「彼って…私のこと、どう思っているんだろう」

連絡は取り合うし、ときにはデートだってする。

自分が、相手にとっての特別な存在だと感じることさえあるのに、“付き合おう”のひと言が出てこないのはどうして?

これは、片想い中の女性にとっては、少し残酷な物語。

イマイチ煮え切らない男性の実態を、暴いていこう。

▶前回:既読スルーばかりのカレ。「熱がでた」と送ってみると、予想外の反応で…



頑張っているのは、私だけ…彼が誘ってきてくれないのはなぜ?(優里亜・28歳の場合)


優里亜:お疲れさま!仕事の関係で行っておきたいお店があるんだけど、金曜日の夜って忙しいかな?
律:金曜日、空いてるよ。

律からの返事に、ホッと胸をなでおろす。

― ごめん、“仕事の関係”っていうのは嘘。でも、ほかに誘う理由が見つからなくて…。

私が切羽詰まってLINEを送った相手は、3つ年下の会社の後輩・律だ。

彼と親しくなったのは、ほんの2ヶ月前。それから短期間のうちに4回も2人きりで食事をしている。

けれど、実をいうと、律から誘われたことは1度もない。

この5回目のデートもそう。いつだって、誘うのは私から。

“会うと楽しそうなのに、自分からは一向に誘ってこない”、彼はずっとこのスタンスなのだ。

― もしかして、自分から誘うのが苦手?

こんなふうに、イマイチつかみ切れない彼の言動をポジティブに転換しようとしたこともある。だけど、それにしたって、自分だけが頑張っているように感じることに変わりはない。

― 彼って、私のことどう思ってるんだろう…。

ここ最近の私は、律のことでずっとモヤモヤしている。


2ヶ月前の朝。

「オーツミルクラテを!」

いつものように、オフィスから少し離れた場所にあるカフェに立ち寄って、ドリンクを待っているとき。

「オーツミルクラテをお願いします」

レジのほうから自分と同じオーダーをする声が聞こえて、パッと視線を向けると、律がいた。

海外事業部に所属する帰国子女の彼は、仕事ができて上司からの信頼も厚い。そのうえ、カッコ可愛い顔立ち。性格は親しみやすいらしく、よく他部署の女性たちのうわさの的になっている。

それで私も、律のことを一方的に知っていたのだ。

― うん、確かに彼ってステキ。年下だけど、ちょっといい感じ。

「あの、秘書課の方ですよね?」

つい、ジッと見つめてしまった私の視線に気づいたのか、話しかけてきたのは彼のほうだった。律も私のことを知っていたことに、少し驚く。

「あ、はい!えっと、海外事業部の…」
「そうです!ここ、よく来るんですか?僕、知り合いに教えてもらって、初めてきたんですけど、いいですね。落ち着いていて」

こうして、翌日から、ほぼ毎朝カフェで顔を合わせるようになった私たちは、数日後にLINEを交換。顔つきがクールで、話しかけにくいと言われる私にも気さくに接してくれる律に、少しずつ惹かれていったのだった。



律と、LINEでやり取りを始めて2週間がたつころ。

彼のことを、恋愛対象として強く意識するようになる出来事があった。

連絡がマメではない彼との距離を縮めるために、食事に誘ったのがきっかけだ。

「ここ、秘書課の先輩に教えてもらったの!日本酒の種類が豊富って聞いて、一度来てみたくて」
「僕も、日本酒好きなんだ。本当にいいお店だね!あ、ちょっとごめん!」

そう言って、律は妙なタイミングで席を立った。

それを、訝しみながら目で追う。すると彼は、近くの席に座っていた外国人客のところへ行き、 ひとしきり盛り上がってから戻ってきたのだ。

「メニューがわからなかったんだって!だから、さっき店員さんに聞いたおすすめを教えてきた」
「そうだったんだ!あの人たち、すごく嬉しそう。すごいね、律くん」

困っている人に、ためらいもせずに手を貸すことができるなんて…。この一件で、律の株は急上昇。そのあとに聞かせてくれた、海外生活の話も刺激的だった。

― こんなに楽しい時間、いつぶりだろう。

うっとりとした気分で帰宅した私は、すぐに彼にお礼のLINEを送った。

優里亜:今日はありがとう!今度はイタリアンもいいよね!
律:こちらこそ、楽しかったよ!

…きっと私たちは、ここから順調にデートを重ねていくことになるだろう。そう期待して、律からの次の誘いを待つことにしたのだった。



ところが、10日たってもその日はやってこなかった。

― うーん…。私のが年上だし、こういうのって、もっと積極的にいってもいいのかな?

