エリート人生からの転落…。再起を誓う男が40代で立ち上げた、新たなビジネスとは

エリート人生からの転落…。再起を誓う男が40代で立ち上げた、新たなビジネスとは

慶應義塾大学入学とともに上京した翔太は、晴れて慶應ボーイとなるも庶民とセレブの壁に撃沈。

さらにはようやくできた1歳年上の彼女・花純がお金持ちのおじさんに群がるいわゆるビッチだったことが判明。その悔しさをバネにした翔太は、大手総合商社の内定を勝ち取る。

苦汁を飲んでいた若手を経て28歳でついにモテ期が到来するも、初めて結婚を意識した女性・みな実にあっさりプロポーズを断られ、さらにはシンガポール駐在から戻ると、同期・コジマが先に出世していた。

焦る翔太は一旗揚げてみせると意気込み、大学時代の同級生・一馬がCEOを務めるベンチャーに転職。

COOとして奮闘し、大切な彼女・瑠璃子という存在もできた。ところが上場を目前に、一馬と決別。

40歳で無職となった翔太を支えてくれた瑠璃子と、結婚を決意するのだった。

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40代でようやくたどり着いた、新たな価値観


「俺に、輪島塗の良さがわかる日が来るとはなぁ…」

清澄白河の自宅の一室。僕は山積みになった段ボールからお椀を一つ取り出し、漆のもつ独特の艶を眺めまわす。

よく知らぬ人が見れば、ただの地味なお椀にしか見えないでしょう。しかしこれは全て職人の手作業で作られた伝統工芸品で、10万円近くする高級品。

僕も最初は「え…?これが10万って、嘘だろ?」と思いました。

しかし輪島塗には完成までに124にも及ぶ工程があり、その全てに高度な技術が必要。その作業工程を知れば、お椀1点10万円の値段設定も納得せざるを得ないはずです。

とはいえ、何も趣味で高級品を集めているわけではないですよ(笑)。僕にまだそんな余裕はありません。

実は瑠璃子と結婚を決めて間もなく、僕はついに新たなビジネスを始めました。

なけなしの貯金をはたき、資本金500万円で、日本の伝統工芸品やハンドメイド品の販売を行う「CRAFT JAPAN」を設立したのです。

振り返ると、一馬とストックオプションで揉めてアンドエバーを辞めたことが、僕の価値観を大きく変えたのだと思います。

なんていうか…資本主義に嫌気が差したとでもいいましょうか。

株とかそういう実態のないものに踊らされるのではなく、小さくてもいいから実体経済で、自分の足でしっかり立っていたいと思うようになりました。

誰かと比べて上とか下とか…そういうのにはもう、疲れてしまったんですよね。上には上がいますから。他人と比較してもキリがない。

アンドエバーにいた時、もしあのまま上場しストックオプションでキャピタルゲインを得て、一瞬ウハウハ(笑)できていたとしても、満たせていたのは虚栄心だけだったんじゃないかな。

結局自分に軸がないままでは、他人の価値観に流されて生きるしかない。しかしそれでは一生、自分の人生を生きられないんですよ。


翔太はようやく自分の人生を切り拓いていくのか…?

僕が伝統工芸品に興味を抱くようになったのは、妻・瑠璃子の影響でした。

「この切子、すっごく素敵だと思わない?」

そう言って、彼女が何やら繊細な細工の施されたペアグラスを見せてきたんです。なんでも彼女の大学時代の友人が結婚祝にくれたもので、江戸切子というらしい。

僕はガラスとか器とかそういったものに興味もなくまったくの無知でしたが、彼女があまりに目を輝かせているのでちょっと調べてみたのがきっかけ。伝統工芸の世界は調べれば調べるほどに奥深く、思いがけずがっつり引き込まれていったのです。



CRAFT JAPAN設立後、しばらくは資本金を食いつぶしながら事業展開をしていましたが、創業後半年経ったころ、アンドエバーのようにベンチャーキャピタルではなく、銀行借入で資金調達をしました。

日本の伝統工芸品に代表されるハンドメイド作品は、今世界中に欲しがっている人がいます。

世の中の流れも、大量生産大量消費の時代から地産地消だったりハンドメイドにこだわるトレンドへと変わってきていますよね。

僕はまず、東北や北陸地方をまわって伝統工芸品を1点ものばかり100種類ほど仕入れることにしました。

そしてまず物は試しと、最大手のネットショッピングモールに出品してみたのです。すると、なんと3日も経たずに完売したんですよ。これには僕も正直驚きました。

モノを仕入れて売るというのは商社時代にもやっていたことで、PLなどの肌感覚もあり、事業は最初から比較的順調に回り始めました。

アンドエバーでは大した評価を得られなかった僕ですが、やはり自分には商才があったんだって自信を取り戻すことができましたね。

瑠璃子も出産を機にアンドエバーを退職、CRAFT JAPANを手伝ってくれるようになりました。家族経営です。自宅をオフィスにしているので、仕入れた伝統工芸品たちが部屋を一つ潰していますよ(笑)。

