「え、彼にボディータッチしてた?」ホームパーティ中、笑顔の下で錯綜する女たちの本音

「え、彼にボディータッチしてた?」ホームパーティ中、笑顔の下で錯綜する女たちの本音

―愛情か、それとも執着か?

幼い頃から、聖母マリアのような妻になりたいと願っていた、秋吉紗奈32歳。

しかし、彼女の運命の歯車は、航平からプロポーズを受け取ったときから狂いはじめる。

少しずつ蝕まれていく彼女の心。愛は時に凶器となり得る。

繰り返される心理戦、前代未聞の惨劇が今、はじまる。

♦これまでのあらすじ

会社の後輩・東航平(29)からプロポーズされ、幸せいっぱいの紗奈(32)。一方、以前から航平に想いを寄せていた今井美雪は、紗奈から婚約の事実を聞かされ動揺していた。しかし美雪は航平と出張に行き想いを航平に伝え、2人の距離は縮まる。



12月中旬の土曜日―。

代々木駅前にあるショッピングモールでは木々がライトアップされ、まるで異国の街並みのように演出されている。早くもクリスマスムード満開の街は通り過ぎる人々もどこか華やいで見えた。

朝10時、紗奈は航平とそのショッピングモールで食材の買い物を済ませたあと、ワインやシャンパンを選びながら、これから作るレシピメニューをあれこれ思い浮かべていた。

―なんだか、ちょっとしたクリスマスパーティーみたいで楽しみだな。

今日は、結婚式2次会の幹事を任せている志穂と美雪、それから航平側の友人2人を呼んで顔合わせを兼ねて打ち合わせをしようと、航平のマンションでホームパーティーを開くことになっていた。

「航平、ちょっと待って。オーナメントも買って行っていい?」

航平を呼び止めて、紗奈は雑貨店に足を向ける。彼の部屋にクリスマスツリーがあったけど、パーティーを開くには飾りが少ないように思えたのだ。

「気合い入れすぎじゃないの? ただの打ち合わせなのにさ」

航平は笑いながらそう答えたが、紗奈はワクワクした気分で店内に足を向けた。


楽しいホームパーティーのはずが、美雪の登場により狂いはじめる・・・

そして午後12時半―。

紗奈がキッシュを作り終え、テーブルに並べようとしたそのとき、玄関のインターホンが鳴った。

「いいよ、俺、出るから」

航平が玄関に向かったあと、紗奈もモニターを覗くと、そこには笑顔の美雪が立って手を振っていた。

―美雪ちゃん…。パーティーは午後1時からなのに、なんでこんなに早く来たんだろ。

紗奈は手早く料理を並べ終え、テーブルにグラスを置いた。玄関の方で航平と美雪の明るい声が聞こえてきた。

「お邪魔しまーす! 紗奈さん、こんにちは。わあ、おいしそう!」

やってきた美雪はそう声に出しながら、テーブルの上の料理に視線を落とした。紗奈は笑顔を向ける。



「美雪ちゃん、来てくれてありがとう。ごめんね、まだ準備できていないんだけど、ゆっくりしてて」

「私方向音痴だから迷うかなと思ったんですけど、迷わずに来れました。早く着きすぎちゃってすみません。手伝いますよ!」

そう言って美雪は、キッチンの方にやってきた。

「紗奈さんの料理、ほんとインスタ映えしそう〜!!あ、シャンパン持ってきたので、どうぞ」

紗奈は礼を言って差し出された紙袋を受け取りながら、内心ため息をついた。

―またあのインスタか…。今度はどういう写真を撮って投稿するつもりなんだろう。

以前、美雪は、タイカレー屋さんで偶然会社の先輩に会った、という投稿をしていた。2人とも何も言わないが、その先輩というのは恐らく航平で、その投稿に嫌な予感がしたのを思い出した。

