吉本興業が運営するお笑い劇場「沼津ラクーンよしもと劇場」(静岡県沼津市)が来月7日にオープン10周年を迎える。同劇場には通常公演のほかに実力派芸人による「沼津週末寄席〜太鼓判ライブ〜」があり、5月にあった結成16年以上が対象のお笑い賞レース「THE SECOND〜漫才トーナメント〜」で優勝した「ガクテンソク」も、ここで腕を磨いたコンビの一つ。ボケ担当のよじょうさん(42)とツッコミ担当の奥田修二さん(42)に同劇場への思いなどを聞いた。(岩崎加奈)

 −沼津ラクーンよしもと劇場の強みとは。

 奥田 とにかく「おじさんたちの漫才合宿」みたいなところ。特に6分の長さのネタを3本も披露する賞レース「THE SECOND」が昨年始まってから、おじさんたちのスタミナを鍛えようと思って下さったのでは。

 よじょう ここは6分のネタを2日で合計8本披露するため、本当におじさんの体力面が強化されたと感じる。

 奥田 2日間全てのステージを見るお客さまもいるため、前日と同じネタはしづらい。各組が持っているネタを搾り出すのか、新たなネタを作るのかなど、常にネタを考えなければならない状況があるのは本当にありがたい。

 −この劇場だからこそ披露するネタはありますか。

 奥田 一般の方が笑ってくれるネタを探して試すことが増えたと感じる。受けないだろうなという過去のネタでも、意外と今だと受けるんだなと。

 −「太鼓判ライブ」が終わった後、お笑い作家の方と意見交換をする取り組みがあると聞くが、今回の優勝に生かされた部分は。

 奥田 芸人と支配人、作家で行う意見交換会は、相方に自分の考えを伝える場みたいなところ。芸歴19年目となると、何も言わなくても分かる熟年夫婦みたいで、楽屋で2人きりになってもあまりネタの話はしない。意見交換を通じて、ビリヤードのように支配人という的に当てて相方と意見を共有する場となっている。

 よじょう 相方の考えを聞いて実際にネタに生かされた部分も大いにある。

 奥田 話し合いで相方と生まれた意見が、大きな「受け」につながっている。

 −沼津の印象は。

 奥田 漫才劇場があって、芸人が来ることをすごく喜んでくれる印象。

 よじょう ほかの劇場にない特有の文化だが、芸人が舞台に出るときに流れる音楽「出ばやし」に乗せて手拍子をしてくれるので温かい。

 奥田 出ばやしがラップなどの乗りづらい音源でも拍手をしてくれる。

 −静岡県全体の印象は。

 奥田 関西弁に優しい印象。少しとがった関西弁でも、リズム感で笑ってくれる。

 −今後の目標は。

 奥田 19年間、よしもとの「扶養家族」として劇場に出させてもらった。来年、芸人として「成人」を迎える。よしもとという実家に、そして沼津に恩返しをしていきたい。

 −開館10周年を迎える劇場に一言。

 奥田 県民に、沼津に来たらお笑いが見られるんだと伝えられるように、10周年以降も参加させてもらえたらうれしい。

 よじょう 10周年は通過点だと思うので、20年、30年と続いていくための手伝いをたくさんしていきたい。

 −最後に世のおじさんたちにエールをお願いします。

 よじょう まずは健康第一。

 奥田 世の中を動かしているのはおじさんだから、結局頑張るしかない。

◆7月6、7日 劇場10周年で興行

 沼津ラクーンよしもと劇場は、全国10番目のよしもと劇場として2014年7月7日にオープン。当時の栗原裕康市長は「沼津は古くから商都と言われてきたが、今度は笑いの力で『笑都』にしてほしい」と期待を込めた。

 客席数151と規模が小さく、舞台上の芸人と客との距離が近いのが特長。拠点とする「静岡県住みます芸人」に富士彦、さこリッチ、ぬまんづがいる。同劇場支配人の町田寿一さん(48)は「劇場があることは知っていても、まだ来たことがない方もいると思う。ぜひ気楽に見に来てくれるとうれしい」と話す。

 10周年記念特別興行が7月6、7の両日に沼津市民文化センターで開催される。6日のチケットは売り切れたが、ガクテンソクも出演する7日は空きがある。チケットは、同劇場ホームページなどから。

<ガクテンソク> 2005年結成。よじょうさんと奥田さんはともに兵庫県宝塚市出身で、中学の同級生。13年に「NHK新人演芸大賞」優勝、14年に「上方漫才大賞」新人賞。「THE SECOND」では「国分寺」ネタなどで爆笑をさらった。