「まさか、俺が…?」挫折知らずの東大卒男。ハイスペ夫のプライドが崩れ去った、信じられない悲劇

「まさか、俺が…?」挫折知らずの東大卒男。ハイスペ夫のプライドが崩れ去った、信じられない悲劇

美男美女カップル、ハイスペ夫、港区のタワマン。

上には上がいるものの、周囲が羨むものを手に入れ、仕事も結婚生活も絶好調だったあずさ・30歳。

まさに順風満帆な人生を謳歌するあずさは、この幸せが永遠に続くものと信じていた。

…ところが、夫の非常事態で人生は一変、窮地に立たされる。

幸せな夫婦に、ある日突然訪れた危機。

それは決して、他人事ではないのかもしれない。もしもあなただったら、このピンチをどう乗り越える…?

夫・雄太が会社を休み始めて数日。病状を確かめるべく病院へ行くと、医師からは「うつ状態」という衝撃の診断を告げられる。受け入れられない夫婦はどうなる?



「何か温かいものでも飲む?」

ソファに深々と沈み込み、険しい表情のままビクともしない雄太に向かって、あずさは話しかける。

病院で「うつ状態が見られる」と診断されてから、2週間が経過した。

この2週間、雄太は休職することも心療内科を受診することもせず、有給休暇を使って休み続けている。

あずさが心療内科に行こうと諭しても雄太は頑なに拒み、自分がうつということをどうしても受け入れられずにいるようだ。

「この前買ってきた『ジュリスティールームス』の紅茶開けちゃおうかな!」

何とか場を明るくしようと、あずさは無理やり楽しそうに話しかけたが、雄太は素っ気なく「何でもいい」と答えるだけだ。

「焦らずゆっくり考えれば良いよ。今は体調治すことが一番大事なんだから!」

どうにか雄太を励ましたい一心で言葉をかけたが、それは逆効果だったようだ。

「俺はうつなんかじゃない。病人扱いしないでくれ!」

吐き捨てるように言った雄太は、苛立ちを隠せないのか、膝に置いた拳を小刻みに震わせている。

弱りきった雄太の姿に、あずさは目頭が熱くなった。自分が何をしてあげられるのか、こんな状態がいつまで続くのかと思うと、やるせない気持ちでいっぱいになる。

−私だって、どうしたらいいか分からない…!

これまで雄太を励まそうと明るく努めていたが、本当はあずさもあずさでかなり不安なのだ。ポタポタとこぼれ落ちる涙を手で覆いながら、リビングを飛び出したのだった。


病院で告げられた衝撃の診断を機に、夫婦はすれ違って行く。

受け入れがたい診断


「う、うつ!?」

2週間前のあの日、医師から"雄太にうつ状態が見られる"と告げられたとき。あずさは、想定外の出来事に、思わず声が裏返ってしまった。

完璧主義で仕事熱心、運動神経も抜群で、社交的でアクティブな夫・雄太に、うつ病など無縁のはずだ。

「何かの間違いではないでしょうか?うちの夫に限ってそんなこと…」

身を乗り出して尋ねると、医師は呆れた顔をしてあずさを見つめた。

「食欲がない、眠れない、無気力…など、ご主人の話は、うつの症状と言えます。心療内科への受診を強く勧めます」

「えっと、その…」

「当院の提携病院を紹介出来ますが、どうなさいますか」

言葉を失っているあずさを横目に、医師は淡々とカルテを書き進めている。

−もっと親身になってくれてもいいんじゃないの!?

次の患者もいるし仕方ないのは分かるが、あまりにも無機質で事務的な対応にあずさの神経はチクチクと刺激される。

「では、話し合っていただいてまたお越しください」

カルテを看護師に手渡した医師は、自動音声のように「お大事に」と発し、退室を促した。

「あの…。主人に限ってそんなこと…」

どうしても受け入れることが出来ず食らいついたが、医師の顔には、まだ続ける気か、往生際が悪いなと書いてある。そしてピシャリとこう言った。

「私からは何も…。きちんと専門医に診てもらってください」

「はーい、じゃあ待合室でお待ちくださいね」

医師が言い終えるのと同時に、甲高い声をした看護師によって、あずさは強制的に退室させられたのだった。





「わっ!寝ちゃった…」

リビングを飛び出したあずさは、寝室に篭って泣いていたが、疲れ切っていつのまにか寝てしまっていたようだ。

時計は16時を回ったところだった。

「ごめん。寝ちゃって…。あれ、ゆうちゃん?」

リビングに戻ると、そこに雄太の姿はなかった。不思議に思ってトイレや浴室もチェックしたが、雄太がいる気配はない。

ふと玄関を見ると、雄太のサンダルがなくなっている。

−やだ、不用心じゃない!

