お金持ちは、モテる。ゆえに、クセが強いのもまた事実である。

そして、極上のお金持ちは世襲が多く、一般家庭では考えられないことが“常識”となっている。

“御曹司”と呼ばれる彼らは、結果として、普通では考えられない価値観を持っているのだ。

これは、お金持ちの子息たちの、知られざる恋愛の本音に迫ったストーリー。

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リミ(32)「偶然の再会に、嬉しくない人っている?」


「もしかして、リミさんですか…?」

先月の末日のこと。北参道のスターバックスの前で突然、リミは見覚えのある男に声をかけられた。

近所なのですっぴんのままだったが、先週アートメイクに行っていたので、ホッとする。

声をかけてきた男の顔をじっくり見るが、名前は思い出せなかった。

「えっと…」

「数年前に食事会でお会いしたことのある、俊夫です。偶然ですね…!」

「あ…あら、お久しぶりです!」

そう言われて、すぐに思い出した。彫りの深い顔立ちの俊夫が、タイプだと感じていたのだ。

伏し目気味にボソボソと話す俊夫との出会いは、数年前。今はなき『1967』で開催された、お食事会で出会った。

当時、結婚願望のなかった私。それは、年上の経営者の彼氏も同じ。

しかし、親友から、一度は結婚を考えた方がいいと強く言われ、渋々参加した会だったのだ。

ところが、外銀勤務の親友がそろえたメンバーは思ったより悪くなく、楽しい時間を過ごせた。そのメンバーの中に、俊夫がいたのだ。


俊夫のことを思い出すリミ。お食事会で彼は…

「リミさんって、どんなお仕事をされているのですか?」

お食事会で真っ先に話題を振ってくれた俊夫に、私が好感を持ったのは、顔だけではない。彼の経歴も含めてだ。

そして特に気になったのが、俊夫は生まれも育ちも東京ではなく地方、というところだ。

彼の実家が建つ場所は、地方と言っても新幹線の停まる駅の目の前だそうで、そこそこ栄えている。

写真を見せてもらうと、まるでそのビルだけ南青山にあるかのような、優れたデザインの8階建てのビルだった。

地方なんて…とばかにする人もいるかもしれないが、その話を聞いて大変立派だと私は思ったのだ。

「家業は、調剤薬局のチェーン店を103店舗営んでいます」

一代で事業を拡大した「成金の家のひとり息子」だと、彼は言った。

「だから、両親の期待に応えるために一生懸命でした。県内で一番偏差値の高い高校の生徒会長もやりました」

その言葉を聞いて、ハッとした。

私自身も、地方の出身だ。また、俊夫の家と規模こそ違うが、父は会社を営んでいる。

だからこそ、認められたい一心で努力してきた過去があり、この人とならわかり合えるかな…と、そのとき思ったのだ。

しかし、当時は彼氏との関係が良好だったため、それだけの理由で、俊夫にアプローチしようとまでは思えなかったのだった。



そのとき付き合っていた彼氏とは、食事会の後に別れてしまった。私は今、フリーだ。俊夫もフリーだろうか…左手の薬指に指輪は見当たらない。

「リミさん、今度ご飯でも食べに行きませんか…?」

数十秒の沈黙を先に破ったのは、俊夫だった。私たちはLINEを交換し、翌々週に私の自宅の近所で食事をすることになる。

偶然の再会が、私たちをいい感じにしてくれるかもしれない、と異性に対し、久しぶりに期待が持てたのだ。

そこからは毎日、俊夫との他愛もないLINEでの会話を続けていく。

『おつかれさま!リミさんは、今日もお仕事?』

育ちがきちんとしている男は、LINEのやりとりでも挨拶を欠かさない。そういうさりげないところも、私にとって好印象だったのだ。

俊夫との関係は順調に思えたが、北参道の『Botrus』にて2人で初めて食事をした後から、少しずつ様子が変わっていく。



LINEでは話が弾んだのに、直接会うと俊夫との会話がそこまで盛り上がらなかったのだ。

― あれ?緊張しているのかな…?

