「人妻を狙って、何か悪い?」注目の若手経営者となった男の、底知れぬ闇

「人妻を狙って、何か悪い?」注目の若手経営者となった男の、底知れぬ闇

同窓会で再会した独身キャリア・工藤千明と、専業主婦・沢田美緒。

洗練された美女へと変貌した千明は複数の男性から言い寄られているが、最も気になる男・宇野から「結婚する気はない」と宣言される。

一方、かつて学校一のモテ女だった美緒は、商社マンの夫との間に一人息子を設け幸せに暮らしていた。しかしその風貌にかつての輝きはなく、夫もつれない。

千明に妙な対抗心を抱く美緒は、同窓会で再会した立場逆転男・村尾からデートに誘われ浮かれる。

実は、村尾は“人妻狙い”を公言している遊び人との噂。しかしそれを知らぬ美緒は浮かれてデートを繰り返す。そんな中、千明がキャリア女性向けのファッション誌に大きく掲載されることに。



千明:「このまま突き進むべきか、断るべきか…」


「ずっと追われていた仕事がようやくひと段落しそうなんだ。リフレッシュしたいし、リゾートにでも行こうと思うんだけど…千明ちゃんおすすめの場所ある?」

向かいの席で、宇野が、これまでに見たことのないようなリラックスした表情を私に向けた。

広尾のイタリアン『オステリア スプレンディド』。彼が最近特に気に入っている店だと言って連れてきてくれた。

そう、私は結局、宇野の誘いを断りきれなかったのだ。

「リゾートかぁ。私が今行ってみたいのはダナンのフォーシーズンズかな。インスタで見てたらすっごく良さそう。ホイアンの街並みもすごく素敵みたいだし…」

しばし考えてから、宇野がまだ行ったことのなさそうな、それでいて好きそうなリゾートを提案してみると、彼は満足そうににっこりと笑った。

「さすが。ダナンいいね!…よかったら千明ちゃん、一緒に行かない?」

−え!?それって…。

それはつまり、そういうことだろう。

「えー…っと、日程によるかな。いま私のチームに時短中のママがいて、割と仕事も忙しいかな…」

今一番行きたい場所であるとはいえ、さすがに即答はできず、私はもっともらしい言い訳で言葉を濁した。


宇野から旅行の誘い。しかし千明が掲載された雑誌の発売で、新たな候補も現る!?

