「高級ブランドばかり買ってると、結婚できないよ?」少しの贅沢も許されぬ、33歳独身女の悲しい現実

「高級ブランドばかり買ってると、結婚できないよ?」少しの贅沢も許されぬ、33歳独身女の悲しい現実

ーただ、結婚していないというだけなのに。

30代独身だというだけで、蔑まれ虐げられ、非難される…。その名も、独身ハラスメント。

それとは一切無縁だったはずの莉央(33)は、ある日突然、独身街道に再び投げ出される。彼女を待ち受けるのは、様々な独身ハラスメントだった。

—結婚だけが幸せの形だなんて、誰が決めたの…?

そんな違和感を強く抱く莉央。自分なりの“幸せの形”を見つけるため、奮闘の日々が始まるのであったー。


アパレルブランド「Noemie(ノエミー)」のブランドマネージャーとして働く莉央は、結婚式目前に突然婚約破棄をされてしまう。

既婚女子・優子からの独身ハラスメントや、周囲からの「美人なのにどうして結婚してないんですか?」という発言にウンザリさせられながらも、莉央は自分が結婚したいのかどうかわからなくなっていた。

取引先の年下男・将暉(まさき)から告白をされかけるが未遂に終わり、同時に莉央は将暉への自分の気持ちにようやく気がついた。



「莉央さん。私、ついに彼氏が出来たんです」

金曜日のランチタイムに訪れた『#uni seafood』で、席に着くや否や、亜樹が頬を紅潮させて切り出した。

つい先日まで独り身を嘆いていた彼女からの突然の報告に、莉央は驚いてメニューから顔をあげる。

「亜樹さん、いつの間に!おめでとう!」

「実は2週間前にワイン会で出会って、その後すぐに付き合い始めたんです。莉央さんにはもっと早く報告したかったけど、確信が持てるまでは誰にも言わないでおこうと思って黙ってたの…」

莉央は思わず「確信って?」と尋ね返す。すると亜樹は、ぽっと照れたように俯いた。

「この人とは大丈夫そう、っていう確信。今まで、最初はよくても付き合い始めたらすぐダメになっちゃうケースも結構あったから…。でも、今度の彼とは、大丈夫そうです…♡」

「と、言うと…?」

「ちょっと早いとは思うんですけどね、実は、私がもうすぐマンションの更新時期だって話したら、彼から一緒に住もうって言われて…。彼とはそのまま、結婚する流れになりそうです…♡」

—たった2週間で、もう結婚の話が…!?早い…!

あまりに急な展開に莉央も戸惑いを隠せない。しかしその後も亜樹は延々と、彼氏のノロケ話を続けていた。

妙にトントン拍子の話に、不安が胸をよぎったが、亜樹はこれまで見たこともないほど幸せそうな笑みを浮かべている。莉央はそんな彼女を見ていたらとても水を差すようなことは言えず、運ばれてきた生うにのパスタを黙々と食べるのだった。


自分の稼いだお金を使っているだけなのに。贅沢すると周りからとやかく言われしまう独身女たちの悩みとは

莉央はふと、あることを思い出した。そういえば以前に亜樹は、更新のタイミングでマンションの購入を検討していると言っていたのだ。

「亜樹さん、じゃあマンションの購入はやめたのね」

すると亜樹は苦々しい顔でこう答えた。

「ああ…あれね、そもそも親に猛反対されて、やめたんですよ。 “独身女のマンション購入なんて、結婚できなくなるからやめてくれ”の一点張りで」

亜樹の両親は、少し古風なタイプのようだ。都心にマンションを持っている女性は男性から引かれてしまう、と言い張るらしく、亜樹も次第に不安になって購入を諦めてしまったのだと語った。

「そっか、まあ親世代だとまだそういう考え方が一般的なのかしら…?今の時代、独身女性がマンション買うのなんて全然珍しくないのにね」

「まあ、ね。でもマンションまで行かなくても、普段の買い物で、周りからとやかく言われたことないですか?洋服とか外食とか旅行とか。ちょっと贅沢するだけで、男性から引かれたり、“金遣いの荒い独身女”呼ばわりされたり」



亜樹の言葉に、莉央も心当たりがあった。

—そういえば…。

昨年のこの時期、莉央は、ずっと以前から欲しかった某ハイブランドの高級バッグをボーナスでついに購入したのだ。しかし友達から“そんな高級ブランドばかり買ってると、結婚できないよ”と言われたことを思い出したのだった。

莉央は脇に置いたバッグにちらりと視線を落とした。亜樹は軽いため息をついてから、再びぼやき始める。

「でも、独身が贅沢すると批判されるのに、結婚してる女性が夫のお金で同じ物を買った場合は、絶対に批判されないんですよね。むしろ“彼女は幸せなのね”って勝ち組扱い。ブランド品でも旅行でもマンションでも、全部そう」

「私たち、自分が稼いだお金で好きな物を買ってるんだから、誰にも迷惑かけてないわよね。気にするのやめよう。それより亜樹さん、彼とお幸せにね」

莉央がそう言うと、亜樹は再びデレデレとした顔に戻る。

「今夜もデートなんです♡先月OPENした『モートンズ・ザ・ステーキハウス』に食事に行こうって約束してるの。あ、そういえば莉央さん、今夜は社長とディナーですよね?」

「そうなの。急に誘われて」

莉央は苦笑いして頷いた。社長が改めて食事に誘ってくるときは、大抵何か大切な要件があることが多く、少し憂鬱だった。嬉しそうにデートの話をしている亜樹がちょっぴり羨ましい。

—でも…私も明日は…デートだわ。

明日の土曜日は、将暉と会う約束をしているのだ。

昨日、彼の後輩・樹里から「マサキさんと付き合わないで」と言われたばかりだが、さほど気に留めてはいなかった。

—どうしよう。ドキドキする。

誰になんと言われようと、自分の気持ちに素直になって行動する。

莉央は確かにそう決心していたのだ。…この瞬間までは。


いよいよ明日はデート…。その頃、将暉は何を考えていた?


