「いい加減にして!」怒りに震える美人妻...“家族ぐるみ”の集まりで起きたトラブルとは

「いい加減にして!」怒りに震える美人妻...“家族ぐるみ”の集まりで起きたトラブルとは

人は、“繋がり”を求める生き物だ。

幸せになりたくて友を求め、恋をし、家族を作る。

そうして幸福な家庭を築いた者は、次第に自分たちだけでは飽き足らず、よその家族まで求めてしまう。

それが、底なしの沼だとも知らずに...。

マンネリな毎日に飽き飽きしていた海野美希(36)は、夫の海野誠(38)の提案で、誠の学生時代の友人2家族と食事を共にする。

緊張の中で迎えた山本家と日向家とのランチは、それぞれの妻・山本律子と日向千花の友好的なムードによって、美希に「家族ぐるみの付き合い」への強い憧れを抱かせるのだった。

これはさらなる幸せを求め“家族ぐるみの付き合い”を始めた人々の物語。



カチャカチャとカトラリーを動かす音が、賑やかな談笑と子供の笑い声にかき消される。

ぎこちなく始まったランチ会だったが、料理を食べ始めてしばらくする頃には、当初の緊張などすっかり忘れてしまうほど楽しい時間を過ごすことができた。

久々に再会した夫たちの内輪トークがひと段落してくると、次第に3夫婦全員を巻き込んでの会話が盛り上がっていったのだ。

初めは愛想が無く見えた山本龍太も、話してみれば気のいい豪快な男性だった。

「俺はさぁ、本当嬉しいんですよ!こうして海野と、日向と、家族ぐるみで集まれることが本当に嬉しい。日向、お前がずっと海外にいるからこんなに開催が遅くなったんだぞー!」

そうはしゃぐ山本の姿は、まるで小さな少年のようだ。山本に釣られるように童心に返って笑う誠の笑顔も、学生時代の誠の姿を知らない美希にとってはとても新鮮で可愛らしく見える。

―良かった。初めはちょっと緊張したけど、真奈と2人で公園にいるよりもこの方がずっと楽しい!

だが、美希がそう思いながらグレープフルーツジュースのグラスに口をつけようとしたその時。

和やかな場にそぐわない、厳しい叱責の声が響き渡った。

「もう!いい加減にして!」


お嬢様育ちの奥様が見せた、神経質な一面。友人達に波紋が広がる

声の主は、日向千花だった。

まだ30歳になったばかりという千花は少女のような可憐な見た目に似合わず、その薄い唇を神経質そうにワナワナと震わせながら息子の大志くんを睨みつけている。

見ると、大志くんはテーブルの下に潜って、ビュッフェで取ってきたフルーツをあたりに投げ散らかしているのだった。

「千花…」



そっと嗜めるように日向達也が千花の手を取る。

ハッと我に返った千花は周囲をキョロキョロと見回すと、真っ青な顔で口許を抑えた。

「ごめんなさい、私…皆さんの前でこんな…」

一瞬の沈黙のあと、山本龍太が高らかな笑い声をあげる。

「いやいや、男の子は元気が一番!うちは娘だから静かなもんで、羨ましいくらいですよ。なあ大河くん、お腹いっぱいになって飽きちゃったよな!?」

確かに山本の言う通り、すでに満腹となった子供達の様子には飽きが見える。

大河くんよりおとなしいとはいえ、真奈も、山本家の蘭ちゃんも、持参した折り紙で遊びながらもソファにだらしなく寝そべったりするなど、落ち着かない様子を見せはじめていた。

「もっと子供達が楽しく過ごせる場所の方が良かったかもしれないわね…。ビュッフェなら好き嫌いがあっても食べられるかもって思ったんだけど、私がよく考えないでお店を決めてしまったせいでごめんなさい。

本当は我が家にお招きできたらゆっくりできたんでしょうけど、気の荒い犬が3匹もいて万が一のことがあるといけないから…」

突然、山本律子が見当違いな懺悔を始める。それを聞いた千花が、慌てて反論した。

「そんな!律子さんのせいじゃありません。我が家にこそ来ていただければ良かったんですけど、まだ帰国して間もないものですから片付かなくて…何もかもお任せしちゃってごめんなさい」

「やっぱり…子供達が小さいうちは外食はなかなか難しいかしらね…」

和やかな空気から一変、失意のムードが漂い始める。先ほどまで輝くような笑顔だった男性たちの表情も、すっかり諦めが滲む寂しげな顔に変わってしまっていた。

その様子を前に、美希の脳裏に先日の出来事が蘇る。

楽しみにしていた旅行がキャンセルになり、涙を滲ませる娘と背中を丸める夫の姿。

―せっかくさっきまでみんな、あんなに笑っていたのに…。もう、家族のあんな姿は見たくない…!

