「ソレだけは、生理的に許せない…」彼女との結婚も考えていた男が、女を突然フったワケ

「ソレだけは、生理的に許せない…」彼女との結婚も考えていた男が、女を突然フったワケ

男も女も、誰だって恋愛しながら生きていく。

だから愛するカレには、必ず元カノがいる。

あなたの知らない誰かと過ごした濃密な時間が、かつて存在したかもしれないのだ。

愛するカレは、どんな相手とどんな人生を歩んでいたのか――?

幸せ未来のため、相手の過去を知ることは、善か悪か。

あなたは、愛する相手の過去が、気になりますか?

◆これまでのあらすじ

29才の南美は、6才年上の恋人・数也がプロポーズを考えていると知り、幸せの絶頂にいた。だが同時に、彼の2度の結婚歴がどうにも気になっていく。

数也の1番目の妻・竹中桜、そして2番目の妻・福原ほのかそれぞれと密会した南美は、すべての不安を乗り越え、数也と添い遂げることを決意する。

だが交際2年記念日ディナー前、数也からプロポーズされるはずが「別れてほしい」と切り出されてしまい…。



「本当に、私と別れたいの…?」

食前のシャンパンをオーダーした直後、南美は辛抱ならず数也へ尋ねた。

「ああ。ごめんな」

伏し目がちで数也は答えた。南美は声を絞り出す。

「…どうして?」

「俺に黙って、元妻たちと会ってただろ?」

「……」

絶句して、思わず目が泳ぐ。同時に、いつかの雨の日、茉里奈に言われたフレーズがリフレインした。

『バレなきゃいいけど』

気づけば数也は顔をあげ、じっと南美を見据えていた。その目がすべてを物語っている。

会っていない、誤解だよ、と否定する考えすら脳裏によぎらなかった。

「…ごめん。会った」

「俺、そういうの大嫌いなんだ」

数也の語気が強くなった。南美は今、責められているのだ。

「陰でこそこそ嗅ぎ回ったりすることは許せない。軽蔑する」

「うん…。そっか…」

軽蔑。

あまりに重たい言葉だ。恋人に、ましてやプロポーズ予定の相手に、使用する言葉ではない。

別れを告げた数也の気持ちが、いよいよ本物なのだと南美は思い知らされる。

ソムリエがグラスにシャンパンを注いだ。弾けた香りが鼻孔を刺激する。

「どうぞ、まずはご乾杯を」

とても乾杯する気にはならない。南美も、数也も、わずかにグラスを掲げただけで声も出さずに口をつけた。

シャンパンは信じられないほどに美味しかった。

不味かったり、味がしなければ、どれだけ良かったことか。きっとこれから始まるフレンチのフルコースも美味しいだろう。

―美味しいね。

―ああ、とっても美味しい。

プロポーズは当然のこと、そんな日常的な会話すら、もう望めない。

今夜、数也とできる会話は、別れ話だけなのだ。自然と涙が溢れてくる。

「泣かないで聞いてほしいんだ」

数也は、南美にくぎを刺すように、言った。

「泣かれてしまうと、俺も正直に話せなくなる」

南美は叫びたくなる。

―どうして、そんなこと言うの!?

だが堪える。感情的になれば、本当にすべてが終わるとわかっていたからだ。

「…ごめん。そうだよね」

南美は涙をぬぐうが、ぬぐった分だけ目から滲み出る。

「そもそも俺は、南美が思うほど、できた人間じゃない。最低な男だ」


完璧な男が告白する、最低の理由…。

「最初の妻も、2番目の妻も、どんな話を南美にしたのか知らないし、知りたくもないんだ」

語り始めた数也は「ただ…」と付け加えた。

「もし彼女たちが離婚理由を語っていたなら、それが真実だと思ってもらって構わないよ。きっと俺のことを悪く言っていると思うけど、だからこそ離婚に至ったわけだし、言い訳はしたくない」

そこまで言うと数也は一度、シャンパンに口をつけた。

南美は静かに、次なる言葉を待った。

「事実として、最初の妻も、2番目の妻も、俺以外の男性と関係を持ったけど、それも基本的には俺が悪い」

それは、付き合い始めのころにも数也が言っていたことだ。

男性が浮気するときは、本当に浮ついた気持ちで、そういう行為をするが、女性が浮気するときは、だいたいパートナーの男性に原因がある。

女性はよほどのことがないかぎり、浮気なんてしない。するときは、もう末期。

つまり男性の浮気は男性のせい。女性の浮気も男性のせい。世の中に蔓延する浮気はすべて男が悪い。

かつて数也はそう語っていたのだ。

「だから俺は…」

あのころの数也と同じく、まっすぐに南美を見て告げた。

「二度目の離婚のあと、俺はそういう反省を踏まえて、女性と付き合うことに決めたんだ」



「南美と出会って、南美なら大丈夫だと思った。南美なら他の男性と浮気しないし、俺も南美を浮気に走らせるような真似はしないと思った」

喜ぶべき言葉だ。この状況でなければ…。

「もちろん南美以外の女性も見た上で、南美が良いと思った。言い方は悪いけど、南美以外の女性たちのこともしっかりと見つめ、判断し、そして南美がいい、南美しかいない、って思ったんだ」

