<かながわ未来人>チョウの越冬 観察10年 サイエンスライター・高柳芳恵(たかやなぎ・よしえ)さん(71)

<かながわ未来人>チョウの越冬 観察10年 サイエンスライター・高柳芳恵(たかやなぎ・よしえ)さん(71)

 三十二年前(一九八七年)の十二月。当時八歳だった次女と川崎市麻生区の自宅近くにある神社で自然観察していたとき、人生を変える「えっ(疑問)」に出合った。常緑樹の葉の裏から白いチョウがポトリと目の前の地面に落ちたのだ。まだ動いている。「冬になんでチョウがいるの」と見つめていると疑問はみるみる膨らんだ。

 調べてみると、厳しい冬をじっと耐えて生き抜くチョウがいることがわかった。それからは公園の樹木や街路樹をまわり、葉の裏のへりにつかまっているチョウをいくつも見つけた。

 「なんでへりなの?」。また疑問が膨らんだ。それは葉の表から流れ落ちる水を飲むためだった。「越冬を成功した姿を見たい」と翌春を待ち、葉の表に出てきたチョウが太陽の光を浴びながら飛び立つ姿を見た時は涙が止まらなかったという。

 それからは毎年、百を超えるチョウの越冬を観察。「飛び立った瞬間に鳥に食べられたこともあったが、一つの生きものの命をみるのは楽しかった」。越冬だけでなく、幼虫がさなぎから成虫になるまでも観察してチョウの一生を追い続けた。

 児童図書館でのボランティア活動で子どもたちに本の紹介や自然との触れ合いを勧めてきた経験も生かして九九年、十年に及ぶ観察記録をまとめた「葉の裏で冬を生きぬくチョウ」(偕成社)を出版した。優れた児童文学に与えられる産経児童出版文学賞を二〇〇〇年に受賞。NHKのラジオ番組では全編を朗読された。〇六年にはドングリに穴をあけてすみ着く虫を取り上げた「どんぐりの穴のひみつ」(偕成社)も出版した。

 「子どもたちが自然に触れたとき『えっ』と思えば興味はどんどん膨らむ。すべての生きものは『えっ』というものを持っているから、それを紹介していきたい」と児童向けの出版に力を注いでいる。

 三人の子どもが通った市立南百合丘小学校(同市麻生区)は今年、創立五十周年を迎えた。校内にある森は「やすらぎの森」と命名され、半世紀かけて育った樹木は百二十種類を超えた。この森を管理する実行委員の一人で、五十周年記念事業として七十種類の木に名札を付けた。木々を説明するネーチャーカードも作成し、このほど百二十ページほどの本にまとめて同校に寄贈する。

 「いまでも犬の散歩中に街路樹を見つめて動けなくなることがあります。犬も分かっていてじっと待ってる。わたしの『えっ』はまだ進行形です」 (安田栄治)

 <「葉の裏で冬を生きぬくチョウ」> 公園の樹木や街路樹などの葉の裏につかまり、冬を生きぬくチョウのウラギンシジミの小さな一生を10年間観察した記録をまとめた子ども向けの本。前半は越冬の様子。後半では、幼虫が透明なプラスチック容器の壁に張り付いてさなぎとなったために観察できた、羽や胴体、目や足などができる様子などをまとめている。


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