「離婚してもいい。その代わり…」略奪愛をついに認めた妻が、最後に出した交換条件とは

「離婚してもいい。その代わり…」略奪愛をついに認めた妻が、最後に出した交換条件とは

人のものを奪ってはいけない。誰かを傷つけてはいけない。そんなことは、もちろんわかっている。

しかし惹かれ合ってしまったら、愛してしまったら、もう後戻りなんてできない−。

WEBメディアで働く三好明日香(24歳)は、既婚の上司・大谷亮(おおたに・りょう)と男女の関係に。

離れられない二人は泥沼にハマっていく。

全社メールで関係を暴露され退職に追い込まれた明日香。さらには大谷も妻に不貞がバレ事態は修羅場に。

離婚話をするため家に戻った大谷。しかし離婚する気のない妻が明日香に嘘を吹き込み、それを知った大谷は再び家を出る。

明日香の母とも対面し、固く愛を誓い合う二人を前に妻はついに離婚を決意したかに見えたが…?



再び大谷と暮らし始めた私は、その不安定な現実とは裏腹に、非常に安定した心境で毎日を過ごしていた。

大谷が、母親の前で私を愛していると誓ってくれたこと。そして少なくとも母親だけは自分たちを認めてくれたこと。

その二つが大きな自信になっていた。

そんなある日のお昼休み。

“会って話したいことがあるの”

ランチに向かいながらスマホを確認すると、意外な人物からLINEが届いていた。

送り主は、田島由香里。大学時代の同級生だが、特に仲が良かったわけではない。親友だった塩沢優は、彼女と同じ高校出身で繋がりがあったようだが。

ほとんど関わりのなかった彼女が、私に何の用だろう?

“久しぶりだね!もちろん、いつでも都合に合わせるよ”

不審に思いながらも、当たり障りなく返信しておく。しかし送信ボタンを押したその直後、私はハッと思い至った。

彼女は確か、昭人と同じ経済学部だった。そして、昭人と同じ公認会計士を目指していたはずだ。

…嫌な予感がする。

“急だけど、今日の夜はどうかな?”

2秒と空けずに届いたメッセージに、私はごくりと息を飲んだ。


突然連絡してきた、田島由香里の用件とは…?

「ずっと、あなたが嫌いだった」


「ごめんね。急に呼び出して」

大きな窓に瞬く夜景を背景にして『ザ・ラウンジbyアマン』に現れた田島由香里は、記憶の中の彼女とは別人に見えた。

パンツスーツを着こなし、綺麗に巻かれた長い髪は美しい栗色に染められている。

学生時代の彼女はどちらかというと地味で弱気な印象だった。しかし今、私をまっすぐに見つめるその目は自信に溢れている。

彼女も昭人と同時に公認会計士試験をパスしたのだろう。聞かなくても、それがわかった。



「あの、私に話したいことって…?」

私を呼び出したのは彼女の方だ。だが田島由香里は挨拶を終えると、黙ったまま何も話そうとしない。居た堪れなくなった私がついにそう尋ねると、彼女は一瞬、気まずそうに視線を逸らした。

「...実は私、小暮くんと付き合うことになった」
「えっ…?」

予想外の言葉に驚きながらも、私はどこかホッとしていた。「なんだ、そんなことか」と拍子抜けしたのもある。

するとそんな私の反応を見た田島由香里が、目の前でぷっと吹き出した。

「三好さんってほんとわかりやすい。今、思いっきりホッとしたでしょ。これでもう彼からしつこくされることもないって。…安心した?」

「別にそんなつもりじゃ…」

そんな風に言い訳してみるものの、図星だった。私はもう昭人の思いに応えることはできない。他の女性と幸せを見つけてくれたなら、少しは罪悪感も薄れる。そう思ったのは事実だ。

「…ずるいよね、三好さんって」

−ずるい?

