後ろ足2本で直立する姿が話題を集めた千葉市動物公園のレッサーパンダ・風太が5日に21歳の誕生日を迎える。昨秋に各地で飼育されていた3頭が相次いで死亡し、国内最高齢となっていた。(平野梓)

 「足腰はしっかりして老齢の中では動く方。だけど寝ている時間が長く、丸くなっている時間が延びた。おじいちゃんになったな、と思う」。風太について担当飼育員がしみじみ語る。

 飼育下のレッサーパンダの平均寿命は15歳と言われる。江戸川区自然動物園のブナが23歳で死んだ昨年10月27日に、風太が国内最高齢となった。

◆立ち姿は2019年ごろが最後

 老化に伴って活動量は減り、2本足で立つ姿も2019年ごろを最後に見られなくなった。ここ数年は白内障で右目を失明し、歯槽膿漏(のうろう)で歯を失い、数カ月間展示できない時期もあった。今年は6月中旬にえさを吐き戻し、食欲も低下。展示を休止し、体調が回復した6月末から再開した。

 レッサーパンダは暑さに弱く、展示室内は冷房をして25度を超えないようにしている。クラウドファンディング(CF)で昨年集めた資金で、今夏からドライミストも設置。副園長の清田義昭さんは「生活は十分できる環境だが、寝たきりになったりしたら、どうケアしてあげられるか」と不安を抱く。

◆客のどよめきを楽しんだ?

 2005年、S字を描く背筋や短いしっぽが特徴的な風太の立ち姿を紹介した新聞記事が、テレビで取り上げられて一躍スターに。ほかの個体も直立するが、好奇心旺盛で活発な風太は立ち上がる頻度が特に多く、来園者を魅了した。

 清田さんは「お客さんのいる外の世界にすごく興味を持っていて、見てみようと立ち上がっていた。風太が立とうとするとお客さんがどよめき、立つのをやめるとため息をつく。風太も反応を楽しんでいたんじゃないかな」と話す。

 同園の知名度を上げた風太から8頭の子供が育ち、絶滅危惧種の繁殖にも貢献。5世代目の子孫も含めて70頭以上が、国内外の動物園へと渡った。各地に血脈を残した今、静かに余生を過ごしている。

◆ブーム当時の飼育員・千葉さん「これからもわが道を」

 風太が大ブレークしていた2005年当時、飼育員をしていた千葉茂さん(56)からは祝福の言葉が届いた。

 「当時の君は2歳のやんちゃ坊主で落ち着きがなく、好奇心旺盛で元気いっぱいでしたね」と千葉さん。風太の子供を産んだチィチィについてもふれ、「君と彼女は命をつなげて、子供たちが産まれましたね。なんだかんだと彼女の存在も大きかったよね」と思いを込めた。

 そして、「この時代に生まれてきてくれて、ありがとう。君の存在は偉大です。これからもわが道を行き、マイペースに日々を過ごしてくださいね」と締めくくった。