−宇野さんと旅行か…。

午前中のミーティングを終え、会議室からオフィスフロアへ戻る間も、考えるのは、例の宇野からの誘いだ。

正直、めちゃくちゃ魅力的な話である。

これまで出会ってきた男性の中でも宇野はダントツで素敵だし、スマートな彼と過ごす時間はいつだって完璧。高級リゾートで、きっと最高にリフレッシュできるに違いない。

もしまだ20代であったなら。彼に結婚願望があるとかないとかお構いなしに即答でOKしていただろう。

しかし現在32歳である私がこのまま宇野と関係を進めてしまったら…まず間違いなく独身街道を爆走してしまうことになる。

それでもいい!と割り切れるところまでは、私はまだ達観できていなかった。



行くべきか、行かざるべきか。

心を決めるどころか、考えれば考えるほどブレブレの思考回路を止めたのは、たまたま鉢合わせた後輩だった。

「千明さん!」

ハリのある声に顔を上げると、廊下の前方で手を振る若い男性の姿がある。

酒井聖。私より6歳も年下の彼は、少し前まで千明と同じマーケティング部門にいた。

今は営業に異動になり、オフィスビルも別なので、最近はまったく顔をあわせることがなかったのだが…打ち合わせか何かでこちらに来ているのだろうか。

「あら、酒井くん。どうしたの?打ち合わせ?」

相手が年下男となると、無駄にいい女ぶりたくなるのはなぜだろう。俯いて乱れた前髪をかきあげ、すました顔で尋ねる。

しかし彼は私の問いには答えず、何やら興奮した様子で私に語りかけた。

「見ましたよ、ブリランテ!千明さん、めちゃくちゃ素敵で…俺、コンビニで興奮して、思わず買ってきちゃいました!」

そう言うと、聖は手に持っていたバッグから、まるで彼には似合わないキャリア女性向けのファッション誌、ブリランテを取り出したのだった。

「え、わざわざ買ったの!?ありがとう…」

−そっか。発売日、今日だっけ…。

巻頭特集の撮影に参加したブリランテは、編集部から数日前に見本誌が送られてきて、自身でも内容を確認していた。

しかし慣れないポージングに引きつった笑顔が自分ではすごく不自然に思え、発売日を心待ちにするどころか恥ずかしくて堪らなかったのだ。

それを聖に絶賛され、嬉しいやら恥ずかしいやら…。どういう反応をして良いか戸惑ってしまう。

ところが聖は周囲の視線も気にせず、大声で絶賛してくれるのだった。

「いやー、やっぱり千明さんはかっこいい。俺の憧れです!!」

「恥ずかしいから、もう…」

せっかくいい女ぶっていたのに台無しだ。聖のテンションの高さに完全にペースを奪われ、オロオロとしてしまう。

「会えてよかったです!」などと言って去っていく聖を、冷や汗をかきながら見送っていると、背後から「ふふふ」という含み笑いが聞こえ慌てて振り返った。

すると同期の真由子が、おかしくて仕方ないといった表情でこちらを見つめていたのだ。

「…見てたの?」

照れ隠しで、眉をしかめる。すると真由子は私の肩をポンと叩き、意味深に囁くのだった。

「酒井聖。かわいいじゃない。…年下も、意外といいかもよ?」


千明に憧れる後輩・聖は、新たな恋人候補となるのか?

−年下もいいかもよ?−

まったく、何を言っているのか。

ただの戯言かと思われた真由子の言葉だったが、その数日後、彼女の囁きは思いがけず真実味を帯びることとなる。

酒井聖から、社内メールでデートの誘いが届いたのだ。

“よかったら一緒に食事に行きませんか。もちろん、ご馳走します!”

その初々しい誘いを無下に断るのも気が引けて、私は少し考えたのち、こう返信したのだった。

“今ちょっと仕事が立て込んでるから、とりあえず会社帰りに少し飲みにいく?”



後輩・酒井聖と待ち合わせをしたのは、銀座の一等地にありながら落ち着いた雰囲気が魅力の、ハイアットセントリック銀座のバー『NAMIKI667 Bar&Lounge』。

少し早めに着いてしまったが、後輩に遠慮することもないだろう。先に一杯頼んで待っているとするか…。

そう思って足を進めたとき、カウンター奥に、見知った顔があることに気がついた。

−あれって…村尾くん?

私か彼、どちらかが人と一緒にいたなら、声をかけることなどしなかった。

しかしちょうど村尾も誰かと待ち合わせているのか独りでおり、さらにはふと顔をあげた拍子にバッチリ目が合ってしまったのだ。

避けるのも不自然なので、仕方なく話しかける。

「…同窓会以来、だね」

同窓会の時にも感じたが、村尾の印象は高校時代とはまるで異なっていた。

昔から変わり者ではあったが、高校時代の彼が周囲から浮いていたのは、単純に不器用さが理由だったように思える。

しかし今、目の前にいる村尾はむしろ、器用さを身につけ、それゆえに何を考えているのかわからない。どう表現して良いかわからない、底知れぬ闇のようなものを感じた。

「そうだね。実は俺、沢口さんとはちょくちょく会ってるんだけどね」

密かに彼を観察していると、村尾は自ら美緒の名を口にした。私はこの機会を逃すまいと、例の疑惑を問いただしてみる。

「…その件だけど。私、村尾くんの悪い噂耳にしたわ。結婚するつもりがないから、わざと人妻狙ってるとかって…美緒のこと、まさかそういうつもりで誘ってるわけじゃないわよね?」

しかし真剣な面持ちで確認する私を見て、村尾はあろうことか、ぷっとふきだしたのだ。

「相変わらず優等生だな、工藤さんは」
「何それ?」

ムッとして突っかかる私を、しかし村尾はまるで気にも留めない。

ヘラヘラとした態度を改めることのないまま、彼は吐き捨てるようにこう続けた。

「別に関係なくない?人妻狙って、何か悪い?…沢口さん、昔は高嶺の花だったけど、今となれば簡単に落ちそうだよな(笑)」

▶NEXT 9月30日 月曜更新予定
村尾はやはりゲス男だった…。そうとも知らず、美緒は村尾との仲を深めていく…。


▶明日9月24日(火)は、人気連載『夫の反乱』

夫から溺愛され、好き放題にやってきた美人妻・めぐみ。最近夫の様子がおかしいことに気づき…。夫を大切にすることを忘れた妻の行く末は?続きは、明日の連載をお楽しみに!



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