東京の鮨の頂点と言えるエリアは、やはり「銀座」だろう。

かの『すきやばし次郎』の流れを組んだ人気店で、右腕として店を支えてきた二番手の存在も、忘れてはならない。

この秋、“二号店”という新しい形で名店のDNAを受け継ぎ、さらなる進化を遂げようとする一軒が誕生した。その若き名店をご紹介しよう。



※コロナ禍の状況につき、来店の際には店舗へお問い合わせください。



東京が誇る鮨店の二号店という重責


場所は旧『青空』と聞けば、懐かしいと思われる大人もいるかもしれない。

2006年、銀座に『すきやばし次郎』の美学を受け継ぐ『青空』ができた。

2016年の移転後、5年間の沈黙を経て今年10月、その跡地に“二号店”としてオープンしたのが『こはる』だ。

任されたのは、開店当初から高橋さんの片腕として店を支えてきた栗田寿之さん、41歳。

「親方の元で15年間働かせて頂いて、独立を考えもしました。けれども、まだまだ学びたいことがあると思い、この店を引き受けることにしたんです」とは栗田さん。



旨みの凝縮したまぐろの握りは唯一無二!


『こはる』の握りは口に入れた瞬間、仄かな温かみが舌に伝わり、一瞬の柔らかさの後、ほろりと口中で解ける。

塩と酢がキリッと立ち、飯粒一粒一粒の存在感があるアグレッシブなシャリが醍醐味だ。

このシャリは、まぐろと小肌に焦点が当てられているが、まぐろでいえば、しっとりと繊細な身質に寄り添い、その濃密な旨味をしっかりと受け止め、まさに感服の一体感。



まぐろ仲卸しの「やま幸」から仕入れる天然本まぐろの赤身。

この日は、青森八戸産で129kgの腹がみ一番を使用。コースでは、赤身、中トロ、大トロの3貫が出る。



江戸前鮨には欠かせないコハダにファン多し!


コハダは、酢で締めているゆえ、ねた自体のパンチも強い。しかしこだわりのシャリと合わされば、締め酢に負けないインパクトを残すのだ。

この日は佐賀産のコハダ。尻尾の方を丸くカットし、握った時美しい流線型にする。

しっかりした締め加減が、シャープなシャリに実によく合う。


鮨店で揚げ物?!『こはる』のつまみはひと味違う!


『青空』では、仕込み、捨てシャリをせずに握る『すきやばし次郎』譲りの地紙形をした美しい流線型の握り、茶道のそれを思わせる無駄な動きのない流れるような所作等々、すべてを学んだ。

だが、栗田さんが刺激を受けたのは、鮨の技術的なことだけではない。鮨が旨いのは大前提。

そのうえで客が求める非日常的な空間をいかに具現化し、楽しませられるかを常に頭に置く。そこに『こはる』の凄みがあり、美味しさとの相乗効果が生まれるのだ。


肴7品、握り13貫で構成されるコース(35,000円)では、のどぐろや金目鯛といった当節流行の鮨だねは、握りには一切使わない。

握りは潔く「江戸前」を通すが、一方おつまみはバラエティ豊かだ。



鮨店でサクッと揚げ物をいただくって粋!


「メヒカリのフライ」は『こはる』オリジナル。

焼き物ではなく、鮨店のカウンターで“あえてのフライ”というのが、意表を突く楽しい趣向となっている。



『青空』ゆずりの定番おつまみも見逃せない!


『青空』でも、コースには必ず出される定番の「蒸し鮑」。

この日は常磐産。酒と水のみで3時間蒸し、その煮汁を葛でとろみをつけてかけている。心地よい弾力と柔らかさが秀逸だ。



鮨好きが好む美しい内装は、5年間、静かに眠っていた旧『青空』の地を復元したもの。

茶室思わせる落ち着いた佇まいはそのままに、壁や天井など一部を改装した。やや低めに設定した檜のカウンターも以前のままだ。

『青空』譲りの部分はそのままに、栗田さんの人柄に触れるような、どこか柔らかさを感じさせる空気感と握り。まさに鮨は人なり、である。

“青空イズム”を、栗田さんなりに表現していくという『こはる』は、これからますます、見どころたっぷりだ。