“面倒な恋愛脳の女”の烙印。愛する男に暴かれた、セカンド女のコンプレックスの正体

“面倒な恋愛脳の女”の烙印。愛する男に暴かれた、セカンド女のコンプレックスの正体

ー夢は極上の男との結婚。そのためには、どんな努力も惜しまない。

早川香織、26歳。大手IT企業の一般職。

世間は、そんな女を所詮「結婚ゴールの女」と馬鹿にするだろう。

しかし、先入観なんぞに惑わされず、彼女の“秘めたる力”をじっくりと見届けて欲しい。

vsハイスペ男との熾烈な戦いを...!

最高の彼氏だと信じていた男、拓斗にとって、実は自分がセカンドだった!それでも諦められないと思った香織はセカンドから本命になろうと奮起するが、本命彼女・梓のFacebookに現れたのは…?



「大事な人からの贈り物♪」

その思わせぶりな投稿と同時に表示された写真には、キラキラと輝くダイヤの指輪が写っていた。

立て爪でこそないものの、その大きさや輝きは”婚約指輪”と疑わずにいられない。

投稿には数百の”イイねや”ハート”が付き、「え、何なに!?そういうこと?」などのコメントが寄せられていた。

「何よ…これ…」

あの日、確かに拓斗は「彼女とは別れる」と言ったはずだ。それなのに、これはどういうことだろうか?

スマホを持つ手が動揺と怒りで震える。香織のテンションはここ数日、ジェットコースターのように急に上がったり下がったりで、もう冷静ではいられなかった。

電話帳を開き『南拓斗』を探す。そして、通話ボタンをタップした。

トゥルルルルル…

今は平日の22時。まだ仕事をしている頃だろうか?

長い呼び出し音の後、「香織?どうした?」といつもと変わらぬ拓斗の声がした。


思わず拓斗に電話をした香織。二人の会話の行方は…?

ガッカリされたくない


「香織?どうした?」



いつもと変わらない拓斗の声。頭に血が上って勢いで電話したものの、何と答えたらいいのか、急に分からなくなってしまった。

「…拓斗…。あの……えっと……」

心の中で「言わなきゃ」と思うほど、出てこない。パニックになった香織は涙が出てきた。

「何、泣いてるの?どうした?」
「…っく…。か…彼女…」
「え、何?」

拓斗に聞かれれば聞かれるほど涙が止まらなくなる。自分でも情けない、と思っていると、彼の方から言った。

「悪い、ちょっと今仕事中だから…。終わったらそっち行くから」

そう言って、忙しそうに電話が切れる。しんと静まり返る部屋の中で、香織は徐々に冷静さを取り戻した。

ー拓斗、来るって…。あ、家の中片付けたほうが良いのかな?私スッピンだし、泣いて目も腫れてる…

こんな時でもそんな考えが頭に浮かぶ。こうなってもまだ、やはり拓斗にガッカリされたくないのだ。

泣き腫らしたせいか頭がぼうっとする中、部屋を片付けたり、目を冷やして軽く化粧をしていると、段々と緊張してきた。

ーどうしよう…何て聞こう。何て言われるんだろう…?

電話を切ってから1時間半ほどし、ようやく拓斗が家に着いた。

「疲れたー、ここんとこ忙しくてさ。今日昼飯もまともに食べられなかったし、まだ仕事残っているんだ」

ネクタイを緩めながら、寛いだ様子を見せる拓斗。彼がいつもの調子なのに対し、香織はどう反応していいのか分からない。

その重い空気を察したのか、拓斗の方から切り出した。

「で、どうしたの?香織が仕事中に電話してくるとか、珍しいね」

「あのさ…。拓斗、この間、彼女さんとは別れるって言ったよね?」

恐る恐る言葉を選びながら話す香織に対し、拓斗は「あぁ」と少し面倒臭そうに答えた。

「本当に、別れる気、ある?」


香織からの攻撃に、最低男の答えとは…?

頭空っぽの面倒な女の烙印


香織からの強く真剣な声に、拓斗は「あぁ、そのつもりだよ」と優しく言う。けれど、香織にはこの言葉に本気さを感じられなかった。

「本当?ねぇ、じゃあ...これはどういうこと…?」

そう言って、中原梓のFacebookの指輪の写真を見せた。もちろん、「大事な人からの贈り物」と書かれた文章も一緒に。

その画面を見て、初めは何のことだか分からない顔をしていた拓斗だったが、次第に事の経緯を推察したのか、鼻で笑いながら答えた。



「フッ…これ見て俺がプロポーズしたと勘違いしたの?確かに俺があげた物だけど、何年も前にだし、それにこれ、偽物だよ?」

拓斗曰く、梓と付き合い初めの頃、bloomingdale’sのデパートで安売りされていたスワロフスキーの指輪を、彼女にねだられて買ってあげたそうだ。もう5年以上前のことで、すっかり忘れていたようだが…

「でも…だったら何でこんな投稿を、彼女は今更載せたの…?」

「さぁ、知らない。とりあえず、香織が思っているようなことじゃないから」

心なしか苛立ちの気配を見せる。拓斗のそんな態度や、昔にではあるが彼が他の女性に指輪をあげた事実が、香織にはショックだった。

「私…拓斗からレストランとか旅行とか連れて行ってもらったけど、指輪だけは買ってもらったことない…」

悲しそうに漏らした香織の言葉に、拓斗は心底鬱陶しそうな顔をしてこう放った。

「何?指輪をあげたら満足なの?」

「ううん…そういう訳じゃなくて…」

香織はただ、安心感が欲しかったのだ。自分が本当に愛されているという実感。けれどそのことを伝える前に、拓斗は冷たい目をして話を続ける。

「あのさ、梓のことを言わなかったのは悪かったと思ってる。けど、彼女のFacebookを勝手に覗き見て勘違いして、電話までかけて来るってどうなの?正直、かなり面倒臭いわ」

