人間は「生まれながらに平等」である。

これは近代社会における、人権の根本的な考え方だ。

だが一方で”親ガチャ”が話題になっているように、人間は親や生まれる場所、育つ環境を選べない。

事実、親の年収が高いほど、子どもの学力が高いこともデータ(※)によって証明済みだ。

私たちは生きていくうえで、多くの「生まれながらに不平等」な場面に遭遇してしまう。

中流家庭出身の損保OL・若林楓(27)も、東京の婚活市場で、不平等さを数多く実感することに…。

(※)お茶の水女子大「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」

▶前回:婚活中の27歳女に「一生不自由はさせない」と最高のオファーが。それなのに女が快諾できなかったワケ



「はあ…。素敵だなぁ」

何度来ても、ため息が漏れる。私は今、広尾にある低層マンションの前に立っていた。

ゲート内に広がる緑豊かな風景は、ここが東京の一等地であることを忘れさせてくれるような静けさと落ち着きを放っている。

ゲートのエントランスで1回、マンションのエントランスで1回。そしてエレベーターに乗る前にもう1回。合計3つのセキュリティを通過し、ようやく私は目的の部屋にたどり着いた。

「楓ちゃん、いらっしゃい」

ドアを開けて出迎えてくれたのは、私が憧れてやまない樹里さんだった。

生まれながらの勝ち組。それはもちろん、女性にも当てはまる。

婚活がうまくいくかいかないか。並外れた年収を稼ぐ素敵な人と結婚できるか、できないか…。

これも、女側の生まれに深く関係しているのだ。


“結婚”というチャンスで、ステップアップできる女とできない女の差は?

リッチな男と結婚できる、女の特徴


「楓ちゃん、なんだか久しぶりね」
「ご無沙汰しております!今日はお招きいただきありがとうございます。これ、つまらない物ですが…」

恵比寿で買ってきた、手土産のお菓子を樹里さんに渡す。でもこういう人たちに何を買っていけば正解なのだろうか。

「あら、ありがとう。気を使わなくても良かったのに」

今日は樹里さん主催のホムパだった。

いかにも高級そうな、シンプルだけどセンスのいい家具に囲まれた広い部屋。

何人掛けなのか数えたくなるほど大きなダイニングテーブルの上には、バカラのワイングラスがお店のように並べられている。

リビングの窓からは美しい緑が見え、壁にはおしゃれなアート。樹里さんの部屋を改めて見渡していると、ため息が出てきてしまう。

「はぁ…。樹里さんって、本当に素敵ですよね」
「やだ楓ちゃん、改まってどうしたの。ささ、座って!今日はワイン会なんだし、早く飲みましょ」

美しい笑顔を向けられ、こちらまで思わず笑顔になる。

だが話していくうちに、私は一生、彼女のような暮らしを手に入れられないことを悟ってしまったのだ。



今日は私以外に、樹里さんのお友達も2名ほど参加されていた。

3人とも、手元がまばゆいほど輝いている。着ているのは一見カジュアルだけれども、ハイブランドの上質なニットやワンピース。

私とは全然オーラが違った。

「毎年恒例のガラパーティー、今年もダメかしらねぇ」
「そうね〜。そろそろしたいわよね。そういえば樹里さん、今年はパリには?」
「NYとハワイには、年明けくらいにでも行こうかなと思って。あっちに住んでる子どもたちにも会いたいし」
「私も行こうかなぁ。ハワイの別荘、そろそろ見ておかないと」

