「結婚するなら、ハイスペックな男性がいい」

そう考える婚活女子は多い。

だが、苦労してハイスペック男性と付き合えたとしても、それは決してゴールではない。

幸せな結婚をするためには、彼の本性と向き合わなければならないのだ。

これは交際3ヶ月目にして、ハイスペ彼氏がダメ男だと気づいた女たちの物語。

▶前回:「ご飯作って待ってるね!」尽してくれる子犬系年下彼氏。35歳女社長が見抜けなかった彼の本性とは?



Episode 10:美緒(31歳・看護師)の場合


― 嘘でしょ!?35歳まで、あと…4年しかないっ。

勤続11年目になる総合病院で、循環器科、内科を経て、今の整形外科に配属された私は、焦っていた。

なぜなら、この病院には、恐ろしいジンクスがあるからだ。

「35歳独身で看護主任になると、婚期を逃がす」と、いうのである。

20代の頃は、そんなのただの噂だろうと思っていた。

けれど実際、新人時代にお世話になった先輩の何人かは、35歳で看護主任になっても独身を貫き、今では看護師長まで務めている。

そして、みんな一様にこう言うのだった。

「30代前半に、婚活をしておけばよかった…」と。

私だって、仕事での昇進を目標のひとつにしている。だけど、結婚もしたいし、いつかは子どもだって欲しい。このまま諸先輩方の足跡を辿ることになったらと思うと、不安を感じずにはいられない。

だから私は、35歳になる前に絶対に結婚すると決めた。

そこで登録したのが、真剣度高めの婚活アプリだった。

さっそく誠という男性とマッチングし、とんとん拍子に交際に発展したのはよかった。

しかし私は結局、誠とたった3ヶ月で別れを選ぶことになる――その理由は、彼のSNSの使い方にまったく共感できなかったからだ。


結婚に焦る美緒が、マッチングアプリで出会った相手とは…?

マッチングアプリに登録するのは、これが2回目。

1回目は、29歳のときだった。

しかしそのときは、看護師というイメージが先行していい出会いに恵まれなかった。

マッチングしたはいいが、何度目かのメッセージのやり取りの後、男性たちは決まってこう言ったのだ。

“美緒さんとお付き合いする相手は、体調を崩しても安心ですね!”

唯一デートをした商社勤務の男性なんて、「謎の胃痛が続いてるんだよね」と1時間半も真剣に健康相談をしてきた。もちろん、交際には発展しなかった。

― 私が看護師だからって近づいてくる人は…ナシかな。

仕事以外でも、看護師であることを期待されるのが嫌だ。しかしこんなふうに選り好みをしていると、やり取りをする相手は激減。結局アプリを退会したのだった。

そんな過去の反省もふまえて、今回は職業を“医療関係”に設定した。

その結果、ほどなくして誠と出会ったのだ。



誠:はじめまして。僕も韓国ドラマにハマっていて、気が合いそうだなと思って“いいね”させていただきました。『トッケビ』って、見ました?

彼の職業欄には、製薬会社の営業をしていると書かれている。

― MRをしてる人なんだ!ていうか、『トッケビ』を見る男性って、珍しくない?

聞けば誠は、姉が韓国系航空会社のCAをしている影響で、ドラマを見るようになったという。共通の趣味があったおかげであっという間に打ち解け、すぐにデートが実現した。

恵比寿にある『韓国食堂 入ル 坂上ル』の本格的なサムゲタンを、汗をかきながら食べていると、緊張がほぐれて親しげな空気感になってくる。

今がタイミングだと、私は思い切って職業を打ちあけた。

「実は私、看護師なんです。言ってなくて、ごめんなさい」

「そうなんですか!じゃあ、不規則で体調管理とか大変でしょう?」

「深夜勤は、さすがにこたえるようになってきましたけど、仕事は楽しいです」

「じゃあ、今日のサムゲタンは滋養強壮にもいいし、正解でしたね!」

彼は、自分の相談を持ちかけるどころか、私の心配をしてくれたのだった。

― …あ、好きになりそう。

医師を相手にして医療用医薬品の話をすることも多い誠は、堂々として自信ありげ。はじめはタイプではないと思っていた強い目力も、急に魅力的に思えてきた。

それから2回デートをした後。「真剣に付き合いたい」という彼の告白で、交際が始まった。



高輪にある誠のマンションに招待されたのは、その半月後だった。

しかも、彼の手料理つき。「ゲストは何もしなくていいから」と言ってくれたので、食事を堪能していると…。

「ちょっと待って!美緒ちゃん、そのまま手を動かさないで」

「どうして?あ、写真?」

誠は、スマホのカメラで料理の写真を何枚か撮って満足げな表情を浮かべたのだった。

「そういえば、美緒ちゃんってインスタやってる?」

「アカウントはあるけど。非公開にしてるし、ほとんど見る専門かなー。誰かに見てもらうような生活、してないしね」

「僕、フォローしてもいい?」

「うん、でも本当に面白くないよ」

こんなふうに優しい彼氏ができたとのんきな気持ちでいられたのも、つかの間だった。

ある日、出勤後の更衣室で、突然同僚から聞かれたのだ。

「ねえ、美緒って彼氏できたの?」


どうして、彼氏の存在がバレた…?