気がつくと美希は、突き動かされるように口を開いていた。

「あの…良かったら、次は我が家で集まりませんか?」


なぜ、誘ってしまったのだろう…。美希の複雑な本音とは

うつむきがちだった皆の視線が、一斉に美希に集まる。

暴れる大志くんを押さえつけている日向達也が、おずおずと美希に伺いを立てた。

「美希さん、本当にご迷惑じゃないんですか?」

美希は誠を一瞥すると、日向の方に向き直った。

「ええ。うちのタワーマンション、住民用のBBQテラスがあるんです。家族だけだとなかなか利用する機会もないので、もし良かったらいらしてください。我が家のおもちゃを持っていけば子供達も退屈しないと思いますし。ね、誠くん?」

ぎこちなく頷く誠の反応を待たずに、山本龍太が喜びの声をあげた。

「奥さん!最高!いやぁさすがです!じゃ皆、次回は海野の奥さんのお誘いに甘えて海野家でBBQということで、今日は解散にしますか」

そう言うと山本は、手際よく割り勘の段取りをはじめてしまった。

山本の皿にはまだ、取るだけ取って全く手をつけていない料理がてんこ盛りになっている。

だが、子供がぐずり始めてしまっては食べる気力も失せたのだろうか。

会計を徴収する山本は、もはや用済みと言わんばかりに、口を拭った紙ナプキンを手付かずの料理の上に投げ捨てた。

そんな光景を横目に、食事を残すことにどうしても罪悪感を持ってしまう美希は、自身の皿にわずかに残っていたサラダの残りを急いで頬張る。

ゴールデンウィークにどこへも行かない3家族の集まりということもあり、次回の開催日は今日から間もない連休の最終日ということに決定した。



「バイバーイ!また遊ぼうねー!」

ホテルのロビーで解散した後も、真奈は新しくできた友達にいつまでも手を振っていた。

楽しげな真奈を遠巻きに見つめながら、誠が遠慮がちに美希に話しかける。

「美希…本当に良かったのか?ゴールデンウィーク最終日にもまた集まって、うちでBBQだなんて…無理してないか?」

「ううん。初めはちょっと緊張したけど、皆さんすごくいい人だったから!子供たちから目を離してゆっくり話をするんだったら、レストランだと限界があるもんね。真奈も遊び足りないみたいだったし、私は大歓迎だよ」

「そっか…。あいつらのこと気に入ってくれたんだったらすごく嬉しいよ!ありがとな」

そう言う誠の顔は、心の底から嬉しそうだ。夫の笑顔を見て、美希の心も小さな火が灯ったように暖かくなる。

正直なところ、日向家と海野家を家に招く提案は我ながら性急だったのではと思うところもあった。一度楽しいひとときを過ごすことができたからと言って、まだ、美希自身の友人と言えるような間柄になれた訳ではない。



だが、これも自分の性格だ。

美希には昔から、家族や友人の笑顔を何よりも優先してしまう癖があった。自己犠牲的な面のある性格は、母親が敬虔なクリスチャンであることも多分に影響しているのだろう。

それに何より、我が家だけ明確な理由もないのに、あの場で家に誘わずにいることは難しかったようにも思う。

人が変わってしまったかのように神経質に声を高ぶらせた千花の唇と、手付かずの料理の上にゴミを乗せた山本の大きな手が、美希の頭を一瞬かすめる。

美希はそんなイメージを振り落とすかのように毛先を少し揺らすと、まだ名残惜しそうにしている真奈に手招きをした。

―誠の友達なんだから、素性の知れない人たちを家に呼ぶわけじゃない。子供達がすっかり友達になれたみたいに、私も早く仲良くならなくちゃ…。


ついに訪れたBBQの日。準備に終われる美希を、衝撃が襲う

「ママ!蘭ちゃんと大志くんもうすぐ来る!?」

「12時になったら来るよ。真奈、一緒に遊びたいおもちゃがあったら1階のパーティールームに運ぶから、今の内に選んでおいてね」

BBQの当日、美希は真奈の相手をしつつも朝から台所に篭城していた。誠はビールやワインといった飲み物を買いに車で出かけている。

切って焼くだけの手軽さが魅力なBBQとはいえ、3家族分ともなるとその量は侮れない。

だが、どちらも港区在住の日向家と山本家に、はるばる武蔵小杉まで子連れで食品を運んで来てもらうわけにも行かず、美希は日曜の午前をひたすら大量の野菜や肉を切り続けることに費やしているのだった。

「ふぅ…これくらいで足りるかな」

買って来た食材の全てにやっとのことで下ごしらえを終えた美希は、凝り固まった背中を思い切り伸ばす。その時、キッチン横にあるインターホンが高らかに鳴り響いた。



時刻は、11時20分。

約束の時間より40分も早いが、モニターには無邪気に手を振る山本龍太の顔が大きく映っていた。

―えぇ、もう着いちゃった?30分くらいボーッと休めるかと思ったけど、仕方ないか…。

誠が外出中のため、対応は自分がするしかない。美希はほんの少しの戸惑いとともに、明るい声でインターホンに応えた。

「いらっしゃい〜!ロビーのソファで待っていてもらえます?」

念のため、BBQテラスの付いたパーティールームは1時間前から予約してある。

「真奈、おもちゃ持った?行くよ」と真奈に声をかけると、美希は食材をひとまずキッチンに置き去りにしたまま、ロビーへと山本家を出迎えに向かった。



美希と真奈がロビーに降り立つと、ソファに座っていた律子が美希の姿を認めるやいなや、こちらに向かって大きく手を降った。

フレンドリーな律子の仕草に、思わず少し心が弾む。会うのはたった2回目だが、そのにこやかな表情から律子が自分に親しみを感じてくれているように思えたからだ。

だが、そんな美希の思いはすぐさま疑問へと変わることになる。

「美希さん、今日はお招きありがとう〜」

そう挨拶をしながらソファから立ち上がった律子の装いは、BBQにそぐわない真っ白なレースのマキシワンピースだった。

高級そうなハリのあるワンピースは、まるで「今日、自分は一切働く気はない」という持ち主の決意を声高に代弁するかのように、律子の足元で艶やかにひらめいていた。


▶NEXT:6月14日 金曜更新予定
私は、この家族たちに捧げられた生贄なの?3家族内での容赦のないヒエラルキーが決まっていく



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