「お金なら、私が稼ぐから…」金より愛を選び、自ら世帯主となることを決めた女の後悔

「お金なら、私が稼ぐから…」金より愛を選び、自ら世帯主となることを決めた女の後悔

−“女”の幸せとは、結婚し、子どもを産み育てることである。

そんな固定概念は、とうの昔に薄れ始めた。

女たちは社会進出によって力をつけ、経済的にも精神的にも、男に頼らなくてもいい人生を送れるようになったのだ。

しかし人生の選択肢が増えるのは、果たして幸せなことだろうか。

選択に結果には常に自己責任が伴い、実際は、その重みで歪む女は少なくない。

この連載では様々な女たちの、その選択の“結果”をご紹介する。前回はモラハラ夫に虐げられる久美子を紹介した。

今回は自らが世帯主となることを決めた咲子(32歳)のお話。



「私…お金に目をくらませて、うんと年上のおじさんと結婚しちゃうような女のこと、心底バカにしていたんですよ」

週末、目黒川沿いの『JAHO COFFEE at PLAIN PEOPLE』。

窓の外では、晩夏の日差しを浴びた木の葉が揺れている。

のんびりと穏やかな時間が流れる、そんな平和な空間で、随分と毒のあるコメントを口にしたのは、自身でアパレルブランドを展開しているという咲子・32歳である。

「今の時代、女だって努力さえすれば十分に稼げます。お金が欲しければ、自分で生み出せばいいの。それを楽して暮らしたいがために、大して愛してもいない男と一緒になるなんて…私にはまったく理解不能でした」

30歳のときに新卒から勤めた大手子供服メーカーを退職。OLをターゲットにした手頃な価格帯のアパレルブランドを立ち上げ、たった2年で事業を軌道に乗せた咲子であるから、その言葉にも説得力がある。

しかし彼女はそこまで言うと、急に表情を曇らせた。

「でも…今となれば身にしみてわかります。結婚においてお金がいかに大事か。贅沢ができるとか楽できるとか、そういう話じゃない。なんていうか…男女の本質に関わる問題なんですよ」


金より愛。そう信じていた咲子だったが…実際の結婚生活は、想像以上にシビアだった

咲子はちょうど1年前、龍太という、5歳年下の美容師と結婚した。

彼女は長年、表参道のヘアサロンに通っているが、咲子の担当でもあるトップスタイリスト・ジュンスケは、タレント&モデルの顧客も数多くもつ敏腕美容師。

そのジュンスケについてアシスタントをしていたのが龍太だった。

「素直だし真面目でガッツがあって。ジュンスケさんも龍太を絶賛していました。きっかけは…確か、たまたま話の流れで、ジュンスケさんが私と龍太をお似合いだとか言い始めたんですよ。そんなに言うなら…みたいな感じで、最初はノリ半分でデートしたんじゃなかったかな」

しかし龍太と出会ったのは、まさにアパレルブランドを立ち上げたばかりの時期。正直恋愛どころではなかったが、龍太自身もジュンスケの仕事に振り回されがち。

“デート”と呼べるようなものは最初の1回だけで、そのあとは、お互い仕事が終わった深夜に合流して一杯飲むとか、仕事に行く前に一緒に朝ごはんを食べるとか、そんな関係性が半年近く続いたのだという。

「彼氏なのかも彼女なのかもよく分からない関係性でしたけど、当時の私にはそのくらいがちょうどよかった。

でもブランド立ち上げ1周年を目前にして、ずっと頼りにしてきた、私にとって妹分みたいな子が会社を離れると言い出したの。さすがに精神的に参ってしまって…そんな時、龍太が言ってくれたんです。俺でよかったら、支えになりますって」



