「可愛いのに、どうして結婚できないんだろうね?」

そんなふうにささやかれる女性が、東京の婚活市場にはあふれている。

彼女たちは若さにおごらず、日々ダイエットや美容に勤しみ、もちろん仕事にも手を抜かない。

男性からのウケはいいはずなのに、なぜか結婚にはたどりつかないのだ。

でも男性が最終的に“NG”を出すのには、必ず理由があるはず―。その理由を探っていこう。

▶前回:同じバスタオルを何度も使うズボラ女。「エコだから洗濯は週1回」と言う彼女との結婚に怯える男は…



Vol.12 保奈美、27歳。お願い王子様。越谷から脱出させて。


「保奈美、着いたよ」

彼氏の雄一の声で目が覚める。

ドライブデートの帰り道。私は助手席でウトウトとしてしまい、そのまま寝てしまったようだ。

「あ、ごめん。どのくらい寝てた?」

私はリクライニングを元に戻しながら、髪を整える。

「40分くらい?よだれ出して寝てたよ…なんてな」
「もう〜、やめてよ」

私たちはじゃれあいながら黒のカイエンから降り、駐車係に預けた。

ここ、雄一が住んでいる青山一丁目のタワーレジデンスには、バレーサービスがある。

このサービスがあるマンションは、都内でも多くないらしい。

雄一は車が好きでよく乗るため、駐車場を優先して物件を選んだそうだ。

「21時か…遅くなっちゃったから、夕飯はUberEatsにする?」

部屋に向かう途中、雄一がしてきた提案に私は笑顔で「うん」と答えた。

完全に同棲を始めたわけではないが、私は自分の化粧品や部屋着を持ち込み、週の半分はここに寝泊まりしている。

雄一は33歳。車が好きで、趣味で所有しているカイエンやアストンマーチン、マクラーレンの他に、普段使いのSUVも2台ある。

車の金額を聞いたことはないが、ザっと調べると1台あたり2,000万円前後はするそうだ。

そして、レジャーにピッタリのSUVが2台もあるということは…。きっと将来、家族が増えることを見越していても、おかしくはない。


週末、保奈美は雄一との熱海旅行を計画するが…

雄一とは、コロナ前に西麻布で開かれた、共通の知人の誕生日会で出会った。

イケメンで背も高くオシャレ。さらに不動産会社を経営している彼の周りには、ライバルがたくさんいて、なかなか厳しい戦いだった。

でも、私は必死に戦った。

なぜなら私は埼玉の実家住まいで、どうしてもそこから脱出したかったから。

普通の会社員の私が勝ち組になるためには、都心に住む王子様をゲットすることが絶対条件なのだ。



私は雄一の横の席を最後までキープし、ボディータッチしたり、褒めたり、常にニコニコしていた。

なんとも正攻法すぎるやり方だったが、その食事会の1ヶ月後には無事に彼女になれたのだ。

だから、絶対に彼女の座から降りたくないし、必ず結婚まで駒を進めたい。

彼と結婚できれば、今後越谷を出るとしても都心の狭いワンルームに一人暮らしなどしなくてもいいのだから。

そんなことを考えていたら、雄一がスマホを見ながら話しかけてきた。

「保奈美、来週の土日に新幹線で熱海に行かない?」
「あれ、ゴルフなくなったんだ!新幹線がいいなんて、珍しいね」

私は快く了承し、ふたりで宿の空室を検索した。しかし、熱海の高級旅館はどこも満室。

「直前だから、しょうがないよ。箱根にしよ?車もあるし、車だったら箱根も行きやすいし」

こう私が提案したが、雄一はよほど熱海に行きたかったのか、私の提案に納得がいっていない様子だった。



そして、当日―。

「ん〜!いい天気!よかったね、晴れて」

結局私たちは、車で箱根に行くことになった。

私は、彼の愛車レンジローバー・SUVの助手席に乗って、Bluetoothが自分のスマホに接続されるのを確認。

そして、用意していたお気に入りの洋楽のプレイリストを再生しようとしたのだが、その手を止めて雄一が言う。

「保奈美、今日は俺の好きなやつかけていい?」
「うん。いいけど…」

雄一は、2000年代の邦楽を流し、歌いながら運転を始めた。

― いつもは私の好きな曲をかけさせてくれるのに…。

私と雄一は、若干世代が違う。正直言って、雄一が選ぶ曲はほとんど知らないしオシャレではない。

センスの無いBGMに飽き飽きしてしまい、10分くらい走ったところで、私は洋楽に戻した。

「おいおい!消すなよ〜」

雄一が笑いながら嫌がったが、私は軽く無視した。

「ねぇ、コンビニ寄ろうよ。飲み物買いたい」
「おう。でも酒は我慢してね」

