「お金だけじゃ、ない」。人気女優がIT社長と付き合った、本当の理由とは

「お金だけじゃ、ない」。人気女優がIT社長と付き合った、本当の理由とは

—芸能人。

それは選ばれし一部の人しかなれない、煌びやかな世界で生きる人たちのこと。

東京という街は、時に芸能人と出会うチャンスに溢れている。

テレビの中の人物が、ある日突然、レストランで隣の席に座っていることもある。

東京には、夢が溢れている。ドラマのような出会いが、実際にある。


IT社長として財を成した中澤隼人(35歳)も、そんなドラマのような体験をした一人。

今をときめく女優・悠美(ゆうみ)と出会い、仲を深めていく隼人。しかし週刊誌に悠美との2ショット写真が掲載されてしまう。だがそれがキッカケで、二人は急接近する。そんな中、亜弥の思惑によって隼人の会社の上場がなくなるという事態に陥った。



「え、待ってどういうこと?」

隼人から連絡を貰い、私はパジャマから慌ててTシャツに着替え、タクシーに飛び乗った。

明日から早朝ロケのため、今日は伊豆に泊まっていた。タクシーなら、ここから都内まで2時間弱。明日の早朝に出られれば、撮影には間に合う。

メイクもしていないスッピンだし、正直今週刊誌に撮られたら、超絶“ダサい”私服だということは分かっている。しかも、撮影に間に合わなかったら終わりだ。

でも、そんなことはどうでも良かった。

マネージャーにも告げず、私は気がついたら隼人が住むマンションの下にいた。

—隼人:上場中止になっちゃった。亜弥ちゃんがもしかしたら関わっているかも。

隼人からそんなメッセージを貰い、私の頭は一瞬真っ白になった。でも、今私がパニックになっていても何も問題は解決しないし、今はとにかく隼人さんの側にいてあげたい。

そう思い、無我夢中で駆けつけてきたのだ。

「あの〜・・・」

ハッと我に返ると、背後にまだ止まっていたタクシーの運転手さんが怪訝そうな顔でこちらを見つめている。

—あ・・・バレちゃったかな。

そう思ったが、タクシーの運転手さんは気がついていないようだった。

「お姉さん、携帯忘れていますよ」
「え?あら、本当だ。すみません、ありがとうございます」

もう、何でも良かった。撮られても、どうだっていい。だって、私の中で隼人の存在は日に日に大きくなっていく一方だったから。


隼人の所に駆けつけた悠美、二人の絆が今試される・・・

とりあえず持っていた鍵でササっとエントランスをくぐり、部屋の前まで行く。今まで突然押しかけたことなんてなかった。

何となく、インターフォンを押してみる。

—ピンポ〜ン。

しかし返事は、ない。時計を見ると、もう深夜の2時半だ。寝てしまった?もしくは、いない?

来る前に確認すべきだったことに気がつく。無駄に静かな、タワーマンションの廊下。私の服装はといえば、Tシャツと特にオシャレでもないデニム。しかも携帯と財布しか握りしめていない。

恋愛絡みで、こんなに無我夢中になったのは初めてかもしれない。

「ふぅっ」と息を吐いて、恐る恐る玄関の扉に手を伸ばすと、ガチャッと扉が開いた。

「え?ゆ、悠美!? なんでここに?今日は泊まりじゃなかったの・・・?」

数日間しか会っていないのに、一気に痩せたような気がする。何故か私の方が泣きそうになっていると、隼人はいつも通りの優しい笑顔でそっと私の頭を撫でる。

「来てくれて、ありがとう。それだけで、嬉しい」

普段から言葉数の少ない彼だけど、少し消え入りそうな隼人の笑顔に、私は耐え切れずに思わず抱きついた。



「・・・とまぁ、そういうことなんだ」

相変わらず、私の好きな炭酸水を常備してくれている隼人。コトン、と炭酸水のボトルとグラスをテーブルの上に置く音が響く。

しかし一通りの説明を聞き、私は何も言えなくなっていた。全部、私のせいだったから。

全て、私のせいだ。

「隼人さん、ごめん。私と付き合ったばかりに、こんなことになってしまって。本当に、ごめんなさい」

私と出会わなければ、付き合わなければ、隼人の会社は無事に上場し、そしてこんなにも嫌がらせを受けることもなかっただろう。

女優と付き合うだけで、そんなにも会社や周囲に迷惑がかかり、そして影響があるなんて。

「いやいや、悠美のせいでは全くないから。自分の実力不足だし。それに佐藤に落ち度があったのを見抜けなかったこちらが悪いからさ」

正直、隼人がどれほど稼いでいるかは分からない。どこまで余裕があるのかも、分からない。けれども、仕事に関してはとても真摯に向き合っていたし、情熱を注いでいたのも知っている。