マサキの本心


「マサキさん。私、莉央さんと昨晩会いましたよ」

後輩の樹里が、僕に向かって突然そう切り出したのは、金曜の昼休憩の時だ。

「え…?莉央さんに会ったって、どうして?ばったり会ったってこと?」

樹里は意味深に微笑むと、再び口を開いた。

「ちょっとどうしても彼女に言っておきたいことがあって、私から職場に会いに行ったんです。あのね、マサキさん。教えてあげましょうか。莉央さんって本当は…」

僕はあきれて、得意げに何かを語り出した彼女を思わず遮った。

「え?仕事の用件でもないのに、職場に押しかけたってこと?樹里、それはさすがに失礼なんじゃない?」

「でも…」

樹里はすぐにふくれっ面になり、黙り込む。

「今度会ったら、ちゃんと謝った方がいいよ。…で、ごめん。何か言いかけてたよな。莉央さんに、一体何の用事があったの?」

精一杯優しい口調で尋ねたつもりだったが、樹里はみるみるうちに不機嫌になり「もう、知らない!マサキさんなんて、さっさとフられちゃえ!」と豪快な捨て台詞を吐き捨て、どこかに早足で行ってしまった。

僕は、なんだか嫌な予感がした。

樹里は普段から仕事でも、一生懸命ではあるのだが、思い込みが激しい上に気性が若干荒く、時折周りが見えなくなることがある。そうなると手遅れで、これまでもお客様に向かって失礼なことを言ってはトラブルを招くことが何度かあった。その都度、フォローをするのは僕の役目だ。

不意に、少し前に友介さんから言われたことを思い出す。

『樹里、婚活がどうとかいつも騒いでるけど、本当はお前にかまってほしいだけなんだと思うよ。あいつ、間違いなくマサキのこと好きだろ』

友介さんはそんなことを言っていたのだ。それがもし事実だとしたら、莉央さんへの僕の想いに気がついた彼女が、何か余計なことを言ったんじゃないだろうか?

しかし、何度か皆で飲んだだけで莉央さんと特別親しいわけでもない樹里が、そこまでの行動を起こすとは想像しにくかった。

—樹里は僕の彼女でもなんでもないんだし…。

僕はすぐに気持ちを切り替える。

それより早く、彼女に会いたい。会って、この間言えなかった言葉の続きを、今度こそ伝えるんだ。


今度こそ、将暉と莉央は幸せになれるのか?

「間違いなく、僕たちは同じ気持ちだ」


翌日の土曜日。恵比寿の『リストランテ・ダ・バッボ』で莉央さんと食事をすることになった。

個室が予約できたため、先日言いかけたことを伝えるのにはうってつけだと思っていた。

しかし、いざ二人きりで向かい合ってテーブルに座ると、食事中に告白してもしもフラれたら…?と情けない考えが頭の中に押し寄せてきて、なかなか本題には触れられない。

仕方なく世間話をしながら様子を見ていたが、僕が口にする取るに足りないことにも、莉央さんはひとつひとつ反応してくれていた。

手を叩いてケラケラと笑ったり、時には目を丸くして驚いてみせたり、そうかと思えば急に真剣な顔になったり。くるくると表情を変える彼女を見ているだけで、無性に愛おしい気持ちになる。



「莉央さん」

店を出た瞬間に、僕は思い切って切り出した。今ならいける。そう思ったのだ。

「…あなたのことが、好きです。僕と付き合ってもらえませんか」

莉央さんは立ち止まって、僕を黙ったまま見つめている。

—お願いだから、何か言ってくれ…。

外はこんなにも寒いというのに、緊張のあまり背中を汗が伝っていくのを感じていた。

5秒は経過しただろうか。莉央さんはそっと微笑んだかと思うと、ついに沈黙を破った。

「ありがとう。嬉しい」

まるで、この言葉をずっと待っていたとでも言うかのように、彼女はごく自然な様子でそう答えた。

彼女の柔らかな微笑みとともに、張り詰めていた緊張の糸がほぐれていく。

「じゃあ、僕と…」

僕は思わず一歩前に歩み寄り、彼女の手を取ろうとする。しかしその瞬間、彼女はまるで僕を拒絶するように、一歩後ろに下がったのだ。

「でも、ごめんなさい。佐野さんとお付き合いは出来ません」

—えっ…?


その瞬間、僕の周りだけ時が止まったようだった。頭の中で必死に理由を探す。ふと、樹里の様子が昨日おかしかったことを思い出した。

「…もしかして、樹里から変なこと言われましたか?もし彼女が失礼なことを言ったんだとしても、気にしないでほしいんです」

しかし彼女は、こう答えたのだった。

「ううん、樹里さんのことは関係ないの。私の個人的な事情で、あなたとお付き合いはできないんです」

ーそんな…。

僕は、どうしても納得できずにいた。

だってー。

ついさっき告白の言葉を口にしたとき、僕を無言で見つめた5秒間。彼女の瞳には、間違いなくこう書いてあったんだ。

彼女も僕と全く同じ気持ちだ、と。

しかし、たった今目の前に立っている莉央さんの表情は、さっきまでの熱を帯びたような視線から一転して、やけに冷ややかだった。


▶Next:12月17日 月曜更新予定
想いは同じはずなのに。莉央が将暉に「付き合えない」と言った理由とは?



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