雄一はそう言ったが、「保奈美が飲みたいなら飲んでいい」といつも言ってくれる。だから、今日も本心じゃないだろう。

私は、雄一のアイスラテと自分の缶ビール、スナック菓子を買い、車に戻った。

「保奈美、ちゃっかりビール買ってんじゃん。宿で一緒に飲もうよ〜」
「もちろん部屋でも飲むよ、でも今も飲みたいんだもん」

私は、プシュッと缶ビールの栓を開けながら答えた。

雄一は優しいから、だいたいのことを許してくれる。それに女は多少ワガママな方が可愛いだろう。

しかし、今日は雄一の機嫌があまりよくない気がした。

― まぁ、気のせいだよね。



そして、車を走らせること2時間。ようやく箱根に着いた。

「保奈美、ちょっとナビがバグってるみたい。Googleマップで宿の場所見てくれない?もう少しだと思うんだけど…」

雄一は、道に迷ってしまったようだ。

しかし、私は地図が大の苦手。だから、私がマップを見たら余計に時間がかかってしまうだろう。

「え、一度車を止めようよ。雄一が見た方が早いって」
「…了解」

雄一は、少し乱暴に車を停車させ、スマホのマップで場所を確認した。

「保奈美は本当にお姫様だね」
「ん?そう?ありがとう。雄一が甘やかしてくれるおかげだよ」

それから20分後、ようやく宿に到着した。

そして、それぞれ温泉に入りに行き、食事後には部屋の露天風呂も堪能した。

「雄一のゴルフがキャンセルになったおかげで、最高な土日だよ。本当にありがとうね♡」

私は日本酒で桃色に染まっているであろう頬で笑いながら、雄一に言った。

かっこよくて、経済力があって、車も数台所有していて、さらに優しい。もしかしたら、私が思っているよりも早く埼玉を脱出できるかもしれない。

そんなふうに思っていたのに、雄一の顔は曇ったままだ。

「どうしたの?お腹でも痛い?」
「保奈美、別れよう」

雄一が発した予想外すぎる一言に、私は目の前が真っ暗になった。


保奈美の“ある態度”が無理になった 。雄一がとった行動とは?

保奈美との結婚を考えられなかった理由〜雄一の場合〜


保奈美と出会ったのは、高校時代の先輩の誕生日会だ。

先輩は、歯科医でありながら飲食店を複数経営し、奥さんは元タカラジェンヌ。女の子と食事には行くものの、結局は奥さん一筋。

当時彼女と別れたばかりの俺は、寂しくて、早く次の恋がしたかった。そして、先輩のように幸せな家庭を持つことが目標だった。



「その時計、素敵ですね♡」

プライドの高い港区女子たちが男性から話しかけられるのを待っているなか、保奈美はそう言って、わかりやすくアプローチしてくれた。

それが素直で可愛くて、付き合うことにしたのだ。

保奈美の出身は越谷。だから東京での生活に憧れがあることはすぐにわかった。

『早く結婚して実家を出たい』

そう顔に書いてあるようなタイプだ。

少し前の俺ならば、距離を置きたくなってしまうような女性だが、野望があることは悪いことではない。

俺が住んでいるマンションや車にも素直に驚いて喜んでくれたし、それが気持ちよかった。

でも、それも慣れてくると、まるで自分の所有物かのように振る舞うようになった。

そして、一番気になったのは、ドライブ中の行動だ。

帰り道は平気で寝るし、助手席でお酒も飲む。音楽は自分好みのものを問答無用にかけるし、地図は見てくれない。

時々なら許せるが、これが毎回だと悲しいし腹が立つ。

「あのさ。保奈美とは車に乗りたくないんだよ…」
「は?なんで。どういうことなの」

俺は車が大好きだし、結婚したら毎日乗ることになるだろう。

保奈美は免許があるもののペーパードライバーだ。そもそも俺の大切な車を運転させる気もないが…。

小さな問題かもしれないが、ドライバーを気遣えない女性とはやっていけない。



「もういい。くだらない。私、もう1回お風呂入ってくる」

保奈美は、別れ話が本気だと思っていないのだろう。食事の途中で席を外してしまった。

このまま、隣で寝るのは無理だ。

俺は食事を済ませてから部屋に戻り、都内までのタクシー代を置いて、帰ることにした。

愛車に乗って好きな曲をかけて、歌って、のびのびと運転したい。今はそれしか考えられない。

― 今までありがとう。東京に住まわせてくれる、ほかの男を探せよ。

そう心の中でつぶやき、レンジローバーのエンジンをかけたのだった。


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可愛げのない女は損をする!?