これまで聞いたことがないような冷え切った声。その目は、恐ろしいほど色を失ったものだった。

「面倒臭いって…。そもそも、拓斗が悪いんじゃない…勝手に見たことは悪かったけど、私だって不安だったんだもん…」

香織からの言葉に、拓斗は「はぁ」と大きなため息をつく。そして「それはもう謝っただろう?」とまた冷たく言ったかと思うと、カバンを持って玄関に向かった。

「え、帰るの…?」

「あぁ、まだ仕事残っているし」

目も合わせないまま答える拓斗。靴を履き終えた彼は、最後に香織の方も見ずに言った。

「もう少し、賢い女と思っていたわ。香織って、頭の中恋愛ばっかりで何もないんだな。そういう所、ちょっとどうかと思う。こんな風に面倒なのは、正直がっかりだわ」

そう吐き捨てると、拓斗はそのままドアを開けて出て行ってしまった。


拓斗に酷い言葉を浴びせられた香織。彼女が自分を責めてしまったその訳とは…?

何もない自分


気がつくと、窓の外は薄っすらと白んで、薄く柔らかい光が部屋をぼうっと映しだしている。

ーもう、朝か…。

拓斗が出て行ってから何時間経ったのだろうか?香織はあまりの出来事に頭がついて行かず、泣いては昨夜のことを思い出してまた涙を流す、という事を延々と繰り返していた。



ー頭の中、恋愛ばっかりで何もないんだな。ガッカリだわー

拓斗の言葉が頭の中で何度もリピートされる。今まで生きてきた人生で、聞いたこともないような重く冷たい声。そんな声を好きだった男から発せられた事実にショックが大きかった。

鏡を見ると、目の下にはクマができ、瞼は赤くぼってりと腫れて、とても外に出られそうにない。

ー今日は会社を休もうかな…。どうせ休んだところで誰も困らないし…。

そう思った時、また拓斗の言葉を思い出した。”恋愛以外、何もない”という言葉。それは、自分が一番よく分かっていたことだった。

ー私には恋愛以外、何もないんだ…。

香織はこれまで、何不自由なく暮らして来た。兄と姉のいる3人兄妹の末っ子として生まれ、可愛がられて育った。

「香織は可愛いし愛嬌もあるから、素敵な結婚をしたら良いよ」

優秀な兄や姉とは違い、将来をそれほど期待されてはいなかったが、香織自身、それで良いと思っていた。

地元のお嬢様校へと進んだ彼女は、同じように裕福で恵まれた友人達と大らかに過ごす。

そして大学への進学の際、香織はあることを決意した。

「美大に進みたいの」

昔から美術が得意で、絵を描くことやデザインをすることが好きだった香織にとって、初めて真剣に考えた選択だった。けれどその決断に、親も兄達も反対したのだ。

「美大は就職が難しいし、活躍できるのなんてほんの一握り。それよりもある程度の大学に進んで一般企業に就職した方が、良い人と出会って結婚できる。絵やデザインは趣味程度にやったら良いじゃないか」

一度は反発したものの、特別強い思いがあった訳ではなかった香織は、成績が良かったこともあり、親に勧められるがまま、ある東京の私立大学へと進んだ。

大学に入ってからは毎日キラキラと楽しく、周りからもチヤホヤされ、すっかり学業よりも遊ぶことを優先させてしまった。

そして就職を決める時、ハタと気がついたのだ。

ー自分には、誇れるものが何もないー

就職面接で「あなたのこれまでの最大の困難と、どう乗り越えたかを教えてください」や、「あなたのこれは人に負けないという点は?」という質問に対して、うまく答えられなかったのだ。

それでも持ち前の明るさや愛嬌、知名度のある大学名に見た目の良さから、今の会社に受かることができた。

「一般職の方が素敵な男性と結婚しやすいよ!イイ男捕まえて、幸せな結婚しようね」

同じように遊んでいた友人とそんな風に言っては自分を肯定し、“素敵な男性との結婚”を目標に掲げてこれまで過ごしていた。けれど、心のどこかでこう思っていたのだ。

ー私は、その程度。

特別頭がいい訳ではない、何か突出した才能がある訳でもない。良いのは見た目だけ。

しかしそれすら、芸能人やトップモデルを目指せる程でもない。せいぜい少し、アルバイトで読者モデルや無名広告のモデルを経験しただけだ。

ずっと、何者かになりたいと思っていた。

けれど気がつくと、自分自身が自分に失望し、諦めていた。そしてそんな自分を認めたくないと、ハイスペックな男性と付き合うことで、自尊心を満たそうとしていたのだ。

ー本当に、私って空っぽだな…。拓斗に呆れられるのも、もっともだな。

普通なら、あんな酷いことを言った拓斗を怒って責めていただろう。だが図星を突かれたせいで、香織は彼を責めるよりも自分を責めてしまっていた。

そんな時、ふと棚にあったガイドブックが目に入る。それは以前、拓斗とパリに行きたいね、と言って買ったものだった。

ーパリ…行きたいな。…行こうかな。

来月3連休がある。そこに前後1日ずつ休みをつければ5連休だ。弾丸だが行けない事はない。有給だって結構貯まっているはずだ。

全てに嫌気がさした香織は、無表情のままパソコンを開く。そして現実逃避をするかのように無心になって、パリ行きの飛行機とホテルを予約したのだった。


▶︎NEXT:7月30日 月曜更新予定
急にパリへの一人旅を決めた香織。そこで、思わぬ出会いが待ち受ける…!



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