数也はそこで、ひとつ間を空け、低い声で続けた。

「実は…今、初めて言うけど…」

「うん」

「2回目の離婚のあと、南美と出会うまでの間、良い感じになった女性がいたんだ」

それは南美にとって、初耳だった。

「付き合うことを前提に、その女性をしっかりと見極めた。もちろん、その女性も俺のことを見極めていた。別にそれは構わなかった。でもその方法が許せなかった。

彼女は、俺の元妻たちのことを探ったりして、こそこそ嗅ぎまわったんだ。…今回の南美みたくね」

「……」

「俺と付き合いたくて、俺のことが好きで、だからこそ取った行動なんだって理解できる。でも、どうしても許せなかった。生理的に嫌なんだと思う」

数也の口調は優しかった。怖いくらいに。

「気になるなら面と向かって聞けばいい。なのに俺に黙って、俺の知らないところで、過去をほじくり返されるのは…。納得がいないんだ」

「…その女性とは、その後どうなったの?」

やっと南美は言葉を発した。

「当然、付き合わなかった」

「…そうなんだ…」

「南美は、疑問に思ったことはすべて口に出すような人で、嫌なこともしっかり嫌と言えるし、常に正面から向き合ってくれた。そういうところが好きだった」

好きだった。過去形か…。

「だからこそ今回、南美が元妻たちと密会していたことはショックだった。申し訳ないけど、やっぱり南美もそういう女なんだ、って思ってしまった」

顔も知らないライバル女性と、南美は同じ立場となったのだ。

「そんな気持ちを隠して、付き合い続けることはできない。こうなった以上、俺たちはもう別れたほうがいい」

よどみもない数也の声は、強い意志を感じさせた。


数也とあの人が!?衝撃の繋がりに絶句…。

前菜の皿が運ばれ、ギャルソンが料理の説明を始めた。

南美は、話の中で沸き起こった疑問を、ギャルソンが去ったあと尋ねる。

「数也さんの言いたいことは、わかった。でも…」

「でも、なに?」

「自分のことを最低な男だって数也さんは言ってたけど、それだけは理解できない。数也さんは悪くない。今回のことは…全部、私が悪い…」

そこまで言うと、どうしようもなく感情が込み上げてくるので、南美は懸命に涙を堪えた。

「だったら…南美が知らない俺の過去を、ひとつ教えるよ。たぶん、それは元妻たちも知らない過去だから。

さっき言った、2度目の離婚後に、良い感じになったのって、茉里奈ちゃんのことなんだ」

「えっ…」

「最初は、浅草のバーで知り合った茉里奈ちゃんと付き合おうと思っていたんだ。でも彼女は、俺の元妻たちのことを探ったりしたから、付き合うことをやめた」

頭を殴られたような衝撃が身体を貫いた。

「黙っていて、ごめん。でもわかっただろ?」

数也は吐き捨てるように言った。

「俺は最低の男なんだ」



数也に別れを告げられたディナーから一週間。

悲哀と絶望で、南美はひたすらに仕事に打ち込んだ。仕事をしている時だけは、あの衝撃を忘れることができる。心底、仕事に感謝した。

数也と茉里奈の関係を聞かされたあと、あのフレンチでどんな会話をしたか、正直あまり覚えていない。

数也と連絡も取っていない。店を出たあと、別々にタクシーに乗って帰って、それっきり。ごちそうになったお礼のメッセージも送らなかった。送ることなどできなかった。

心の大事な部分にフタをしたまま生活を続けたが、それでいいんだと納得するしかない。嵐の日には固く窓や扉を閉ざすように、南美は感情の戸締りをした。

嵐が過ぎ去れば、きっと晴れた日が見えることを願って。

しかし、第二の嵐は、固く閉じた戸をこじ開けるように、やってくる。

『数也さんからLINEが来て、教えてもらった』

それはスマホに届いた茉里奈からのメッセージだった。

『黙っていて、ごめんなさい。直接、会って、謝りたい』


親友の謝罪に、南美が取った行動とは?

でも南美は、茉里奈と会うことを拒んだ。

『茉里奈とは会いたくない』

せめて嵐が過ぎ去るまで待ってほしい。それまでは固い戸の向こうで、感情を捨て、ひきこもっていたい。

『わかった。そうだよね…』

既読がつくなり、すぐに茉里奈は返信してきた。

『ただ、これだけは伝えたい。数也さんとのことを黙っていたのは、二人がうまくいけばいいと思ったから』

茉里奈の言い分が南美の心に届くことはなかった。既読をつけても返信することはなかった。



いつかの雨の日のことを、南美は思い出す。

元妻たちのことも含め、数也のことをあれこれ詮索していた南美に対し、茉里奈は「もはやストーカーだよ」と忠告した。

だが南美は、こう反論した。

―茉里奈も同じ状況になったら、きっと私と同じことをするよ。それが人間なんだと思う。

皮肉にも南美の発言は正しかった。茉里奈も同じ状況で、南美と同じことをしていたのだ。

数也は理想の彼氏ではなく、茉里奈は最高の友人でもなく、二人とも人間だった。南美と同じ人間だった。

こうして南美は、恋人に続いて親友も失った。


▶Next:10月27日 月曜更新予定
急展開。秘められた数也の衝撃過去に、すべての伏線が繋がる。


▶明日10月21日(月)は、人気連載『立場逆転』

〜高校卒業後15年。再会した2人の人生は180度違うものとなっていた…。女のプライドをかけた因縁のバトル、続きは明日の連載をお楽しみに!













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