いくら時間と金をかけても、モノにならない。

平気で人を振り回し、嫉妬させ、挙句の果てに裏切る―。

東京には、嵌ったら抜け出せない、まるで底知れぬ沼のような女がいるという。

なぜ男たちは、そんな悪い女にハマってしまうのだろうか…?

▶前回:「寄って行かない?」誰もが経験する行事で知り合った女の勘違いな過去



【今週の悪い女】
名前:桃
年齢:31歳
職業:主婦
学歴:MARCH文系学部卒
外見:黒髪スーパーロングのスレンダー美人


連れて歩くのに、恥ずかしくない女


「いやあ、明信さんが結婚するなんて…嬉しいけど意外です!」

僕が婚約したとき、一緒に遊んでいた後輩たちは口々にそう言った。

たしかに僕は独身生活を人一倍謳歌していたので、自分でも意外だった。

それでも結婚を決めたのは、連れて歩くのに一切恥ずかしくない女と、いいタイミングでめぐりあったから。

婚約者である桃は、10歳年下の頭が良くて面白い、それでいて可愛い女だ。

お互い夜の街に繰り出すことが趣味のような僕たちは、共通の友人や知り合いが多いため、婚約の噂もすでにかなり回っている。

桃のほうには連日のように『婚約祝いしよう』『入籍前最後のお祝いで、あの野球選手と飲もうよ』などとメッセージが来ているそうだが、まったく気にならない。

連絡が止まないのは人気者の証拠だし、子作りをすれば遊びに行けなくなる。

…他の男からのオファーが絶えない女と婚約したことで、僕の人生のパズルのピースは綺麗に埋まったのだ。

これまで僕は、ゆっくりと、たっぷり金をかけて、人気者の彼女を支配してきた。


そんな2人の出会いとは…?

人を使って近づいた、賢くて悪い女


桃との出会いは、3年前のこと。渋谷にあるホテルで行われた、とある上場企業の創業者が開いた誕生パーティーだった。

そうした類の集まりはたくさんあり、正直詳細を覚えていないものがほとんどだが、この会だけは鮮明に覚えている。

普段は袖を通さない、特別な日用の真っ赤なジャケットを着ていたからだ。

なぜならその日は、社運がかかった海外メーカーとの商談の日。僕は日本での代理店事業の話をまとめており、気合いが入っていた。

結果、商談は予想以上に成功し、大きな達成感を感じながら会場に向かった。

「お誕生日おめでとうございます、乾杯!」

主役であるカリスマ創業者はその場を圧倒しており、たくさんの女たちが、彼とお近づきになろうと必死に着飾っている。

僕は会場にいた知り合いと談笑していたが、突然、大柄で顔立ちが濃い見知らぬ男性に話しかけられた。

「失礼ですが…どちらの代表の方ですか?赤いジャケットがお似合いですね」

男性の後ろには美脚が際立つドレスを着た女が立っており、それが桃だった。



彼女は綺麗で、人の目を惹く独特な雰囲気があった。

声をかけてきた男性はすぐに去り、残った桃が話しかけてくる。

聞けば、赤いジャケットが気になったが恥ずかしくて声をかけられず、誘ってくれた人にお願いしたらしい。

話し方からは知性が感じられ、顔もよく見ると、控えめで知的な雰囲気だった。

そして気がついた時には、ここを抜けて2人で飲もうと誘ってしまっていたのだ。

嬉しそうにうなずく桃と2人で会場を後にし、西麻布のバーで遅くまで飲み、結局僕の家に泊まった。

僕は次のデートで付き合いたいと思っていたが、案外桃のほうがせっかちで大胆だった。

バーを出てすぐに道端でキスをされたのだが、なんともいえない“相性の良さ”を感じた。

もちろん僕に理性を抑えるほどの自制心はなく、その後すぐに関係は始まったのだ。

あのパーティーにいたくらいだし、彼女が結構な遊び人であることはすぐ分かったが、彼女は“不思議ちゃん”でもあり、付き合いは非常に楽しかった。


男が、女と婚約を決めた一番の理由とは…

退屈しない女が、財布の紐を緩ませていく


付き合い始めてすぐのとある日、面白い出来事があった。

会う約束をしている日に「お肉が食べたい」と言われたので、いい肉をたっぷり味わおうと高級焼肉店のリンクを送ったところ、想像もしない答えが返ってきた。

『あ、ごめん!お肉はお肉でも焼き鳥がいいー!』

― え…焼き鳥?

