校舎改築工事中の東京・国立市立国立第二小学校で伐採直前に掘り起こされたまま、移植先の決まっていなかった樹木のほぼすべてが、新たに木々を育てる里親の元に届けられた。創立74年の国立二小でシンボルの一つだった並木道の桜やキンモクセイは、児童や卒業生らの思いと共に、守り継がれることになった。(岡本太)

 国立二小では当初、校舎改築に伴い、敷地内の樹木約40本を伐採する計画だったが、児童の保護者らでつくる市民グループが市教委に働きかけ、移植を目指すことで合意。伐採直前の昨年5月、ボランティアら約200人の手によって掘り返され、校内で改築工事の支障にならない別の場所に仮置きされていた。

 その後、学校敷地内に移植できるのは数本に限られることが分かり、市民グループが里親を募集。春ごろにかけて、教育施設や民間企業、個人から協力の申し出があり、5月末までに約15カ所に移植された。

 移植先は都内の幼稚園や大学、カフェ、長野県の小学校、静岡県伊豆の農業体験施設など。高さ約15メートルあったソメイヨシノの大木は5月末、栃木県日光市の個人宅に移された。

 現在国立二小の敷地内に残る樹木は7本。一部を小学校内に移植し、残りはベンチなど思い出に残る形にする方法を検討する。市民グループの前田節子さんは「みんなの思いの詰まった木々が、なんとか残ることになってよかった。すべてがぎりぎりのタイミングだったと思う」と話した。

 市民グループは当初「できるだけ多くの木を新校舎に残したい」と要望していたが、敷地内には新しい木々を植える計画がすでに決まっており、実現しなかった。