ハイレベルすぎて全く会話に入れない。ここまでいくと、もはやNetflixか何かのリアリティショーを見ている気分になる。

「みなさん、すごいですね…」

それしか言葉が出てこない。

ちなみに樹里さんの旦那様は、外資系投資銀行の執行役員だという。

彼女の隣に座っている静香さんは、夫が経営する会社が上場を果たし、莫大な資産を手に入れたともっぱらの噂だ(樹里さんがそう言っていた)。

そしてもう1人は、誰もが知っている世界的企業の御子息と結婚した、華子さんだった。

みんな華やかで美しく、そして優しい。

そんな彼女たちを見ているうちに、どうしても聞いてみたくなった。どうやって今の生活を手に入れたのだろうか、と。

最近様々な男性とデートしているので、ずっと気になっていたのだ。家柄がいいお金持ちと結婚できるのも、所詮は生まれたときからのデキレースなのだろうか。

結婚は、人生をスケールアップできるかもしれない絶好の機会。そのチャンスを私でも手に入れることができるのか、知りたかった。

「楓ちゃん、最近はどう?忙しい?」

樹里さんから話を振られ、私はここぞとばかりに話し始めた。

「実は最近婚活をしているんですけど、うまくいかなくて…。皆さんは、どこで素敵なお相手と出会われたんですか?」


東京で圧倒的勝ち組になるために、女が持っておくべきモノ

育ちか、若さか、美貌か。


一瞬、3人が困ったような表情になったことはすぐにわかった。でも、私は聞かずにはいられなかったのだ。

「そっかぁ。楓ちゃん、今おいくつ?」
「27歳です」
「そういうお年頃よねぇ」

3人が、うんうんと頷く。すると静香さんが急に真顔になって、私をジッと見つめてきた。

「失礼だけど、楓ちゃん。“育ち、若さ、美貌”。自分には何があると思う?」
「えっ…」

とっさに、何も言えなかった。



「まぁまぁ静香さん。お酒の席だし、ライトにいきましょ」

私が固まっているのを察した樹里さんが間に入ろうとしてくれたが、静香さんは続ける。

「違うの。怖がらせるためじゃなくて、楓ちゃんがもし本当に素敵な男性との結婚を望んでいるんだったら、具体的なアドバイスをしようかと思って。一応、人生の先輩だしね」
「はい!ぜひお願いします!」

すると、静香さんはとてもわかりやすく説明してくれた。

「まず、育ち。ご存知の通り、日系大企業の御子息は家柄を重視する人が多いから、これは大事。

合コンだのギャラ飲みだの、チープな場でしか育ちのいい男性と出会えない女性たちとは全くレベルが違うの。…それはわかるわよね?」

「はい」と、私は小さく頷く。最近のデートで、それは痛いほど感じていたからだ。

「続いて、若さ。女からすると腹立たしくて、そして残酷な話だけど…」

少し目を伏せながら、静香さんは続ける。

「跡継ぎ問題がある家では、結婚の条件として年齢を提示される人も多い。表立って男性陣は言わないけれど」

27歳の私は、今どれくらいの立場なのだろうか。若い女性が好まれることは知っていたけれど、リアルな話に胸がチクリと痛む。

「最後は、美貌。育ちが良くないけどお金持ちな男性と結婚したいなら、これが唯一の切符ね」

そう言われて、静香さんを改めて見つめてみる。身長は170cmくらいあるかもしれない。とんでもなく長くて細い手足に、1mmの狂いもないほど綺麗に整った顔。

まさに“圧倒的美貌”だった。

静香さんの指摘を受け、私は隣に座っている樹里さんを改めて見つめる。

学生時代は、海外のボーディングスクールに通っていたと聞いたことがある。きっと彼女自身の家柄もいいのだろう。

そして華子さんも、どちらかというとシックな感じの上品なお嬢様…という雰囲気が漏れている。

育ちがない私に残された道は、圧倒的美貌だけだ。

ただ残念ながら、私はそこまでのレベルには至っていない。そうなると、私は何で勝負すればいいのだろうか。絶望感で、目の前が暗くなる。

女性も結局、生まれながらに“未来”は決まっているのだ。

とんでもなくハイレベルな人と結婚できる女性は、もともと何かが備わっている。婚活というゲームが始まる前からしっかり武器を手に入れ、完璧な状態でスタンバイしているのだから。

一方で私たち一般人は何の装備も持たず、裸の状態でスタート地点に立たされる。

「そりゃ勝負にすらならないわ…」

白馬の王子様が選ぶのは、お姫様だけ。

27歳。そろそろ自分の本当の立ち位置と、現実を受け止めなければならないときなのかもと、改めて思い知らされた。

そのせいか、この後に飲んだ高いワインの味は全然わからなかった。


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