何を言われているかわからず黙り込む私に、田島由香里はなおも棘のある言葉を続けた。

「そうやって聖人ぶって、自分だけはいつも幸せを掴むんだから。…その影で、どれだけの人が傷ついているかも知らないで」

彼女の声は低く、小さく震えていた。

「私、昔からあなたが嫌いだった。小暮くんと付き合う前だって、三好さん別の人とデートしたりしてたよね?それなのにいつも小暮くんを独占して、気づけば恋人になってて。…私はずっと、小暮くんだけが好きだったのに」

「…それは…ごめんなさい。私、知らなくて…」

突然「嫌いだった」などと言われ、私はただ戸惑った。田島由香里が昭人を好きだったなんて初耳だ。昭人と私が付き合ったことで彼女が傷ついていたなんて…当時の私は知る由もなかった。

「そうよね。あなたは何も知らない。だから悪いことをしたとも思ってない。そうね、確かに悪気はないんでしょ。今回のこともそう。奥さんから奪っておいて、あなたはこう言うのよ。私は奪うつもりなんかなかったって。…そういうところが、ずるい女だって言うの」

吐き捨てるようにそう言うと、田島由香里は私を静かに睨んだ。

「小暮くんは今も三好さんを忘れてないよ。それでも私は彼のそばにいるって決めたの。…こんな気持ち、あなたにはきっと一生わからない」

そう呟く彼女の瞳は、悲しげに揺れていた。痛々しかった。どうにかして昭人の心を手に入れたい。その必死さが伝わってくるようだった。

私は何も答えなかった。反論ができなかったわけじゃない。

私だって、彼女と同じ。彼女が必死であるのと同じだけ、私だって必死なだけなのだ。誰かの痛みを慮る余裕など持てないくらいに。

しかしそんなこと、きっと彼女もわかっているはずだから。

「昭人と…幸せになってね」

しばらく黙り込んだ後、私は彼女にそう言った。伝えるべき言葉だけを、慎重に選んだつもりだ。

私の思いが伝わったかどうかはわからないが、田島由香里はもうそれ以上、私を攻撃しなかった。

きっと彼女は不安で堪らないのだ。だからわざわざ私を呼び出し、昭人と付き合っていると宣言した。

そんな必要はないのに、そうせざるを得なかった彼女の気持ちを思うと、私はまるで自分のことのように胸が苦しくなった。

恋をしたら、誰も美しいままでいられない。

わがままで身勝手で、嫉妬も独占欲も、人間のもつエゴの全てを包含する醜い感情。それが恋心の正体なのかもしれない。

小さく唇を噛む田島由香里を見つめながら、私はそんなことを思った。


田島由香里から交際宣言をされた夜。家に戻ると、事態は急展開していた!?

急展開の夜


その夜、田島由香里と別れ目黒の家に戻ると、思いがけず大谷が先に帰っていた。

彼は今、WEBメディアでの人事部リーダー業務に加え、新会社設立準備も佳境にある。日付が変わる前に家にいるなんて珍しい。

「あれ…?今日は早いんだね」

今戻ったばかりなのだろうか。スーツのジャケットだけを脱いだ状態で立ちすくんでいる。

「舞が…妻が、離婚に合意した」

ゆっくりと私を振り返り、静かに言った彼の言葉を、私はにわかに理解できなかった。

「え…?」

妻が、離婚に合意した。彼は今、そう言った…?

「たった今、電話があって。離婚してもいいって。そう言われた」

思いもよらぬ急展開に、大谷自身も驚いているのだろう。どういう表情をするべきかわからない。そんな様子で私を見つめる。

「本当に…?」

嬉しい。ホッとしている。しかしその感情を表に出してはいけない気がして、私は遠慮がちに尋ねた。

−ずるいよね、三好さんて−

先ほど田島由香里に言われた言葉が頭をよぎり、胸を鋭く抉られた。

「ああ。ただ…」

しかし次の瞬間、大谷が言いづらそうに言葉を濁すのを見て、私の小さな罪悪感はただの焦燥へと変わる。

「とにかく一度自宅に戻って欲しいと言われてるんだ。確かに舞の言うとおり、まだ色々と話し合わなきゃいけないこともある。…明日からしばらく、家に戻ってもいいかな」

嫌だ。彼の言葉を聞いた瞬間、直感でそう思った。ようやく安定したはずの足元が、再びぐらぐらと揺れ始める。

「嫌だ…家になんて、帰らないで」

なんとか口から出た言葉は震えていた。そう、私にだって余裕なんかない。田島由香里と同じ。大谷の心を手に入れたくて、独占したくて、不安で不安で堪らないのだ。

しかし大谷は、私の切実な願いを聞き入れてはくれなかった。

「大丈夫。舞も覚悟はできているはずだし、明日香が心配するようなことはないから」

彼はそう言って私を抱き寄せたが、ざわつく胸はいつまでたってもおさまってくれなかった。


▶NEXT:3月30日 土曜更新予定
最終回:大谷妻は本当に離婚を決意したのか。略奪愛の結末は…?



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