「今度こそ、幸せになりたい」

“離婚”という苦い経験を経て、また恋をして結婚がしたいと願う人たちがいる。

そんな彼らの再婚の条件は、実に明確だ。

「一度目よりも、幸せな結婚!」

それ以上でも、それ以下でもない。

幸せになることを、諦めないバツイチたちの物語。

4話からは、バツイチ子持ちの未央の物語がスタートした。

◆これまでのあらすじ
休日にかかってきた見知らぬ番号からの電話は、大学の同級生、純平の元妻だった。元妻は未央に「一度会えないか」と言ってくる。面倒なことに巻き込まれたと予感した未央だったが…。

▶前回:バツイチ男とデートする女。調子に乗るアラフォー女を恐怖に陥れた、見知らぬ番号からの着信



未央は、純平の元妻である菜穂子に呼び出され、家族のためにもう純平と会わないでほしいと懇願されていた。

「養育費はちゃんと払うから、子どもと会う回数を減らしたいと、純平が言ってきたんです」

平日の昼間にはまったく似つかわしくない話に、未央は神妙な面持ちで耳を傾ける。

「その理由は聞かれました?」

菜穂子は俯きながら答えた。

「自分一人の時間を確保したいとの一点張りです。でも、離婚して別々に暮らしているわけですし、純平一人の時間なんて余るほどあるはずじゃないですか!」

まるで、彼への怒りを必死で押さえ込もうとしているように見える。未央が口を挟む隙もなく彼女は言葉を続けた。

「純平が離婚したいと言い出した時、彼は約束してくれました。離婚さえしてくれれば、毎月20万の養育費は必ず払うし、マンションもあげると。土日は必ず子どもに会いにくるって」

― 子どもだって大きくなるし、そんな関係は続くのかな…。

未央は疑念を抱きながらも、「そうですか」と相槌を打つ。


離婚後も、元夫を縛り続けるバツイチ女…その驚くべき理由とは

「金銭面と子どものことを考えて、私は離婚したくなかったですが…その約束があったから離婚に応じたんです」

菜穂子は、自分の境遇に納得いかないような表情をしている。

「でも、離婚したら実際生活は大変で。金銭的にも体力的にも一人ですべてをこなすのは難しくて」

以前、純平は華やかで明るい年下の女性と結婚し、家族仲良く幸せに暮らしていると、共通の友人づてに聞いたことがあった。だが、未央の目の前にいる菜穂子は、もはや女性としての楽しみを放棄しているようにも見える。

「なぜ私が彼に執着しているか、おわかりになりますか?」

そう菜穂子は尋ねた。

未央は菜穂子からの急な質問に戸惑い、どう言えばいいのかわからず、無理やり絞り出すように答える。

「えっと…まだ純平のこと想っているのかなと思っていました…」

すると、菜穂子はそれは違うとでもいうようにため息をついた。

「愛があるわけじゃないですが…こうして毎週家族として会っていれば元サヤに戻れるんじゃないかって信じてるんです」

疲弊したような表情で彼女は続ける。

「私、娘二人を育てていけるようなキャリアもないですし、東京で暮らすとなるとお金もかかりますから」



― 愛がないのに、元サヤはさすがに無理でしょ…。

そうは思う反面、激しく同意する自分もいた。

住む家が確保されており、仕事を続けていた未央にとって、離婚するにあたって金銭面でさほど悩むことはなかった。両親も近くに住んでいたため、もしもの時に子どもを預ける場所もある。

唯一未央が悩んだのは、離婚することで壮太に与えるメンタル面への影響だけだった。

だが、菜穂子のように娘二人を十分養えるだけの収入がなく、近くに頼れる人もいないとなると、元夫に依存するしか術はないのかもしれない。

未央の周りにも、金銭面が心配で離婚できない、とぼやいているママ友は大勢いる。

「シングルマザーが金銭の面で元夫に依存してしまうのは、よくわかります」

そう前置きして、未央は自分の考えを語り始めた。

「それに、私も離婚するとき、子どもが父親と離れて寂しくないか、悩んだこともあります。そういった面では、離婚してからも子どもの両親として二人の関係が続いていくのは悪いことではないと思うんです」