意を決して、2回目のデート、3回目のデートはストレートに律を誘った。4回目、5回目のデートは、「常務の会食の下見に…」とか「仕事の関係で…」とか、理由をこじつけた。

しかし、そのあとも彼から誘われることはなかった。

― これって、わたしばっかり頑張ってない?誘えば会ってくれるし、楽しかったって言ってくれるのに…何か違和感…。

律の考えがわからず、モヤモヤしながら過ごしていると、休憩時間に先輩がにやけ顔で近づいてくるのが見えた。

「ねぇ、優里亜!海外事業部のあのイケメン、最近いい感じの相手がいるらしいよ!昨日、デート現場を見た人がいるんだって」


「えっ?昨日ですか…?」
「うん、ほら、私が優里亜に教えた日本食のレストランあるでしょ?そこで、食事してたみたい」

― 昨日なら…相手は私ではない…。

「へ、へぇー。どんな人と一緒だったんですか?」
「それが、今年入社した広報部のあの可愛い子と一緒だったんだって!」

自分から聞いておいて、頭を2回ガンッと殴られたような衝撃を受けた。



私と行ったレストランで、別の女性と食事だなんてあんまりだ。しかも、その相手も同じ会社の社員だというのだから、気分が悪い。

― そういうこと…。ほかにも相手がいたんだ…はぁ。

大きなため息をついて、気持ちを落ち着かせようとすると、先輩の次の言葉にとどめを刺された。

「何かね、彼のほうが猛アプローチしてるみたいなの!そういえば、海外事業部にいる同期が、ちょっと前からよく恋愛相談されるようになったって言ってたわ」
「…それを知ったら、律ガールズたちは悲しむ…でしょうね」

― 私もその1人だけど…。

翌日。

律と広報部の彼女が、付き合い始めたのではないかといううわさが、そこかしこに広まった。

なんでも、2日連続でデートの目撃情報があがったらしい。しかも、手をつないで歩いていたそうだ。

やはり、律のほうから積極的にアプローチしているのか。

律の本命への行動と、私に対する行動とのあからさまな違いを思うと、自己肯定感がだだ下がり。

みじめな気持ちに苛まれたままでいると、タイミング悪くエレベーターホールで彼と2人きりになってしまった。

「あ、お疲れさまです!」

律のこれまでと何ら変わりないさわやかさが、無神経に思えた。

だからつい、声がとげとげしくなってしまう。

「…お疲れさまです」

まだ、彼の顔を直視する気持ちにはなれず、踵を返す。去り際、律が「あれっ…?」とつぶやいたようだったが、聞こえないふりをして去るのがやっとだった。



本命が圧倒的宝物、それ以外は…(律・25歳の場合)


律:今日は付き合ってくれてありがとう!今度は、お肉を食べに行こう。
加奈:こちらこそ、ごちそうさまでした!お肉!ぜひ!!
律:そしたら、来週は?いつが空いてる?

僕が今、アプローチしているのは同じ会社の広報部で働く加奈だ。

6月に受けた社内報の取材で知り合い、それから頻繁にLINEをしたり、食事に行ったりしている。

まだ入社して間もない彼女が、先輩の仕事の仕方を必死にメモしている一生懸命な姿に惹かれた…というのも本当だけれど、正直に言うと少しギャルっぽさが残る見た目がとにかくタイプなのだ。

だから、何とかして距離を縮めようと努力している。

加奈が教えてくれた、会社から少し離れたところにあるカフェに連日通い詰めたのも、もしかしたら彼女と会えるかもしれないと思ったからだ。

だが、会うことができたのは、美人で有名な秘書課の優里亜だった。

「オーツミルクラテをお待ちのお客様―」

― あ、僕と一緒だ!

これには親近感を覚えて、つい声をかけてしまった。

彼女は少し驚いた様子だったが、クールビューティーな見た目に反して、話してみると意外と親しみやすい。

そんな彼女から誘われたら、男ならみんな嬉しいだろう。もちろん僕もそうだったから、何度か2人で食事に行くこともあった。

だが、“それはそれ”。

誘われた日に、たまたま予定がなかったから、ちょっといいなと思う優里亜と会っただけで、本命が加奈であることに変わりはない。加奈とだって、まだ付き合っているわけではないのだから、誰かにとがめられることもないはずだ。

それに、これは、男女逆のパターンでもあり得ることだろう。女性だって、本命とそこまでではない相手への接し方は違うのだから。

しかも僕は、優里亜に手を出したわけでも、好意を匂わせたわけでもない。

仮に、少しキープしてしまおう的な下心があったとしても、ほかの女性とのうわさが広まったくらいで「傷つけられた」というような態度を取られるのは解せない。

― だって、こういうのって男女間ではよくあることでしょ?

エレベーターホールで優里亜と会ったときの、あの子どもっぽさを思い出し、僕は、少しがっかりした気分になったのだった。


▶前回:3週間に1回連絡してくる、エリート編集者の彼。思い切って「ある質問」をぶつけてみたら…

▶1話目はこちら:既読スルーばかりのカレ。「熱がでた」と送ってみると、予想外の反応で…

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