ステイホームの時間が増えたいま、 東京にいる男女の生活は大きく変わった。

その中でも華やかな生活を送っていたインスタグラマーたちが、こぞって夢中になったのが「#おうち美容」。

外からも内からも自分と向き合い「美ごもり」生活を送った人々には、いったいどんな変化があったのだろうか?

1つのアイテムが、人生を変えることもある。

東京で「#美ごもり」生活を送る人々の姿を、覗いてみよう。

今回は夫の前で、常に完璧な妻を演じていた女・華(33)の話。

▶前回:「私さえ我慢すれば…」男にNOと言えない女が、モラハラ彼氏から解放されたキッカケは…



抜け感ゼロの女・華(33)


愛する晃平と結婚して、約3年。子どもはいないけれど、それなりに幸せな生活を送っている。

けれども最近、イライラすることばかりだ。

「華、今日のご飯なんだけど…」
「今作るから、ちょっと待って!」

思わず声が大きくなってしまう。夢にまで見ていた結婚生活。だが現実は、理想とはほど遠い。

仕事が忙しい晃平は、ずっと掃除や洗濯をしてこなかった。そのせいか絶望的に家事ができないのだ。

乾燥機に入れてはいけない洋服まで入れてしまったり、食器洗いをしてくれても泡が残っていたり…。

だから安心して任せられず、結局私がすべての家事をすることになる。

「別に夕飯作りたくないときは、手抜きでもいいよ?」

何もわかっていない夫の一言に、さらにイラだちが募る。夕飯に「手を抜く」とは、どういう意味だろうか。そもそも準備している時点で、手抜きも何もないのだ。

「何でわかってくれないの?」

怒りをぶつけてみても、晃平はキョトンとしている。そんな夫婦生活に、私は最近疲れていた。


何もしてくれない夫。手を抜けない妻。そんな妻が気づいたこととは…?

結婚すると同時に、私は今までフルタイムで勤務していた会社を辞めた。そして依頼があったときのみ、Webデザイナーとして在宅で働くようになったのだ。

一方で忙しい晃平はほとんど家にいることがないから、家事もそれほど負担じゃない。

でもステイホームになり、夫が家で食事をとることが多くなるにつれ、私のストレスは加速していった。

朝も昼も夜も、晃平が家にいる。

これまで昼過ぎには好きな韓流ドラマを見たり、漫画を読んだりしながらゴロゴロできたのに。夫がずっと家にいるとなると、そうもいかない。

自由時間が奪われたことに対するストレスと、晃平の手前、諸々完璧にしていないといけないストレス。これは想像以上のものだった。

「こんな時間から、もう夕飯の準備をしているの?」

16時。重い腰を上げて夕飯の準備をしていると、晃平が驚いたような顔をして鍋を覗き込んできた。今日は煮込み料理だったため、早めに作ってコトコトと煮たかったのだ。

自分でも、要領が悪いのはわかっている。今は便利な調理家電もたくさんあるから、圧力鍋にでも放り込んでおけばいいんだろう。

だが私は、それを使うのは手抜きに思えて気が引けるし、完璧な妻でいないと不安にもなる。

今はフルタイムで働いているわけでもないので、高給取りの晃平と離婚したらほぼ一文無しだ。だから私は必死だった。

家事だけではない。外見も衰えないように、常に完璧でいられるように。家にいるときでも基本的にメイクをしていた。



「わぁ、これ美味しい。さすが華だね」

3時間以上煮込んだ牛肩ロースの赤ワイン煮込みを食べながら、晃平が褒めてくれる。当然だろう。これだけ手間暇かけて、ゆっくり調理したのだから。

「よかった」
「あのさ、華。無理してない?大丈夫?」
「何が?」
「いや、僕のリモートワークが増えて、食事の負担も大きいだろうなと思って。そんな常に完璧じゃなくてもいいんだよ?」

急に顔を覗き込まれ、ドキッとすると同時に腹立たしくもなってきた。こんなにも頑張っているのに、その努力は不必要というのだろうか。

「別に無理なんてしてないよ」

— あなたからの愛情が薄まらないように、こっちは必死なの。

そう思っていたが、夕飯を終え食器を洗い、洗面所の鏡を見て驚いた。自分でもわかるくらい、顔がやつれていたのだ。

そのせいで、浮いて見える濃いファンデーションとアイシャドウ。さらに、人工的で不自然なほど長いマツエクも、なんだか似合っていなかった。

「私、いつからこんな顔してたんだろう…?」

ずっと完璧でいないとダメだと思っていた。何かが欠ければ愛されなくなる気がして、怖かった。

でも疲れ果てて輝きを失っている瞳。幸せなはずなのに、まったく余裕がなさそうなその表情に、自分でもゾッとしてしまった。

「華。もう少し頼ってよ。僕なりにできることをするから」

背後から、晃平がちょっと困ったような表情でやってきた。その言葉を聞いて、私はスッと肩の力が抜けていったのだ。


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ずっと、頑張らないといけないと思っていた。夫の愛情がよそへいかないように、美しくて家事もできる完璧な妻でいなければ、と。

でも、そんなことが必要だったのではない。私はもっと、晃平を信用することに決めた。

まずはロボット掃除機と電気圧力鍋を購入し、家事の時短化を図った。

すると今まで「家電に頼ってはいけない」とこだわっていたことがバカらしくなるほど便利で、時間的にも気持ちの面でも余裕ができたのだ。

そして晃平も、食器洗いでのすすぎ残しを指摘したら気をつけるようになったし、掃除機のボタンを押すのは彼の役割になった。

乾燥機に入れてはいけない洋服まで入れてしまうことは、まだある。けれど学生時代に中華料理屋のバイトをしていた経験からか、ランチは自分で作るようになった。



「晃平、ありがとう」
「ううん。なんかさ、華って常に完璧だから、内心ビクビクしてたんだ。家事も一切手出しできない雰囲気が漂ってて。それに家でもずっとバッチリメイクだし」
「それって、ダメなの?いいことなんじゃなくて?」
「いやいや!常にキッチリしすぎてると疲れるよ。家って本来、リラックスできる場所でしょ?」

すごい衝撃だった。完璧にしていればしているほど、いいと信じていた。

だが私は、本当に大切なことが見えていなかったのかもしれない。

「まつ毛バサバサの目で見つめられると、何も言えなくなるし。家の中では肩の力を抜いて、もっと適当でいいのに」
「適当に、かぁ…」



その後、私はマツエクを完全OFFした。いつもツンと上を向いて、クリンとカールした、ロングのマツエク。

これがないと自分の顔が完成しないと思っていたし、マツエクがないと自信が持てなかった。

だが実際に外してみると、とても清々しい。

常にまぶたの上にまとわりついていた重いマツエクがなくなったことで、なんだかスッキリしたのだ。

それに合わせて、家の中でメイクするのもやめた。せっかくのステイホーム。肌を休ませられる、最高のチャンスだから。

「うん、今の華のほうがずっといい。シンプルでナチュラルなほうが、男は絶対好きだよ」

晃平の笑顔に、私も笑顔になる。

人には頼っていいし、常に完璧でなくてもいい。

主婦だって疲れているときは休んでいい。手を抜けるところは、とことん手抜きでいいのだ。

そう思うだけで、私の心はだいぶ軽くなった。


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