食事の場で私の方からたくさん話を振り、盛り上げたが俊夫はあまり話をしてくれなかった。

しかし、この食事が終わった後から、異変が起こる。私が1日LINEの返信をしないと、彼が追ってLINEをしてくるのだ。

『見て〜これ買った!』

このときは、ご丁寧に購入したルイ・ヴィトンの限定のスウェットの写真まで添えて。

『今日、仕込んでたM&Aの案件うまくいった!』

その次は、仕事の報告まで。

この人は違うかもしれない…と違和感を感じ始めたのは、この頃からだ。


俊夫に違和感を感じるリミ。その真相とは…?

LINEは自分のペースで返信したい。

私のこの考えはわがままなのだろうかと、しばらく悩む。そう思ってしまうのは、昨年、私は転職して外資メーカーの広報部に入り多忙な日々を過ごしていたからだ。

俊夫と出会った頃に勤めていた会社よりもかなり忙しく、オンタイムは仕事に集中したかった。

それなのに…私が俊夫のLINEに返信ができないと、既読もまだついていないのに彼がさらにLINEを送ってきて、追いつめてくる。

こんな状態では、これから良好な関係を築いていくことが難しいと、私は判断したのだ。

『ごめん。次会う約束の日、仕事が入っちゃった…。また連絡するね!』

いい歳の男女は、フェードアウトで終わらせるのがベストだろう。

残念だが、これがお互いにとってのベストなのだ。


俊夫(34)「言うことを聞いてくれる女が好きなのは、当然でしょ?」


リミさんのことは、食事会のときからずっと覚えていた。

力強い大きめな目と鷲鼻ぎみの鼻筋は、彼女の知的な雰囲気を一層引き立てていた。

それに、広告代理店で熱心に働いていると知り、真面目な人だなと感じたのだ。

結婚するなら、美人で自立した女性がいい。心底、リミさんに奥さんになってほしい…とあのとき思ったのだ。

それなのに、食事会の男側の幹事が余計な情報を耳に入れてきた。

「なあ、俊夫。リミちゃんの彼氏って、最近有名なイベント会社の社長らしいよ?」

これを聞いて、かなりショックを受けた。彼女を奪おうと思うほど、俺は自分に自信がない。

だから、リミさんのことは仕方がないけれど諦めようと思い、適当に彼女を作り時間が過ぎていったのだった。

ところが、状況が一変したのは、1ヶ月前のこと。

平日の昼、俺が久しぶりの休日を楽しんでいたときに、千駄ヶ谷のロンハーマンでリミさんを見かけたのだ。

店員さんに笑顔で話しかけるリミさんの横顔は、俺の心に一瞬で火をつけた。

このとき、リミさんはとてもラフな格好だったので、もしかしたら近くに住んでいるかもしれないと思ったのだ。

― こんな偶然は、もう2度とない…。

「悪いけど、好きな人ができたから別れて欲しい」

帰ってそのまま、同棲中の彼女に別れを告げた。

勝手すぎると言われたが、俺の父名義のマンションに勝手に転がり込んできたのは、彼女の方だ。だから、追い出すのは簡単だった。

すぐに彼女と正式に別れた俺は、ある計画を立てる。それは、リミさんと偶然この街で再会し、お付き合いに発展させることだ。

実行するには、リミさんの行動をリサーチすることが必要だった。

だから、リミさんを目撃した日と同じ時間に、ロンハーマンの店舗周辺を中心に散歩をしてみることにした。

すると、彼女を目撃することができたのだ。

― イケるかもしれない!

そう勢いづいた俺は、こっそりと店を出た彼女のあとをつけてみた。すると、明治通りに程近いマンションに、入っていったのだ。



後日、偶然を装うように、彼女の家の近くの地下鉄の入り口前で30分程待機し、リミさんと再会を果たしたのだ。

それなのに、初めて2人で食事に行ったときは、緊張のあまりうまく話すことができなかった。

恋愛経験は、それなりにあったはずなのに…と落ち込み、挽回しようと、せっせとLINEを送る。

この対応がマズかったらしく、リミさんと距離ができてしまったのだ。

購入品でセレブぶりをアピールし、仕事もそれなりにできることを証明しようとLINEを送り続けたのに…。

俺の奥さんになれば、楽なのに。どうして、俺を受け入れないのだろう。

もったいない女を逃してしまった…と、思うのだった。


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