「・・・これから、どうするの?」
「そうだなぁ。別に上場ができないからと言って会社が潰れるわけでもないから、今まで通り業務は行いつつ、何か他の方向性も同時に探っていくよ。だから悠美は、心配しないで」

—あぁ、まただ。

ふっと笑う隼人。でもどこか瞳の奥は寂しそうで、私は益々放っておけなくなる。

こんな状況になっても、この人はいつもこうだ。

決して人のせいにはせず、いつも優しい。そんな隼人が、私は心底好きだということに改めて気がついた。


悠美が、IT社長である隼人を好きになった、本当の理由とは?

「本当に大丈夫?送っていくよ?」
「ううん、平気。タクシー呼んだから」

話し終え、早朝ロケのために戻らなければならない自分を恨みつつ、私は伊豆に戻ることにした。

泊まっていっても良かったけれども、今日は隼人も寝たいだろう。“送っていく”と言い張る隼人を説得し、私はタクシーに乗り込んだ。

—アイツも結局、金目当てか。
—またIT社長かよ。
—どうせ、お金でしょ?いいよね、金持ちは芸能人と付き合えて。

最近、ネットで自分の名前をエゴサする度に、こんな文字が躍っているのは自分でも知っている。週刊誌にも面白ろおかしくかき立てられているし、特にSNSをなどのスレッドやコメント欄では大盛り上がりだ。

でも、私が隼人を好きになった理由は、きっと誰にも分かるまい。

「伊豆までお願いします」
「え?い、伊豆ですか?」

驚くタクシーの運転手さんと視線が合わぬように、私は帽子を深くかぶりなおした。



私が彼を好きになった理由は、それはたしかに経済力が全く関係ないかと言われれば嘘になるかもしれない。ある程度、プライバシーが守られるような店や家は、それなりにコストもかかるし、それ以外の人たちとは元々出会える機会もない。

けれども、それ以上に私は彼の人としての優しさと、そして彼の壊れてしまいそうに繊細で、孤独なところに強く惹かれたのだ。

「悠美」

彼が私の名前を呼ぶたびに、私の心は満たされた。

物静かで、派手なことはあまり好きではない。もっと偉そうにしてもいいはずなのに、いつも大人数でいる時は隅っこの方で皆を静かに見守っている。

学生の頃から華やかな世界に身を置いているが、私自身が根アカでスーパーポジティブな人間かと言われると、そうでもなかった。

ライトで照らされることが時に窮屈で、眩しすぎて目を細めたくなることもある。ちょっとでも太れば“劣化した”と叩かれ、主演ドラマの視聴率が悪ければ、“時代は終わった”と言われる。

そんな時に出会った、隼人。

静かな湖畔のように、彼はいつも冷静さを保っている。そんな彼といると、私の心はスーッと、平常心を取り戻していけた。

その一方で、たまに仕事のことになると急に狼のような目をして猪突猛進していくその姿に、私はとんでもなく惹かれたのだ。

そして何よりも、彼の瞳に見え隠れする、私への“憧れ”と“羨望”の眼差しが、くすぐったくて、そして心地よかった。

だからこそ、私たちのこの平和で楽しい関係を壊す人は、許せなかった。


タクシーはいつの間にか都内を抜け、無機質なライトが続く高速道路をひたすら真っ直ぐ走っている。

「隼人さん、私が次は守るから」

小さく呟いた声が、聞こえたのだろうか。バックミラー越しに、運転手さんが不審そうな顔をしてこちらを見つめている。

その視線に気づかないふりをして、ふっと笑いながら、私は流れるライトを見つめていた。



—サヨナラ、亜弥。あなたを芸能界から追放します。


▶NEXT:6月3日 月曜更新予定
亜弥に芸能界の制裁が下る・・・!?悠美の下した決断と、二人の運命とは



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