6年ほど前から、「もの凄い天ぷらの名店が静岡にある」と食通の界隈で話題になったこちらのお店。

なんでも、駿河湾の恵みと、地場野菜の香りを閉じ込めた天ぷらは、一度食べると強く記憶に刻まれるという。

今年3月に移転し、新たに風格ある佇まいとなってパワーアップした同店の魅力に迫る。



※コロナ禍の状況につき、来店の際には店舗へお問い合わせください。


東京からたった1時間半でたどり着く非日常へ


到着の瞬間、まずは美しい店がまえにもてなされる。

扉を引くと、そこは富士山の岩が鎮座するウェイティングルームだ。

この『てんぷら成生』の店主・志村さんは、「遠くから来られる方が早めに到着しても楽しめるように」と語る。



ここで食前酒をいただき、木のアーチが粋な廊下を抜けると、この店自慢の圧巻のカウンターがお目見えする。

静岡の杉が端正に張られた天井や壁、樹齢300年超の京都北山檜のカウンターなど、目に入るもの全てが一級品だ。



着席すると、目の前はライトアップされた日本庭園。

食事が進むにつれ店内と庭の照明が4段階に調光され、幻想的な光景が広がる。


ワインとのペアリングによって、天ぷらがさらなる美味しさの高みへ


そんな艶やかな空間でいただく天ぷらをさらに高めるのが、至極のワインペアリング。

ソムリエの中川啓子さんのセレクトと提供温度が完璧で、例えば出汁にくゆらす太刀魚には、旨みの奥深さが釣り合う貴腐ブドウが混ざった「サンセール」を合わせる。

熱くふかふかな身質に、ワインのハーバル調が重なるお洒落さたるや。

同じ一杯の温度が上がり、ふくよかさが増した頃にいただく銀杏は官能の域だ。


一流の大人が愛してやまない、“究極”の天ぷらが続々登場!


店内にBGMはなく、客の感嘆がただただ響く。

“成生”の天ぷらにしかない長く綺麗な余韻に浸り、食べ手がゾーンに入る状態もしばしば。そして、食後は茶室に移動して静岡の煎茶でフィナーレ。

タクシーを待つ間に庭へ出れば、池が鏡となりもうひとつの庭を映す。

天ぷらが生んだ静岡の桃源郷は、一度訪れたら忘れられない食体験を心に刻む。



2ヶ月熟成させた北海道産の「南瓜」。

加熱で出る糖分が衣に引っかかることを利用し、油の上で転がすことでキャラメリゼしている。



八分揚げで油から出し、余熱で仕上げた「おこぜ」。

筋肉質の身がジューシーさを含む繊細な食べ心地に変貌。



海老、三つ葉、蓮根の「天ばら」。

大粒で粘りが少ない藤枝産の米を薪で炊き上げる。

コース 22,000円、ペアリング 15,000円(目安)


なぜ、“成生”の天ぷらは人々を引きつけるのか?


「天ぷらはめちゃくちゃ面白いんです」

揚げ続けて15年になる志村剛生さん。この言葉に、弩級の旨さの理由が集約されている。

志村さんにとって天ぷらは万能の調理法。揚げると同時に蒸すことも焼くこともできて、衣のキャラメリゼまで可能。

自由で遊びが効く調理が、楽しくて仕方ない。

衣の気泡、油の温度、揚げる秒数など無限の組み合わせを駆使して、美味しさの頂を目指している。



席に腰をおろすと、スクリーンのような大きな窓越しに室町時代から続く庭園を望む。

四季ごとに移り変わる木々の表情も感じられて、池の鮎を食べにきたサギを目にすることも。



東京の食通たちがはるばる遠征してまで、この究極の天ぷらを求めて静岡までやってくる。

これ以上ないほどの贅沢なひとときが、ここ『てんぷら成生』には約束されているのだ。


▶このほか:ポン酢なしでも美味しいってすごい!「天然虎ふぐ」が味わえる銀座の名店へ