子どもと父親との関係については、菜穂子に共感する部分もある。

しかし、今回自分が巻き込まれることは間違っている、と感じた未央は言葉を選びながら慎重に伝える。

「でも、離婚している以上、彼に恋人や新しい家族ができる可能性もありますし、愛情もないのに彼をずっと縛り付けておくのは、無理なんじゃないかと思います。それに、私はお付き合いしているわけでもありませんから、お力にはなれないかと…」

すると菜穂子が目をきゅっと吊り上げて言う。

「そんなこと、他人に言われたくありません!」

菜穂子の反論に未央は「ごめんなさい…」と謝った。


オリバーと順調に関係を築いていく未央。しかし、彼から思いもよらない報告が…

菜穂子も未央も同じバツイチ。同じ境遇なだけに、彼を縛り続けるよりも、前向きに頑張ってほしいと未央は思った。

「先ほども伝えましたが、私もバツイチなので菜穂子さんのお気持ちもわかります」

嗜めるように未央は彼女にそう告げ、話し続けた。

「余計なお世話かと思いますが…。本当に元サヤを望むなら、二人で一度ちゃんと話し合うのが一番よいかと」

菜穂子は呆然とテーブルの上のカップを見つめたままだった。

「もし今度純平から連絡あっても、もう二人では会いませんから安心してください」

そう言い残し、未央は席を立った。





その日の夜。

未央はワイングラスを片手に、オリバーとLINEをやりとりしていた。

『未央:愛がなくても生活や子どものために夫婦に戻りたいって、どうなんだろうって思っちゃった』

昼間の菜穂子のことをオリバーに報告する。

『オリバー:長く一緒にいる夫婦だって愛は絶対必要だよ。子どものために一緒にい続けるなんてナンセンスだ』

彼の言葉に、自分の意見は間違っていなかったと未央は安堵した。

『未央:そうよね。でも日本だと、時間が経つに連れてお互いの存在が当たり前になってしまって、男女っていう感覚じゃなくなってしまう夫婦は多いのよ』

『オリバー:知ってるよ。だからレスが多いんだよ、日本人は』

先日の子連れデート以来、未央はちょっと空いた時間にオリバーと会ったり、LINEや電話のやりとりをするようになった。今週末は、オリバーの自宅で一緒に過ごす約束もしている。

― もうデーティング期間なんて気にしない。

気になってたその一点が吹っ切れてから、オリバーとの関係は好転した。やはり気が合うし、一緒にいて楽しいと未央は改めて感じた。

LINEでの会話が面倒になったのか、彼が電話してきた。

「恋人も夫婦もなるべく一緒にいる時間を取るべきだし、直接話すのも大事だよね」

iPhoneの向こうにオリバーの声を聞き、気持ちが寄り添っていることを確認する。

「二人でいるためには、お互い寄り添い続ける努力は必要なんだと思うよ」

最初の結婚は、努力が足りなかったのかなぁと思いながら、未央は「そうね」と同調する。

「未央は、僕とだったら寄り添う努力ってできる?」

オリバーも酔っているのか。いつになく執拗に未央に問いかけてくる。

「どうして、そんなこと聞くの?あなたのこと、好きだなって思っているけど…」

「実はね、2ヶ月後にロンドンの本社に戻ることになったんだ。日本には長く住んでいたからまた戻ってこれるかもしれないけど、少なくとも3年はロンドンだと思う」

未央は驚きのあまり動揺を隠せずにいた。

「ようやくまた会えるようになったのに。遠距離なんて…」

「僕も残念だよ。この話は来週末、会って話そう」

オリバーの提案に未央は「わかったわ」と短く答えた。


▶前回:バツイチ男とデートする女。調子に乗るアラフォー女を恐怖に陥れた、見知らぬ番号からの着信

▶Next:5月15日 土曜公開予定
最終回:突然告げられたオリバーの帰国。彼の提案と、それに対して未央の出した答えとは!?