「俺たち、別れた方がいいと思う」女が、たった一通のLINEでハイスペ男にフラれた理由

「俺たち、別れた方がいいと思う」女が、たった一通のLINEでハイスペ男にフラれた理由

女の人生、その勝敗はいつ決まるのかー?

それは就職・結婚・出産など、20代で下した決断に大きく左右される。

ある分岐点では「負け」と見なされた者が、別の分岐点では幸せを勝ち取っていることなんてザラにあるのだ。

昔からその分岐点において、全く異なる結果になる2人がいた。その2人とは福岡出身の幼馴染、塩田ミキと佐藤菜々子。

2019年、28歳のミキは唐突に派遣社員となったはずの菜々子の”玉の輿婚”を知る。

遡ること、5年前の2014年、菜々子が派遣社員になった一方で、ミキは大手化粧品会社に就職し煌びやかな生活を送っていた。

しかしその後、営業から総務への異動、外資系金融で働く恋人からの退職宣言……と、予想外の出来事が重なるミキの人生はどう動くのか?



「ちょっと待ってよ、健斗……!」

“会社を辞める”という急な告白に声が思わず上ずった。

ー愚痴を聞いてもらいに来たのにこんなことになるなんて……。

健斗は、目を合わせることもなく黙っている。一大事だというのに当の本人は心がすでに決まっているのか、慌てふためく様子もない。

「どうしてこんなに急に……。少しは相談してくれても良かったんじゃないの?」

刺々しくなりそうなところを一生懸命抑え、できるかぎりの優しい口調で問いかける。

「……ミキに話しても、どうにもならないだろう」

吐き出すように健斗がつぶやく。

ミキは、健斗のことを“5歳年上なのに少年みたいなお茶目さのある人”だと思っていた。そこに惹かれてもいたのだ。しかし健斗にとっては所詮、“5歳年下の女”でしかなかったのだ。

ー精神年齢が近いと思っていたのは私だけで、 本当は隣に並んでなんかいなかったんだ……。


失いかけてから気づく、恋人の苦悩と本音

ミキはとっさに“寄り添う女”を取り繕おうとして、「何かあったの?会社で嫌なこととか……」と原因を探ろうとした。

「別に特別何かあったわけじゃない。この会社でずっと働き続けるのは無理だなって前から思ってたし……。決断する時が今だと思っただけだよ」

ーで、でも……。外資系金融をやめたら今みたいな暮らしもできなくなるよ?このマンションにも住めなくなるんだよ?

その思いが頭をよぎった瞬間、ミキはまたもや自分中心に考えてしまっていることに気づく。健斗は特段、港区や、ハイクラスなマンションに住んでいたいというこだわりがあるわけではないのだ。

「とにかく、1度落ち着いて考えて」

落ち着いていないのは自分の方だと分かっていながら、ミキはそう言って締めくくった。少し時間をおけば考えも変わるかもしれないと期待するしかなかったのだ。

そしてドアを閉めようと健斗の部屋を振り返った時、もうすっかり見慣れたはずの大きな窓からの景色に、ミキはハッとした。

マンションの通りを挟んだ向かいには立派な高層ビルがある。確か、どこかの有名外資系企業が入っているビルだ。10階に位置するこの部屋の窓から見える景色は、そのビルで遮られていた。

ミキが目にしたのは、土曜日だというのに消えないビルの明かり。それも1つや2つではない。

普段は明るいな、くらいにしか思っていなかった。しかしミキは今日、初めてあることに気がついたのだった。

健斗もミキと会っていない週末の時間、あの明かりの下にいるかもしれないことをー。

思えば、健斗から仕事の話を聞くことは全くといっていいほどなかった。誘うのは健斗からがほとんどで、彼はいつも聞き役に回ってくれていたのだ。

”私の彼はワーカホリックだから”と、外資系金融に勤めていることを自慢する意味も込めて、友達にはいつもそうやって笑って話していた。そんな自分が途端に馬鹿馬鹿しく思えてくる。

ー彼のこと、全然理解できていなかったかもしれない……。



日は暮れかけているのに六本木の街はまだまだ明るかった。ミキは煌びやかな東京に憧れ続けていた学生時代を、不意に思い出す。



キラキラしたこの街に憧れてやってくる人たちは、たくさんいる。しかしその輝きに見合うためには多くの代償を払わなくてはいけないのだ。そして、その代償を払えなくなった人たちはやがて去っていく……。

