「20代で結婚したら、離婚するわよ・・・!」結婚の呪縛に憑りつかれた、アラフォー女からの警笛

「20代で結婚したら、離婚するわよ・・・!」結婚の呪縛に憑りつかれた、アラフォー女からの警笛

2019年。

「令和」という新しい時代を迎えたが、これまでの慣習や価値観がアップデートされる訳ではない。

このお話は、令和を迎えた今年に保険会社に総合職として入社した、桜田楓の『社会人観察日記』。

1996年生まれ、「Z世代」の彼女が経験する、様々な価値観を持った世代との出会いとは…?

◆これまでのあらすじ

これまでに楓は、「彼氏がいても同時並行は当たり前」と語るアラサー女性社員など、さまざまな年代の価値観の人に出会ってきた。

さて今週、楓が出会う社会人とは…?



「3人で会うの、ほんと久々だね〜!!」
「楓、かなり丸の内OLっぽくなってるよ!」

明日香と詩織に会うのは、配属以来だった。久しぶりに会えた喜びから、3人は口々に話し始める。

今日は、入社2年目になる前に、全国各地から同期が集まる研修だ。また、その研修期間中に平行して「人事面談」も行われるとのことであった。

内容としては、業務を行うにあたっての悩みだけでなく、これからの人生計画において人事部に伝えておきたいこと、と記載されていた。

―人生計画において伝えておきたいこと・・・?

この部分に引っかかった楓だが、自分には思い当たることがないなと思い直し、それ以降は特に気にも留めない程度となった。

だが研修途中、詩織から思いがけぬ報告があった。詩織は3人の中でも特にしっかり者の姉御肌。同期からも一目置かれている。

「私ね、実は彼からプロポーズされたんだ・・・!来年くらいに結婚しようと思っているから、人事面談で伝えようと思って。次の人事異動でも、出来るだけ大阪に残りたいなと思って。」


同期からの思わぬ結婚報告!しかしこの“人生計画”にアラートが・・・!?

この報告は、楓と明日香にとってはなかなかの衝撃だった。

「えー!!!!詩織!おめでとう。」
「羨ましすぎるよ!彼氏さん素敵だね。」

2人のテンションは、自ずと上がる。

「しーっ。今2人に初めていったよ。周りにはまだ内緒なの。」

詩織は恥ずかしそうに2人を制止する。

「まだ先の事かなと思ってたけれど、詩織が結婚するとなると一気に現実味が湧いてきたわぁ。私もがんばろっと。」

3人の中で唯一、付き合っている人がいない明日香が呟く。

「私は、彼が3歳上なこともあるかなぁ。大学時代から付き合っていたし。彼の次の勤務地も、大阪に決定したからプロポーズに踏み切ってくれたみたい。だから私もこのタイミングで人事に報告しようと思って。」

楓たちが勤める会社では、たとえ総合職であっても、結婚後はわりと勤務地の融通が利くという噂があった。

おそらく女性総合職の多くが、結婚後に辞めていってしまう現実を少しでも改善したく、人事がそうしているのだという。

―そういえば、詩織の彼、大阪に本社をおく精密機器メーカーで働いているって言ってたなぁ。

楓はそう思い出し、声をかける。

「じゃあ、詩織も大阪に残りたいよね!うん、それは面談で言った方が後々いいもんね。緊張すると思うけど、頑張って。」



研修最終日、楓達はもう1度集まって、昼食を食べていた。

「それで詩織、人事の反応はどんな感じだった?」

明日香が開口一番に聞いたのは、詩織の婚約報告についてだった。

「うーん。はい、わかりましたって聞いてはくれたんだけど…。妊娠とかタイミング気を付けてくださいねって。まだ新卒1年目で何の成果も出してないと思う人は思いますから…って言われた。」

「え…?そんなこと言われたの?」

「報告する必要があると思ったから言ったんだけど…。そんな言い方されるとは思わなかった。」

「労働時間外の、プライバシーに口出しされる筋合いはないよね。」

会社からプライベートに関して口出しされるのが嫌いな楓は、力強くそう言った。

「うーん…。今後のキャリアプランにも関わることだから報告しておいたんだけどね。でも、もちろん結婚後も仕事は頑張るつもりだし、それはきちんと伝えておいた!」

詩織の前向きな姿に、楓は心打たれる。

お互い理不尽なことがあっても負けないでおこうと言いながら、1週間にわたる研修は終わり、来週からはまた各々の勤務地で業務に就く。



「おはようございまーす。」

翌週、楓が出社すると、先にいた中本が話しかけてくる。

「あら、楓ちゃん。おかえりなさい。毎日飲み会とかして、研修は楽しかったぁって思い出が多いわ。」

―月曜日の朝から、いつものテンションでいられるなんて、中本さんってすごいわ……。

心の中でそうツッコミを入れながら、「大阪配属の仲良い同期と会えて楽しかったです!」と返事をする。

するとそんなことはどうでもいいとばかりに、中本は続けた。

「ねぇ、そういえば噂で聞いたんだけど、今年の1年目、もう婚約するって人多いんだって?」


人事の反応と、それをめぐる社内での噂話

「え…。そうなんですか?あんまり知りませんでした。」

「人事部にいる同期からきいたのよ、だからあんまり広めてはいけないんだけどね。でもまだ1年目でしょ。まだまだこれから出会いとか増えて楽しくなっていくのに信じらんない。もったいないわぁ。もっと相手を吟味してレベル上げたくないのかしら。」

相変わらずの“中本節”が炸裂する。すると正志が、2人の話に割って入ってきた。

「今の話まじっすか。中本さん。」

「ええ。正志くん、先越されてるわよ(笑)」

中本がそうからかうと、正志は大げさに「くっそー」とリアクションした。その様子を見て、中本がけらけらと笑う。

「あ、でも確かに最近俺ネットのニュース記事で、今の新卒の若者たちの一部に晩婚化の逆ともいえるような現象が起きているっていうの読んだんですよ。特にお互いが正社員総合職とかで、大学時代から付き合っていると、社会人1・2年目で結婚を決めてくらしいっす。」

こう正志が話した時、突然がたっと音がした。3人が振り向くと、高橋舞が立ち上がりこう言った。

「私はねぇ、20代で結婚なんてしたら離婚すると思うわっ。」

「そ、そうですよねぇ。まだ世間知らずの子たちばかりですもんねぇ。」

思わぬ展開に、正志は声を上ずらせた。

「桜田さん。結婚なんて、仕事で成果を出してからするものよ。」

そういうと、どこかに立ち去って行った。

―わぉ…。矛先がこちらに向いてきてしまったわ……。

彼女は、チームのメンバーが影で「女帝」と呼んでひそかに恐れている40代の女性だった。

瀧本を独身だといじる岩田も、自分より年上の高橋のことをいじることはできない。

若かりし頃、抜群に綺麗だったであろう面影を残している高橋は、時々こうしたヒステリックな言動を起こす。

高橋が独身なことを周囲は哀れみ、また彼女自身も、そんな空気を痛いほど感じてきたのだろう。



それが余計に悪循環を引き起こし、「独身」という呪縛が彼女を苦しめているようだ。

―組織内の皆が持つ無言の圧力って、時間をかけて人の性格を蝕むんだわ。

「瀧本さん、おはようございます!昨日確認いただいた資料の件で質問があるのですが」

暗くなった職場の空気を少しでも明るくしようと、楓はいつもより元気な声で、仕事に取り掛かった。


▶NEXT:11月19日 火曜更新予定
「女は可愛ければ、可愛いほど良い」そんな意識が見え隠れする、男性が無意識のうちに行いがちな言動とは



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