<移住者新時代>幼き日の夢 2日で決断 レンズの研磨技師→養蜂家

<移住者新時代>幼き日の夢 2日で決断 レンズの研磨技師→養蜂家

◆群馬・沼田市 寺川彰治さん(68)

 プルーンの木の濃いピンクの花に、ミツバチがとまった。群馬県沼田市の日当たりの良い小さな丘のふもと。並んだ六箱の巣箱へ、ミツバチは忙しそうに花粉を運ぶ。「これが理想の姿なんです」。活発に飛び回るミツバチの姿に満足そうに目を細める。毎日、二万匹以上のミツバチの健康状況や巣箱の様子を入念にチェックする。

 養蜂は子どものころからの夢だった。小学校六年生の時、ミツバチの巣箱を見せてもらった。箱の中にはオレンジやピンクの花粉を足につけて巣箱に戻ってくるミツバチの姿があった。「何の花の花粉か分からなかったが、せっせと働いている姿に感動した」と振り返る。

 以前は天体望遠鏡やカメラのレンズなどを作る光学レンズ研磨技師だった。六十歳で定年退職した後、趣味で町田市の自宅近くの畑でミツバチを飼い始めた。約一万二千匹を飼育しながら、ミツバチの生態や養蜂の技術を独学で勉強し始めた。

 ミツバチの飼育を始めると、「おいしい蜂蜜を作りたい」との思いがわき上がってきた。養蜂に適した環境を求め、移住を決断。移住先を探して自身の出身地・愛媛県新居浜市のある四国や埼玉など全国を回った。そんな時、移住政策を進めている沼田市を知った。二〇一八年一月、同市が移住促進用に設けている「ぬまた暮らしの家」で三泊四日の体験宿泊にチャレンジ。自然豊かで養蜂にも適した沼田が気に入った。さらに市職員が希望の物件を紹介してくれたほか、地元養蜂場の協力で巣箱を置く場所も見つかったので二日目には移住を決意した。

 同二月に引っ越し、同四月からミツバチの飼育を始めた。自宅の二部屋も蜂蜜を瓶詰めするための作業場に改造した。既製品を改良し、蜂蜜をつくるための自動遠心分離機もつくった。同五月に最初の蜂蜜の採取に成功した時は「うれしさと感動でいっぱいだった」と笑顔を見せる。同十月にあった「平成三十年度県養蜂協会蜂蜜品質向上共励会」の百花の部で初出品ながら優秀賞を獲得した。

 「これからも養蜂を続けて、最高級の蜂蜜を作り、いつかは最優秀賞を取るのが目標」と意気込む。「蜂蜜は毎年、気象条件などによって味や色味が変わってくるので、良い蜂蜜を作るために工夫するのが面白い。これからどんな蜂蜜ができるのか楽しみです」。新たな目標に目を輝かせている。 (市川勘太郎)  ◇

 良好な自然環境や生きがいのある働き方、暮らし方を求める移住が注目を集めている。都内在住や在勤に区切りをつけ、北関東などへ移住した人生の“ベテラン”たちの活動や思いを報告。随時、週末に掲載する。


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