正直なところ、未だアシスタントのポジションである龍太の稼ぎは知れている。

将来性があると見込んではいるものの、この先彼がどんな風に成功を掴むか…まだイメージすることもできない。完全に未知だ。

「昔の同期や、学生時代の友人からは猛反対されました。5歳も年下、専門卒の美容師…咲子が選ぶべき相手じゃないわよ、なんて言われて。

だけどそもそも、私は別に結婚相手に安定とか、収入とか求めていませんでしたから。お金なら私が稼ぐ。龍太が精神的に私を支えてくれるなら、彼がいつかスタイリストとして花を咲かせる日まで、私が面倒を見てあげてもいいとさえ思ったんです」

そうして咲子は周囲に反対を蹴散らし、1年前、龍太と籍を入れた。

彼はもともと恵比寿のマンション(というよりアパート)で一人暮らしをしていたので、咲子が暮らす中目黒のマンションに、彼を迎え入れる形をとったという。

咲子のマンションもワンルームだが広さに余裕があったので、二人で暮らすにもなんとか事足りたのだ。

しかし新婚生活が始まって半年も経たぬうち、咲子は龍太の言動に引っ掛かりを覚えるようになる。


「もしかして彼、甘えてる…?」年下夫の言動に、少しずつ不満が募って行く

「ジュンスケさんのアシスタントを辞める。そう言い出したんです、彼」

実のところ、入籍し、一緒に暮らすようになってから、龍太の口から仕事の愚痴を聞くことが増えていた。

例えば表からは決して見えないジュンスケの人使いの荒さであったり、拘束時間に比してまるで割に合わない給料であったり。

…甘ったれている。まだ自分で客を呼び、お金を生み出せる立場ではないのだから当たり前のことだ。

経営者である咲子は、彼に愚痴を聞かされるたびにそう思っていた。

とはいえ龍太は5歳年下。若さゆえだと言い聞かせ、なるべく優しい口調で諭していたのだ。しかしそんな咲子のフォローは、彼にとって何の意味もなしていなかったらしい。

「辞めるべきではないと思いましたが、無理強いしたところで意地になるだけ。言葉をぐっと飲み込んで、辞めてどうするの?とだけ尋ねました。何か次の当てがあるのであれば、まあ理解できなくもないから」

だが咲子の質問に、龍太はただ一言「決めてない」と言ったのだ。



−もしかして…甘えてる?

その瞬間、咲子の中で龍太に対する不信感が一気に膨れ上がった。

「…頼りにされるのが嫌というわけじゃないんです。先ほども話したように、お金なら私が稼げばいい。自分が世帯主になったって構わないと思ったから龍太と結婚したわけで、支えてあげることが嫌なわけじゃない。

ただ、甘えられるのは違う。支えてあげるのは、少しでも早く出世してほしいから。楽をさせてあげるためじゃありません」

…これがもし、男女逆であったなら。

妻が「仕事が辛い」と愚痴をこぼし、ハードワークに疲れたと言って家に入ることを希望した場合、家計に余裕さえあれば、優しく受け止める夫がきっとほとんどだろう。

しかし咲子がいくら稼いでいて、龍太の給料をアテにしていないとはいえ、無職の夫を許容するだけの懐の広さは、さすがに持ち合わせていなかった。

「…そのとき、ようやく気がついたんです。“金より愛”だなんて言ってはいても、私も結局、金を稼がない男を許すことはできない。向上心を無くした男を、愛することなどできないって」

咲子は「アシスタントを辞める」といって聞かない龍太を必死で説得したという。

しかしながら結局、彼はつい先日、ジュンスケと大げんかをした末に退職届けを出してしまったらしい。

「…正直、幻滅しました。でも彼がこうなった原因の一部は、私にあるのかもしれない。私が良かれと思ってしていたこと…例えば、安月給の彼からお金を徴収するのはかわいそうだと思い、家の家賃や光熱費は引き続き私がすべて負担していたことなどが、結果として彼のハングリー精神を奪ってしまったのかもしれません」

咲子は憂いを帯びた表情でそう言うと、再び遠くを見るように窓の外を眺めた。

…まだ龍太には伝えていないそうだが、咲子は近いうち、彼に家を出て行ってもらうつもりでいるという。


▶NEXT:10月4日 金曜日更新予定
「子どもは要らない」そう公言しているDINKS主婦の本音


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