利ざやも薄く、スケールしないと儲からない事業ではありますが、僕は固く誓ったんです。瑠璃子と娘を必ず幸せにするって。

世の中の酸いも甘いも知り尽くした40代のオヤジが青臭いことを言うようですが、その思いさえあればなんだってやり遂げられる気がする。

男ってある程度の年齢に達すると、“誰かのため”じゃないと頑張れなくなる気がします。

自分のためだけに努力できるのは、若いうちだけ。そして自分じゃない誰かのために本気になった時にこそ、どこからともなくパワーが漲ってきて、持てる力の120%を出すことができるんだと思います。


軌道に乗った事業。翔太の人生に影響を与えた人々は今、どうしているのか?

CRAFT JAPANの、リアル店舗を出す。

それは創業当時からの僕の野望の1つでした。そしてその野望がついに、CRAFT JAPAN4期目にして、とうとう実現したのです…!

現在、CRAFT JAPANの年商は約4億円。これまでは妻の瑠璃子と二人三脚でやってきましたが、リアル店舗を構えるにあたり20代の若いアルバイトを男女一人ずつ雇いました。

最初は、東京五輪のインバウンド需要を見据え「銀座に店を出せたら最高だよな」なんて瑠璃子と話したりもしましたが、尋常なく高い固定費を払うだけの価値と体力があるか?を冷静に考えてやめました。

店を出すことに決めた場所は、家から徒歩の場所。清澄白河です。

「またそんな辺鄙なところに」と思われるでしょうか?しかし実際に営業してみて、僕はこの選択が正解だったと感じています。

CRAFT JAPANのお客様は外国人の方も多いのですが、何度もリピートしてくださるのは、モノに対して自分なりの価値観を持つ日本人のお客様。

そういう方は、お店がどこにあろうが足を運んでくださるんです。むしろ隠れ家的な雰囲気を好んでくださる方も多い。中には、日本全国から選りすぐった商品に寄せる僕の思いを直接聞きたいと、わざわざ遠方から訪ねてくださる方もいらっしゃいます。

ただ単に物を買うんじゃない。今は、コミュニケーションやストーリーに価値を置く時代なのだと痛感しますね。


あなたは東京で、何を得ようとしていますか?


こうして振り返ってみると、19歳で東京に出てきてから、本当に紆余曲折の人生だったと思います。

四半世紀を過ぎ、僕は44歳にしてようやく“東京での自分の立ち位置”を見つけられた気がしています。

ここまで来るのに随分と長い時間がかかってしまいましたが、それは僕が必死で東京という大海を泳ぎ続けてきたから。溺れかけたこともありますが、それも含めて自分にとって必要な経験の一つだったと、今はしみじみそう思います。


そうそう、僕の人生のキーマンとなった人たちは、今どこで何をしているのでしょうか。

アンドエバーのCEOである一馬が、上場時のキャピタルゲインで5億円を得たことは前にお話しましたね。しかし上場後、業績は低迷。時価総額も公募時の100億円を割ってしまったそうです。

…人生、ずっと上り調子で進むとは限りませんね。

それから「年収3,000万以下はあり得ない」などと宣い貿易会社の御曹司に嫁いだみな実ですが…なんとすでに別居中だそうです。

これは風の噂で聞いたのですが、彼女は結婚後、自身でボディメイクやエステの総合美容サロンをオープンしたらしい。

頭の切れる彼女ですからビジネスは順調に拡大。夫の資産をアテにしなくても良くなった段階で家を飛び出したようです。なんでもすでに若い恋人がいるとか。…実に彼女らしい。あっぱれです。

ああ、商社時代の同期・コジマのことを忘れていました。

彼は結局、僕がオファーを蹴ったコンゴに駐在したそうです。そこでの奮闘が認められたのでしょうか、30代後半で部長職に。さすがは出世頭です。

ところが40代に入ると部長からなかなか上に上がれない。40代での執行役員や子会社社長も誕生する中、彼は44歳にして部長職のままだそうです。この先どうなっていくのか…今が踏ん張りどき、というところでしょうか。

東京で生きる人生には、様々な選択肢があります。

僕も一馬も、みな実もコジマも。みんな一度は同じステージに立っていたはずなのに、今じゃまるで違う人生を生きている。

しかしそれこそが、東京の面白さですね。

門戸はいつだって開かれ、自らが望み、惜しまぬ努力をするならば、どんな未来だって切り拓くチャンスがある。

東京の空に散らばっているそのチャンスの欠片が、己の限界に制限をかけない野心家の目に、キラキラと眩しく輝いて見えるのかもしれません。


皆さんはなぜ東京にいますか?

東京で何を得るために、もがいていますか?

Fin.

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