横浜市戸塚区で2025年度の運営開始を目指した認可保育所の建設計画が中止になった。計画地に接する道路が狭く、近くの幼稚園に通う子どもへの影響を懸念し、反対の声があったという。地元選出の衆院議員も関心を寄せる事態に発展したが、中止は業者の自主的な判断だったという。(志村彰太)

 計画地はJR戸塚駅付近の住宅や小型ビルが立ち並ぶ一角で、敷地面積は210平方メートル。鉄骨造り4階建ての建物を建築し、児童発達支援センターと認可保育所を併設する整備計画を、市内のNPO法人が市に申請した。

 しかし、隣接する道路は小型車がようやく通れる幅しかなく、道路を挟んだ向かい側には幼稚園がある。保育所や児童発達支援センターには、車で子どもを送迎するケースも多い。幼稚園児の往来に危険が増すとして、計画が判明した4月から反対の声が上がり、地域住民らが約500人分の署名を市に提出した。

 反対の意見は5区(泉区、戸塚区)選出の坂井学衆院議員=自民党=にも届き、坂井氏の事務所は少なくとも計6回、区や市と電話している。情報公開請求で入手した「議員対応報告書」によると、坂井氏の秘書は「市に何か対応を求めることはない」と強調しつつ、事業進展に関心を持っている様子がうかがえた。

 秘書は取材に対し「状況を市に確認しただけ。圧力をかける意図はない」と話し、「児童発達支援センターなどは必要性の高い施設。(地元理解が得られず、中止になり)残念だ」とも付け加えた。市保育対策課も「議員側から圧力は感じなかった」と説明した。幼稚園は「保育所をつくること自体は反対ではないが、道が狭く、今でさえ危ない。4階建てができれば日照にも影響する」と述べた。

 NPO法人は5月に保育所新設の申請を取り下げた。法人は取材に応じなかったが、議員対応報告書によると、土地が狭いことや工期が間に合わないことが理由として記載されていた。

 一方、県内全体では近年、保育施設の整備が難航している。19年度、7200人の定員を増やす計画に対して実績は7125人増。これに対し、23年度は4100人増の計画に対して930人増にとどまった。

 待機児童の解消は「逃げ水」にも例えられ、少子化にもかかわらず入所希望者は増え続けている。受け皿の整備が引き続き求められるが、県次世代育成課の担当者は「駅前では特に、適地が少ないという話も聞く。物価高騰もあり、新設が大変な状況は続くだろう」と話した。