これまで"焼き鳥"をリクエストしてくる子はいなかった。大半の子たちは、肉と言えば和牛などの高級肉、それにウニやトリュフが乗っているものが出てくるお店を期待していたのに。

彼女は、なんだか読めなくて面白かったのである。

またワインにかなり精通している様子なので、聞いてみると、ソムリエの資格を持っていることも分かった。

こうしたギャップがいくつもあり、読めない行動をする桃に急速に惹かれていき、徐々に僕の財布の紐は緩んだ。

ひとまず、所有していたマンションを明け渡した。

そのマンションは三田にあり、築年数は47年と古く駅歩もあるが、リノベーションを施しているし耐震もバッチリで、住まわせておく分には申し分ない。

あとは衣服やジュエリーや美容代まで…可愛くて面白い彼女を支配したいという欲に任せ、どんどんお金を使っていった。



しかし、彼女と付き合っていくうちに気になることも出てきた。付き合って3年ほど経つのに、夜遊びをやめないのだ。

僕もやめていないので強くは言えないが、噂はチラチラと各方面から聞こえてくる。

そこで僕はもっときちんとした形で彼女を支配したい、という欲にかられて結婚を決めたのだ。

3カラットのグラフのダイヤモンドとバラの花束を用意し「結婚して欲しい」と告げ、とどめを刺した。

予想通り受け入れてくれたが、3年見ているから彼女のことは分かる。…おそらく隠れて遊ぶだろう。

だから自分との子どもを産んでもらうことしか、これ以上、彼女を支配する方法はない。


桃:誰かに養われて生きるのが好き


大学を中退して別の大学に入り直すために、私は関西から上京した。

実は一生懸命受験勉強し、医学部に合格したのだが、ある日プツっと糸が切れてしまったのだ。

きっかけは、北新地の超有名店で父と食事をしていた時、隣の女性がたくさんのダイヤモンドが埋め込まれた時計を、男性からもらっていたことだった。

きっと1,000万はくだらないだろう。

― こういうものを買ってもらう人もいるんだ。

両親ともに医者家系で、「贅沢は自分でできるように」と何度も言われてきた私にとっては衝撃だった。

こんな人がいるなら私だって誰かに面倒を見てもらって生きていきたい。強くそう思ったのだ。

「頼むから、医学部だけは出てくれ」

懇願する父を無視し、大学を中退した。

そして「せめてどこかの大学を出てほしいけれど、関西にいると体裁的に恥」と母に言われ、東京の大学へと再進学を決めた。

東京に出てきてからはずっと、本当の夢に向かって生きていけているような気がする。

学生時代は、学校の授業をそつなくこなしながら遊びに繰り出し、男を捕まえ、たまに夜のバイトをして貯金。その一部を投資に回して生活をしていた。

大学卒業後は定職にはつかず、70歳近い経営者に養ってもらいながら、何ひとつ不自由なく生きていた。が、急に結婚願望が芽生えだしその人とは別れた。

そんなときに、知り合いの弁護士に誘われて行ったパーティーで明信と出会ったのだ。

― うわ、自己顕示欲強そうだけど…いいかも。

赤いジャケットの明信を遠くから見た、率直な第一印象。彼からは、お金の匂いが確実にした。

そしてプロポーズまですんなりともっていったが、多少の誤算はあった。

億ションではあるらしいが、かなり古い、70年代を彷彿させるようなマンションを与えられたこと。

ブランド物を与えられるのは嬉しいが、趣味が微妙で、彼以外との用事でそのブランド物を身につけたくないこと。

彼が、遊んでいる私をよく思っていないこと。

それでも、プロポーズを受けて良かったと思う気持ちに変わりはないから、何も言うつもりはない。

だってあの日の夜から、“誰かに養ってもらって贅沢に生きる”ことが、私の夢だったから―。


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