リカ@殺伐とした自宅


「遊びがバレる人間ってバカだよなぁ。バレないように、もっと頭使えよな。詰めが甘いからこうなるんだよ」

マサルは週刊誌がでっち上げた記事を信じ込み、私とユウセイを容赦なく批判してきた。

放心状態でゲラを見つめていると、『別宅で別居』という文字が目に入ってきた。週刊誌は、私とユウセイの密会だけでなく、夫が別宅に通っている姿も捕らえていたのだ。

「…ねぇ、別宅ってなによ」

「あぁ、リカが悪阻のとき一人になりたいって言ったろ?その時に借りたんだ。子どもの夜泣きがうるさいときにも使おうと思ってさ。起業家たるもの、静かな空間で瞑想する時間が必要なんだよ」

悪阻の具合悪さからも、子どもの夜泣きからも、私は逃げることはできないのに…。男は都合の良いときに逃げることができるなんて、心底羨ましいと思った。

「とにかく、金曜日に記事でるってよ」


金曜日、週刊誌に掲載されたのは別のスクープだった!?リカもマサルも驚愕した衝撃の内容とは…

娘のエマは、毎朝必ず5時に目を覚ます。

新生児期は丸々1ヶ月家に篭っていたが、生後1ヶ月を過ぎた今、やっと一緒に外出することができるようになった。

Baby Diorのベビーカーにエマを乗せ、ケヤキ並木を通り、代々木公園を散歩するのが最近の日課だ。

― そういえば、今日発売だっけ…?

今日が週刊誌の発売日であることを思い出し、胸がざわめく。コンビニに寄って例の週刊誌を手に取ると、センセーショナルな見出しが目についた。

私はいてもたってもいられなくなり、購入し即読み始めた。





『独占スクープ!人気俳優・ユウセイ、衝撃の真相を激白!』

取材班は、渋谷区某所で人気俳優・ユウセイ本人を直撃した。

愛車であるメルセデス・AMG G63から降りてきたユウセイ氏は、サンローランのレザージャケットを着こなしており、男の筆者が見ても惚れ惚れするほどのヴィジュアルだ。

声をかけると、慌てる様子もなく立ち止まり、取材に応じてくれた。

――ユウセイさん、お疲れさまです。元カノである沢山リカさんとの密会が話題になっていますが、お話を聞かせていただけますか。



「はい、いいですよ」

――妊娠中のリカさんと密会し、ドライブをして横浜の夜景を観に行ったのは事実ですか?

「はい、事実です。でも、別にデートではないです。皆さんが想像しているような関係ではありませんから。リカさんは大切な友だちです」

――でも、リカさんは元カノですよね…?大切な友だちと言われても、世間は納得しないと思いますが。妊娠中の女性と密会というのは、いかがなものかと。

「……すみません、これ以上は事務所を通していただけますか?友達でしかないので、僕の口からはこれ以上何も言いようがありません」



――貴方のせいで、リカさんのSNSは大炎上しています。大切なご友人が叩かれていても平気なのでしょうか。この件で、傷ついているファンも多いと思いますが。

「………」

ユウセイ氏は、しばしの間沈黙し、重い口を開いた。

「あの……、真相をお話するので、これ以上デマを流して騒ぎ立てるのは止めていただけないでしょうか。リカさんは、子育て中で大変なんです。僕のせいで世間から勘違いされ、叩かれて傷つくなんて…」

――真相とは…?

「まず、リカさんとは過去に熱愛を報道されたことがありますが、あれは事実無根です。気を使うこともなく、心の底から腹を割って話せる貴重な存在なんです。共演以来、切磋琢磨してきた良きライバルでもあります。それで…」

取材班は、ユウセイ氏の言葉を静かに待った。

「……ずっと隠して生きてきましたが、良い機会なので正直にお話します」


ユウセイが激白した真相とは…?

「実は……、僕は同性愛者です。いわゆるゲイです。なので、リカさんとは皆さんが想像するような関係ではありません。正真正銘の親友です。だから、これ以上リカさんを叩くのは止めて頂きたいです」

取材班はユウセイ氏の勇気ある告白に息を飲んだ。



「突然こんなカミングアウトをして驚かれましたよね。どうしよう、事務所にも許可取ってないし、大変な事態になると思います。

職業柄、女性ファンも多いので、ファンの皆さんを傷つけることになってしまうのは申し訳ないです。

関係者の皆様にも、多大なるご迷惑をおかけすることになります。芸能界、干されるかもしれません。CMもドラマも難しくなるかも…。

この告白はリカさんのためというより、自分のためでもあります。そして自分と同じ秘密を抱える人たちに、少しでも勇気を与えることができればと思い…。

そもそも、なんで秘密にしなければいけないんだって話なんですよ。これが僕なのに。悪いことをしているわけじゃないのに、ひた隠しにしなければならない。

自分の核となる部分を隠し続けていると、自分で自分を認めてあげることが永遠にできないから凄く苦しいんです。

……ずっと苦しんできました。

中学生の時、初めて好きになった相手は男性でした。本人に気持ちを伝えると、気持ち悪がられ、イジメられるようになりました。



自分は普通じゃないんだ、おかしい人間なんだ、自分をさらけ出すと不快感を与えてしまうことになるんだと実感し、それ以来ずっと隠して生きてきました。

葛藤を抱え、誰にも打ち明けられないフラストレーションを溜め続けていたときに、それを昇華できる場所として芸能界に出合いました。

色んな人間を演じることができる俳優は、自分にとって天職でした。

自分以外の人間を演じる俳優は、“自分”でいなければいけない時間が少ないので、苦しみから逃れることができる。

そうやって現実と向き合わないで、ずっと蓋をして生きてきました。

でも、俳優として人気が出て女性ファンが増えるにつれ、皆さんを騙しているような感覚に陥って、また葛藤が生まれました。

そんな時に、リカさんと出会いました。彼女は本当に心が綺麗で、真っ直ぐで、思いやりがある素敵な人で…、毎日色んなことを熱く語り合いました。

それで…、彼女に初めて打ち明けたんです。

彼女は僕の告白を、真っ直ぐに受け止めてくれました。それ以来、僕にとってかけがえのない親友なんです。

リカさんはあの時、僕の秘密を守るために、熱愛報道に目をつぶってくれました。今回も僕を守るために、口をつぐんでくれていた…。

でも、もうこんな茶番はやめにしたいです。

自分に嘘をつくと、大切な人にも嘘をつかせることになってしまう。だからもう、これからは正直に生きていきたいです。

このカミングアウトを機に、誰かが少しでも生きやすくなってくれたらいいなと…。

みんながみんな、胸を張って正直に生きていける世界になれば良いなと思っています。

好きになる相手も、友達になる相手も、性別なんて関係ない。

女だからとか、男だからとか、性別どうこうより、人としての魅力が何よりも大切ですよね。

そして、苦しんでいるのは僕だけじゃない。

女だからこうであれ、男だからこうであれ、母親だからこうであれ…と、みんな性役割を押しつけられ、世の中に求められている行動規範に従って生きている。

そこから少しでも逸脱した行動を取れば、鬼の首を取ったように批判されてしまう世の中。

リカさんだって、妊婦だから…母親だから…と、ただの男友達である僕と会って話していただけで叩かれている。

こんな世の中が少しでも、ほんの少しでも、変わればいいなと願っています…」

ユウセイ氏の勇気ある告白によって、真相が明らかになった。次号では、沢山リカ氏の夫・三枝マサル氏の“秘密”を暴く。


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マサルの悪行は遂にバレるのか…?