気」

中区の「名古屋栄三越」はブランドものなどの衣料や雑貨がメインで、食料品は約18%となっていて、その違いは明確です。

「星ヶ丘三越」のメインターゲットは、このエリアに住む子育て中の女性や学生で、食料品売場にも違いがありました。 山村店長: 「ネギだけでもこれだけの種類があるのは珍しいと思います。トマトもこれだけ種類があるので、お客さんが料理に合わせて選んでいただける。15種類くらいはあります」

値段はスーパーよりは高めですが一般的なデパートよりは抑え、種類を豊富に揃えることで、日常使いもされているということです。

60代主婦: 「ちょっとお高いんですけれど日持ちするんです。買い置きをしたりするけど3日・4日(冷蔵庫に)入れてもこのままだし。週に3回は来ます」 50代主婦: 「新鮮なものもあるし、種類も多いし。街中のデパートよりも使いやすい」 自宅で簡単に調理してすぐに食卓に出せる「半加工品」も人気です。「時短」できるのはもちろん、できたてを食べることができて便利で、少しだけ調理することで「出来合いだけ」という後ろめたい気持ちも薄れるそうです。

そしてテナントもターゲットを意識してお店を選びました。10月4日にオープンしたのは「バーミキュラ」のお店で、百貨店初の出店です。

一般的な百貨店では化粧品店などが並ぶ1階にお店を設け、看板商品の「バーミキュラ」で焼き上げたカレーパンを求めて、この日も女性を中心に行列ができていました。

開店から4時間で完売する人気ぶりです。

“名古屋初”のイベントも積極的に仕掛けています。スコーンを取り上げた催事では、女性だけでなく男性も大勢来店するなど、目標の売上を大きく超えたといいます。

店長の山村さんは「日々の暮らしの中で何かを買うんだったら『星ヶ丘三越』に行きたいというような店づくりをしていきたい」と話しています。 百貨店業界も時代を反映したお店づくりが、生き残りや成長のカギになっています。 2023年10月20日放送