「私は日本一幸せな女」東京女に新しい“幸せのカタチ”をもたらした、大阪男の底力

「私は日本一幸せな女」東京女に新しい“幸せのカタチ”をもたらした、大阪男の底力

あなたが大阪に抱くイメージは、どんなものだろうか?

お笑い・B級グルメ・関西弁。東京とはかけ離れたものを想像する人も少なくないだろう。

これは、そんな地に突然住むことになった、東京量産型女子代表、早坂ひかりの大阪奮闘記である。

太郎と見事付き合うことになり、恋に仕事に邁進するひかりが挑んだ全国大会は準優勝に終わった。しかし、淳子の激励を受け、絵美子と二年後のリベンジを誓い合ったのだった。

あの日から1年、彼女たちはどうなっているのだろうか…。



「それでは、新郎新婦の入場です!」

両開きの扉から、まばゆいばかりの光と共に、満面の笑みで絵美子が登場する。

その横でエスコートするのは、いつの日か絵美子が一目ぼれした、あの男性だ。

準優勝に終わった後、絵美子は「次こそは優勝する!」と仕事に打ち込んでいた。それが彼にとっては魅力的だったようで、熱心なアプローチを受けた末、交際半年でゴールインするに至ったのだった。

「絵美ちゃん…!素敵!」
「ほんま…!きれいやなぁ!」

うっとりするひかりの横で、淳子が感慨深そうに目を細める。

退社と共に東京に引っ越していった淳子だったが、大阪にちょくちょく戻ってくるため、顔を合わせる機会は意外に多かった。

ひかりが実家に戻ったときに東京で会う機会もあり、東京と大阪が意外に近いということを、改めて実感しているのだ。

「見てるこっちも幸せやし、ご飯はおいしいし、結婚式って最高やなあ…!」

ファーストバイトの動画を最前列で撮影し終えた太郎が、パンにたっぷりバターを塗りながら、心底幸せそうにつぶやく。

「次はあんたらやん!そうそう聞いたで、太郎くん。プロポーズめっちゃスベったらしいな!」

「えっ!うそやん、俺スベってた?!」

慌てる太郎をみて、淳子と二人でケラケラ笑う。

「あ!絵美ちゃん空いた!写真撮りましょう!」

全米が泣くと思ってんけどなぁと、プロポーズを振り返る太郎の腕を掴んだひかりの手には、きらりと光る指輪が輝いていた。


太郎のプロポーズ大作戦とは?!

絵美子の結婚式からさかのぼること、約半年前。

太郎にプロポーズされたのは、付き合い始めて7ヶ月ほどたったころだった。

太郎に「実家に遊びにこーへん?」と誘われたのがうれしくて、二つ返事でOKした。しかし近づくにつれてガチガチに緊張したのを、昨日のことのように覚えている。

吉本家は全員甘いもの好きという情報を元に、『ツマガリ』の焼き菓子と『クラブハリエ』のバームクーヘンを手に訪れると、家族総出の大歓迎を受けたのだった。

「太郎に、こんなかわいらしいお嬢さんが…!もー、お母さん嬉しいわ!」
「しかもキャリアウーマンやで!ブー兄にはもったいないわ…!」

太郎にそっくりな顔の母親と妹が、ひかりに笑いかける。

吉本家では、何かにつけてはたこ焼きパーティーをするらしく、この日もたこ焼きセットがテーブルいっぱいに並べられていた。



「うちのたこ焼きは、キャベツはいれへんのよ。山芋とかつお粉いれてな、半日くらい生地寝かせて、ガス火で焼くとおいしいんよ!」

太郎の母親が慣れた手つきで焼いてくれるたこ焼きはびっくりするほどおいしくて、帰りにレシピを教えてもらったのだった。



その1週間後、ひかりの家に遊びにきた太郎は、大好物のコーラにも手を付けず、しきりに時計を気にしていた。

インターホンに出ようとするひかりを「俺が頼んどいてん!」と制止し、玄関へ一目散に走っていった数分後、後ろに大きな箱を隠しながら戻ってきた太郎は、汗びっしょりだ。

―I think I wanna marry you〜♪

突然スマホから流れるブルーノ・マーズの名曲にのって、大きな箱をひかりに手渡す。

「これで!一生俺のたこ焼きを焼いてください!!」

―これは、きっと…プロポーズだ。

太郎の顔は真剣そのものだけど、“スーパー炎たこ”と書かれたたこ焼き機のパッケージとのギャップに、思わず吹き出してしまう。

「もう、なんなの!…私、うまく焼けないから、たこ焼きは太郎が焼いてよね!」

「わかった!俺が一生焼く!洗い物もするで!やった!やったでー!」

冗談なのか、照れ隠しなのか、はたまた本気なのか、全くわからないけれど、そんなことはどうたっていい。

パァァと笑う彼の顔はたこ焼きみたいにまん丸で、その顔を見ているだけで他は何もいらないとすら思えるくらい、ひかりは幸せを感じたのだった。


さらに2年後、彼女たちの未来はどうなっているのか。



「太郎、今日は何時になる?」
「早く戻る!16時には帰れるから、準備だけよろしく!」

2年後の今、ひかりはメキシコに住んでいた。

商社マンの太郎の海外転勤に伴って、夫婦二人でこちらに引っ越してきたのだ。

「2年くらいで戻れるから、付いてきてくれるかはひかりに任せる!」

そう太郎は言ってくれたが、大阪から30年間離れたことのない太郎の不安さを思うと、答えはすぐに出た。

太郎を送り出した後、だだっ広い部屋の掃除をするのが、毎日のルーティーンだ。

カウンターには数々の思い出と共に、優勝トロフィーを持った絵美子とひかり、そしてその横でほほ笑む淳子が映った写真が飾られている。



幸いなことにひかりは美容部員では初めての、自己都合による休職が認められたのだ。絵美子の熱心な根回しが功を奏したことは間違いないだろう。

淳子の後をついで営業職に転向した絵美子が「パワーアップして帰ってきて!待ってるで!」と笑顔で送り出してくれたことには、感謝しかない。

淳子とは今でも頻繁にやり取りしていて、最近では旦那さんの仕事をサポートしながら美容専門学校の講師も担当するなど、東京でパワフルに活躍している。

「東京の若い子って、大阪弁で注意したらすぐに泣きよんねん。うちってそんなに怖い?」

つい最近は、そんな悩みを打ち明けられた。まるで大阪に行きたての頃の自分を見ているようで、大笑いしたのだった。



大きな生タコを魚市場で買って、もう準備は万端だ。

あのたこ焼き器はすでにテーブルの中央に準備したし、日本食スーパーで買った山芋入りの生地は、吉本家のレシピどおりに午前中に仕込んでおいた。

「ただいまー!!」

ひかりの専属たこ焼きシェフの帰宅を待って、二人っきりのたこ焼きパーティーが始まる。

少し昔に憧れていた華やかなパーティーとは違うけれど、あの頃はただ、こんな幸せを知らなかっただけなのだと、強く思う。

幸せの形は、どこにいるかではなく、誰といるかで決まる。

そう教えてくれた大阪を味わいながら、愛しい人を見つめていられる自分は、日本一幸せな女だと、心から思えるのだった。

―Fin.



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