男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

—果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「高級店に高級外車。完璧なデートなのに振られた理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:23時の首都高。ドライブデート中に女が放った、「もう少しゆっくりしたい…」の真意とは?



「奈帆ちゃん、今夜うちに来ない?」

金曜22時半。お店を出てタクシーを探そうと大通りを見つめていたタイミングで、私は咄嗟にこう思った。

― は?行かないし。

でももちろん、こんなダイレクトに本人には言わない。私は大人だし、社会的な常識もある。だから相手が傷つかないように、優しい嘘を言う。

「今日は帰ろうかな。明日朝が早いから」
「え?そうなの?」

明日、朝は早くない。けれどもこの場から立ち去るために私はさっさとタクシーを拾い、家までひとりで帰宅した。

― もう二度とないわ。彼とは。

そう思いながら…。


A1:いちいち金額を言うのがちょっと…


真也に出会ったのは、友人の紹介だった。別に格段のイケメンではないけれど、高身長で爽やかだなという印象だった。

そして真也は初対面の時から私を気に入ってくれたようで、グイグイ来た。

「奈帆ちゃんって、食事だと何が好き?」
「なんだろう。何でも好きだけど、中華とかイタリアンとかかな…」
「中華ね。行きつけの超良い店があるんだけど、今度一緒に行かない?高いけどかなり美味しいから」

そして真也は本当にお店を予約してくれていたようで、出会ってから2週間後。東麻布にある、老舗の超名店でデートをすることになった。

しかし、ここで私はヤラカシてしまった。



「わ〜嬉しい!久しぶりに来るな」

お店に入るなり、そう口を滑らせてしまったのだ。初デートでこの言葉は禁句だろう。でも真也は意外に冷静だった。

「さすが、奈帆ちゃん来たことあったんだ」
「あ…。ごめん、男性の前ではこういうこと言わないほうがいいよね」
「ううん、大丈夫」

― あれ?この人、心が広くて優しいんだ。

そう思った。でもデートが進むにつれて、何度も「ん?」と戸惑い始めた。

「真也くんは、よく来るの?」
「うん、そうだね。こういう綺麗な女性との食事の時とか、よく使うかな」

― …それ、今ここで言う必要ある?

今日は初デート。それなのに、わざわざ他の女性とよく使うとか具体的なことを言う必要があるのだろうか。

― でも私もさっき「久しぶり」とか言っちゃったからな…。お互いさまだよね。

そう思って、とりあえず聞き流すふりをする。

「そうなんだ。なんかすごいね」
「そう?(笑)美味しい食事って、最高じゃない?あとここ雰囲気も好きで。サービスも抜群だし」
「このお店を普段使いしているのがすごいわ…」

この時は純粋にすごいなと思っていた。

でもここから真也の本性が見えてきた。



「ちなみに、真也くんは今どこに住んでいるの?」
「俺?僕は今『パークコート赤坂檜町 ザ タワー』だよ。知ってる?ミッドタウン裏のタワマン」

― その固有名詞、いる?

私は「どこのエリアに住んでいるの?」という意図で聞いたつもりだった。しかし真也はわざわざマンション名まで教えてくれた。それだけではない。

「あ〜あそこね!すごく良いマンションだよね…」
「一応ね。しかも俺ミッドタウン側だから、景色とか綺麗だよ。今度見に来る?25階だから」

マンション名に加えて、居住階数まで教えてくれた真也。

― きっと、それが自慢なんだろうな。

そう察したので、きっと真也が求めているのであろう言葉をちゃんと投げかけてみる。

「すごいね!今度行ってみたい…♡」

するととても嬉しそうな顔をしている真也。何だか可愛くなってきて、私は次のデートの誘いにも応じることにした。

「良ければ、次はドライブデートしない?紅葉の季節は終わっちゃったかもだけど、走るの気持ち良いから」
「うん、ぜひ!楽しそう」

けれども次のデートで、私は心底“ないな”と思ってしまった。


A2:お金持ち自慢の言動が全部ダサイ


こうして、二度目はドライブデートになった。家の下まで迎えに来てくれた真也の車はとても高そうで、しかも内装までこだわっているのがよくわかった。

「これ、真也くんの車?すっごくカッコいいね」

車に乗り込み、素直に感想を伝えてみる。すると、ただ「ありがとう」とか「気に入っているんだよね」とかでいいのに、真也はまた、わざわざ値段を教えてきた。

「まあね。一応2,000万くらいするから」

真也がドヤ顔をしながら金持ち自慢をするたびに、私はかなり引いていた。でもそんな気持ちに気がつかない真也は、自分の高級車に乗れたことに私が感動して、緊張していると勘違いをしたらしい。

「そんな緊張しなくて大丈夫だよ」



― ダサいを通り越して、若干イタイかも。

言わなくてもお金持ちで良い暮らしをしていることくらいわかる。逆に、言えば言うほどチープに見えてきてしまうのに…。

しかも真也が残念なのは、それだけではなかった。

「ありがとう…って、すごいこの車スピード出るんだね」
「あぁ、ごめん。急発進して。まぁ馬力があるから」

信じられないくらい運転が荒くて、下手だったのだ。しかも運転の荒さまで高い車のおかげかのような発言に、私は思わず失笑してしまった。



そしてこのデートで、真也がリッチなのに彼女がいない理由がよくわかってしまった。

「このシートも自分でこだわったの?」
「そうだよ。カッコイイでしょ」
「うん、初めて見た」
「あんまりこういう車、乗ったことない?」

なぜかずっと上目線の真也。私が他でこんな経験をしていないかのような話し方に、だんだん腹も立ってきた。

「そうだね〜。最近周りで車持っている人が減ってきたからな。そもそも私、車持っていないし」
「いいでしょ?たまには」

― この人、井の中の蛙だな。

この程度の車なんて港区でゴロゴロ走っている。そして私の知っているとんでもないお金持ちたちは運転手さんがいるので、自分で運転していない人も多い。

正直微妙だなと思っていた今回のデート。でも彼なりに一生懸命プランを立てていてくれたようなので、私は極力笑顔を保った。

「横浜ってあまり来ないけど、良いところだね。真也くん、連れてきてくれてありがとう」
「いえいえ。奈帆ちゃんが喜んでくれるなら」
「ご飯だけ食べに横浜へドライブデートって、贅沢だよね」

ただ帰りも、また真也の下手な運転に付き合わないのかと思うとだいぶ気が重い。

そうかと言って、私が運転を代わるわけにもいかないので本人のプライドが傷つかない程度に諭してみる。

「今日も楽しかった〜!真也くんありがとう」
「こちらこそ。楽しめた?とりあえず、次は『鮓 村瀬』ね」
「うん。ありがとう!そしてせっかくだから、もう少しゆっくり帰らない?そんな早く走らせたら、あっという間にお家に着いちゃうし…」

― なんかセンスがないんだよなぁ。

もうこの時点で完全にナシだったけれど、真也が提案してくれた次のお店が魅力的だったので、私はもう一度だけご飯に行くことにした。

もちろん、その場でも真也の自慢が止まらない。

どんなにお金を持っていても、ダサい男は論外だ。そう思い、私はキッパリと切ることにした。


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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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女が興ざめした男の一言