玄関の鍵は開けっぱなしになっていて、心配性の雄太の行動とは考えられないことだ。普段、同フロアのゴミ捨て場に行くだけでも鍵を閉めるほどの徹底ぶりなのに。

やはり、雄太はどうかしている。

ーコンビニにでも行ったのかな。15分もすれば帰って来るはず…。

そう思って待ってみたが、17時半を過ぎても雄太は帰ってこなかった。

しんと静まり返ったリビングで雄太を待ちながら、あずさの不安は徐々に大きくなっていく。辺りは随分暗くなっているし、かなり冷え込んできた。

“どこかに出かけたの?”

心配になってLINEを送ったが、一向に既読にならない。

不安がピークに達し、いてもたってもいられなくなったあずさは、雄太に電話をかけた。ところが、応答したのは雄太ではなく、無情な機械音だったのだ。

「おかけになった電話は電源が入っていないか…」

−どういうこと…?

全身から一気に血の気が引いた。

雄太が、消えたー。


すれ違う夫婦。夫の本音とは…?

プライド高き夫の胸の内


雄太は、ふらつく足で玄関を飛び出すと、ここ最近自分の身に起きた出来事をぼんやりと思い返す。

あれは、病院を訪れた日の3日ほど前のことだっただろうかー。



−うわぁ、もう朝か…。今日も全然眠れなかったな。

雄太の耳に、隣で眠るあずさのスマホのアラーム音が響く。

ここのところ、寝つきが悪く夜中に何度も目が覚めてしまう。今日のように一睡もできないまま朝を迎えることも増えた。

雄太はこれまでの人生で、過酷な受験期でも大事なプレゼンの前でも眠れなかったことはなく、特技は「いつでもどこでも寝れること」というくらいよく寝るタイプだったというのに。

−そろそろ起きなきゃ…。にしても、頭痛いな。

起きようと何度も試みるが、体が鉛のように重く、どうしても起き上がることが出来ない。

珍しく風邪でもひいたのかと思って自分の額に手をあててみるが、身体は熱いわけでもなさそうだ。

「ゆうちゃん、そろそろ起きないと間に合わないよ」

あずさに布団を引き剥がされやっとの思いで起き上がったものの、体はだるく、今にも倒れそうなほど足元がふらつく。

−今日は休むか…。あー、せっかくの皆勤賞が。

原因はよく分からないが、会社に行ける状態でもないので今日はゆっくり休んで明日に備えようと思っていた。



異変が起きたのは、翌朝だった。

前日と同じようにあずさに叩き起こされ起き上がろうとすると、雄太の身体中から汗が吹き出し、止まらなくなったのだ。

「会社に行かなくては」と思えば思うほど、心臓がドクドクするし、汗が湧いてくる。

−おかしい。どうしたんだ、俺。

自分で自分をコントロール出来ない。訳が分からず焦っていると、痺れを切らせたあずさに「いい加減にしてよ!」と怒鳴られた。

「会社、行きたくない…」

反射的にこんな言葉が口から出ていて、雄太は自分でも驚いた。

何が何だかさっぱり分からない。

布団でモゾモゾすることしか出来ない雄太を見かね、あずさがものすごい剣幕で怒ってきたが、今の雄太には妻の気持ちを慮れるほどの余裕など一切なく、会話するのも億劫だ。

一刻も早くあずさに立ち去って欲しいという一心で「…疲れた」と言ってしまい、悪いなとは思ったが、これ以上感情をぶつけるのはやめてほしかった。

あずさが会社に行った後、さすがに自分の不調が気になった雄太は、ベッドの中でスマホを眺め、症状を検索する。

“眠れない、朝起きられない、だるい…”

癌とか腸閉塞とか、最近どこかで聞いた病名を浮かべながら、そういえば生命保険の契約内容は何だったけなんて思っていたが、検索結果は予想外のものだった。

画面に映し出された、“うつ病”の文字。

−うつ病?あれは、メンタルが弱くて虚弱体質のタイプがなるものじゃないのか?俺がうつ病だなんて、絶対にありえないだろ。

小さい頃から何事もそつなくこなし、周囲から羨望の眼差しを向けられてきた雄太は「自分は特別」という感覚を強く持っていて、プライドの高さは相当なもの。

うつ病だなんて、プライドが許さない。

挫折やうつ病なんていうのは、雄太には無縁の言葉のはずなのだ。


▶︎Next:2月26日 火曜更新予定
消えた夫の帰りを待つ妻。すれ違う夫婦は一体どうなる…?



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