美雪のシャンパンを冷蔵庫に入れたとき、紗奈はハッとして航平に顔を向ける。

「航平、ごめん! ビール買ってくるの忘れてた」

シャンパンとワインは揃っているけれど、航平の友人はビール派だった。ショッピングモールで買って帰ろうと思っていたのに忘れていた。

「あ、そうだった。ごめん、俺も忘れてたし、買ってくるよ」

「航平、ありがとう!」

紗奈が航平に笑顔を向けたのもつかの間、なぜか美雪が自分の鞄を手にして航平のとなりに寄り添った。

「私も一緒に行っていいですか? 他にも美味しそうなお酒があったら買ってこようと思って」

美雪は嬉々とした声でそう言うと、コートを羽織った。

「じゃあ・・・今井さんも来る?」

航平は、まんざらでもないという様子で答えると、表情を隠すようにして玄関に向かった。紗奈を気に留めることもなく美雪は航平の顔を見上げ、笑顔を向けている。

そんな光景を目にし紗奈が唖然としていると、そのまま2人は外に出て行ってしまった。

―え? 美雪ちゃんが一緒に行く必要がある? 航平の受け答えも何か変な気がするし…。

さっきまでの華やかな気分が消えていき、紗奈の不安は少しずつ積み重なるようにして大きくなっていた。

誰もいなくなった部屋でひとり、脱力感に襲われた紗奈は椅子に腰を下ろした。

ー1ヶ月前の出張からだ、航平の様子に違和感を覚えるようになったのは。

あの出張のあと、さり気なく出張中に彼女と一緒だったのかどうか彼に聞いてみた。

しかし、返ってきたのは「今井さんとは別行動だった」という言葉だけだった。

ー私の考えすぎかもしれないけど、何か隠し事があるように見えちゃう...。

考えても仕方がないようなことだとはわかっていても、紗奈はつい疑いの目を向けてしまうようになっていた。


このあと、さらに紗奈が驚愕する出来事が・・・

「ただいまー」

30分後、ドアが開く音がして、航平と美雪が笑いながら帰ってきた。

「おかえり・・・」

紗奈は努めて笑顔を崩さないようにして、2人を出迎えた。航平が靴を脱いで部屋に上がろうとした瞬間、彼の背中に添えられてる白い手が視界に入り紗奈は動きを止めた。

―え? 航平の背中に美雪ちゃんの手が?

それは一瞬のことで、気づいたときにはもう彼女の手は離れていた。

混乱しながらも、紗奈は受け取ったビールを冷蔵庫に入れ、何事もなかったかのように席についた。

ちょうどそのタイミングで志穂と航平の友人2人も到着した。



「私、はじめましてですよね? 挨拶が遅くなってすみません。今井美雪です。東先輩の後輩で一緒に仕事をしてます。2次会、よろしくお願いしますね」

そう言って美雪は男性側の幹事に挨拶をしている。

みんなで乾杯をして、紗奈もシャンパンに口をつける。時折じっと美雪の表情を窺うが、紗奈に見せる顔はいつもと変わらない天真爛漫な表情だけだった。

―どういうこと? さっき、一瞬だけど美雪ちゃんが航平にボディータッチしているように見えたのに…。

疑心暗鬼になりながらも、食事が落ち着いた頃を見計らって、紗奈は2次会までのスケジュールの打ち合わせをはじめた。

5月の結婚式まであと5ヵ月ある。2次会会場の予約とゲストのリストアップは紗奈たちが決めて、演出の内容は4人に任せることになった。

次の日が日曜日なこともあってか、打ち合わせが終わったあともホームパーティーは夜まで続き、航平と4人のゲストの会話が盛り上がる中、紗奈は黙々と食器の片付けをはじめた。

「あ、もうこんな時間。遅くまでお邪魔しちゃってごめんね。もうそろそろ帰ろうかな」

22時頃、そう志穂が言い出すと、あとの2人もそれに続いて帰り支度をはじめた。しかし、美雪だけがまだグラスを手放そうとしない。

「あ、私はまだ電車あるので大丈夫です!」

明るく言い放つ美雪のセリフを聞いたとき、キッチンで洗い物をしていた紗奈の腹わたはすでに煮えくり返っていた。


▶Next:11月22日 金曜更新予定
ふたたび航平と出張に行く美雪。2人の関係はいったいどうなる・・・?



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