「彼氏って、どうして…?」

「えー?どうしてって、自分のインスタ見てないの?」

「見てないけど…何、怖いんだけど?」

「何それ、のろけじゃないよね?」と彼女が見せてきたスマホの画面には、彼が私のことをタグ付けした写真が投稿されていた。

― これって、この間の料理の写真?

誠が作った手料理に、私の手元が写っている写真。投稿には、こう書かれている。

“仕事が忙しい彼女のために、僕が夕食を作りました!メニューは、煮込みハンバーグと…”

「ほら、見てよ。この前の食事会の写真、美緒のこともタグ付けしようと思ってたら、見つけちゃったの!もう、何で言ってくれないのー?」

「ああ、うん、ごめん」

その日のうちに、ナースステーション内に噂が広まる。

― …こういうのって、タグ付けするならひとこと言ってほしいんだけど!

いい気がしなかった私は、夜勤の休憩時間を使って誠に電話をした。

「もしもし、誠くん?インスタなんだけど、私のことタグ付けするなら、先に言ってほしかったよ」

「わかった!じゃあ、今度は先に言うね」

…今思えば、変に気まずくなるのが嫌で、優しめの口調で言ったのがいけなかったのかもしれない。



交際開始から、3ヶ月がたつころ。

誠は、頻繁に私のことをInstagramに投稿するようになっていた。

誠:一緒に見た韓国ドラマのこと、インスタに載せるね!

彼からそんなLINEが送られてきた数分後には、もうInstagramに投稿があがっている。

“2人とも大の韓国ドラマ好きだから、サブスクの登録数が増えまくり!でも、彼女が喜んでくれるならいいか”

また別の日には、こんな投稿もあった。

“彼女のために予約したレストラン!紀州備長炭を使った炉窯焼きステーキは絶品だった。これで明日からの夜勤も頑張ってくれるといいな”

― はあ、こういうのはちょっと…。

誠は、デートの内容や場所を頻繁にInstagramに投稿するのだけれど、そのどれもが“してあげた感”が強めでモヤッとした気持ちになるのだ。

同僚たちも、私がタグ付けされた投稿を面白がって見ている。そのイラつきもあったのかもしれない。

「誠くん、職場の同僚も見てるから、インスタのタグ付け…ちょっと控えてほしいな。それか、タグ付けしないで投稿してもらいたいかも」

「え?でも、美緒ちゃんの顔とか載せてるわけじゃないよね?それでもダメって、何かやましいことでもあるの?」

誠は、自分に非はないとでも言いたげな、とげとげしい口調でまくしたててきた。私もつい、ため息交じりになる。

「はぁ…そうじゃないよ!私、もともと自分の生活とか、人に知られるのが好きじゃないの。だからインスタも非公開にしてるし、投稿もしてないでしょ?最初に言ったよね?」

「それなら知ってる人にしか見られないんだし、そもそもタグ付けなんだし、よくない?そんなこと言われると、美緒ちゃんを信用できなくなるよ」

その“知っている人”こそ、身近な存在だったりするわけだから、余計にプライベートなことは晒したくないのだ。

「…そこまで言わなくてもいいんじゃない?私はただ、タグ付けとか、デートのこととかを書かれるのが…」
「わかった、もういい。僕は、美緒ちゃんに喜んでもらおうと思って、いろいろしてきたのに…迷惑だったんだね」

口論は平行線のまま、結局別れ話になってしまった。

次の日。

誠のInstagramを開くと、私に関する投稿が削除されていた。

その代わりに、青空の写真とひとこと。

“ほんの些細なことでも、壊れるときは壊れるんだなあ…”

― もし、SNSがなかったら、こんなふうになっていなかったのかな。ちょっとしたことで、恋愛がこじれやすくなった気がする。

ふとこう思ったけれど、SNSも立派なコミュニティーだ。使い方次第なのだろう。

ただ、次に出会う相手には、SNSの存在は隠しておこうと思うのだった。


▶前回:「ご飯作って待ってるね!」尽してくれる子犬系年下彼氏。35歳女社長が見抜けなかった彼の本性とは?

▶1話目はこちら:「今どのくらい貯金してる?」彼氏の本性が現れた交際3ヶ月目の出来事

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