そんな考えが浮かんだとき、ミキは学生時代に戻りたいと強く思ってしまった。まだ、思い通りにならない現実と向き合う必要もなく夢を見ていられる時間に。

ー”憧れ"なんて外から眺めているくらいがちょうどいいのかもしれない……。

しかしそう思った瞬間、ミキはかぶりをふった。

憧れを原動力にして突き進んできたのだ。今更、過去の自分を否定するなど、どうしてもしたくなかった。


恋人の本音を聞いた、ミキの心境の変化

後輩との恋バナで気づいた、ミキの本心


総務に配属されてから3ヶ月がたった。備品の発注や会社の設備に関することなど地味な仕事が多く、営業時代のスピード感が恋しくなる。

健斗からの連絡も、あれ以降途絶えていた。ミキは自分から連絡をして急かすのは逆効果だと思い動かずにいたが、あまりに音沙汰がないので不安は募るばかりだ。

ーもう、別れることになるんだろうな……。

コピーを取りながらぼんやりそう考えていたとき、後輩の沙織が後ろから声をかけてきた。なぜかミキに懐いている唯一の後輩だが、大学時代は演劇サークルで脚本を書いていたという変わり者だ。

周囲と馬が合わない者同士、仲良くしよう、ということだろうか。

「ミキさん、よかったら今日飲みに行きませんか?」

「え、今日?」

いつもなら断るところだが、人恋しさが募っていたミキは誰かと話したいという気持ちが珍しく勝った。

「じゃあ、一杯だけ」

ダメもとだったのか、沙織は少し驚いた表情を見せた。



2人は仕事終わり、牡蠣が好きだという沙織の希望に合わせて『オイスターバー&ワイン ブロン 銀座』に向かった。

後輩と飲みに行くのは初めてで、ミキはカウンターに並んでから、変わり者相手に何を話せばいいのかと頭を悩ませる。すると沙織の方から話し始めた。

「ミキさん、珍しいですね、誘いに乗ってくれるのって」

彼氏と別れそうで寂しかったから、とは言えず、「たまには」と曖昧に答えを濁す。

沙織は変わり者だと聞いていたが、良い意味で意外に”普通”だった。むしろミキの空いたグラスを見て「何か頼みますか?」と尋ねるような気配りもできる。

思いの外、会話は弾み、お酒も進む。自然とプライベートな話題に至った。

「私、最近彼氏と別れたんです。就職してこっちに来たから、友達もいなくて、誰かと話したいってすごく人恋しくなっちゃって……」

沙織の別れた彼氏は学生時代、同じ演劇サークルに所属していたらしく、そのときに付き合いが始まったという。卒業後、彼は就職せず役者を目指して沙織と一緒に上京した。しかし現実は厳しく、結局地元に戻ることに決め別れを選ぶことになったそうだ。

「それは辛い決断だね……」

ミキはそうこぼしつつ、スペックで選ぶのではない、純粋な恋愛をしていた沙織が羨ましかった。

健斗と出会ったときのことを思い出す。最初は確かに人柄に惹かれていたはずなのに、いつの間にか、目に映るのは健斗自身より健斗のもつスペックに切り替わっていた。

「でも、3年も付き合って、いい経験ができました。自分で言うのもなんですけど、成長できた気がするから」

沙織の笑顔は眩しかった。

家に帰り着きぼんやり手帳を開くと、週末の空白欄が目についた。この先健斗との予定が入る予感は全くしない。かと言って、誘える同僚もいない。馬が合わないと早々に切ってしまったのはこちらなのだ。

ふと、去年の今頃は何をしていたのだろうと過去の手帳を開いていく。2年前の3月のページに”菜々子”の名前を見つけた。

ーどうして私は失わないと、その大切さに気付かないんだろう……。

そして翌日、健斗から久しぶりにLINEが来た。



“俺たち、別れた方がいいと思うー”

“想定外”が続いていた中、久々に想像通りの出来事。なのに、そのどれよりも胸が痛む。

ーこの恋が終わって、私には何が残ったんだろうー?

ミキは、沙織が見せたような笑顔には到底たどり着ける気がしなかった。


▶︎Next : 5月28日 火曜更新予定
エリート弁護士と出会った菜々子。2人の関係はどう進展する……?



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