男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

—果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「マッチングアプリで出会った二人が先に進めなかった理由」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:「ちゃんと帰れる?」デート終わりの女性をタクシーに乗せるのはモテ男の常識。が、予想外の結末に…



目の前に座っている聖也をじっと観察してみる。今日で、彼と会うのは四度目だ。

顔は格段にカッコイイというわけではないけれど、別に悪くはない。

「聖也くんって、本当にいい人だよね」

紳士的だし、スマートだ。

「亜美ちゃんだから、いい人ぶっているだけだよ」
「そうなの?」

こんな会話を繰り返し、私たちは結局1時間くらいお茶をしてすぐに解散した。

― うーん。この次はないかな。

彼と別れたあと、私は賑わう恵比寿の街へ飲みに繰り出す。友人たちから近くで飲んでいるとLINEが来たのだ。


A1:初デートでは、いいなと思っていた。


アプリ上で最初に“いいね”をくれたのは聖也だった。

条件も見た目も悪くない。ただ彼のプロフィールの文章は少し長く、“タバコを吸わなくて仕事に理解のある女性”などと条件が多い。だから「もしかしたら面倒な人かな…」という思いも抱いた。

けれども悪い人ではなさそうだし、まずは会ってみないとわからない。数回やり取りした後、私たちは「グランド ハイアット 東京」の『オーク ドア』で待ち合わせをした。



「はじめまして、聖也です」
「はじめまして。亜美です」

写真より、ずっと柔らかい雰囲気だった聖也。

― パッと見ただけで判断しなくて良かった。

心底そう思った。しかも聖也とは最初から気が合い、初対面なのに盛り上がったのだ。

「お茶にしますか?それとも…」
「せっかくだし、一杯飲んじゃおうかな。聖也さんはどうされますか?」
「いいですね!僕も付き合います」

初対面で飲むのはどうかとも思ったけれど、せっかくの『オーク ドア』だし飲まないほうが不自然だと思う。それは聖也も同じように感じていたらしく、私たちは笑顔でグラスを交わす。

そしてここから、話は盛り上がりそのままご飯まで行く流れになった。

「亜美さん、この後お忙しいですか?良ければ食事しませんか?」
「いいですね。行きましょう!」

マッチングアプリで出会った相手と進展するかどうかは、第一印象がかなり大きく影響すると思う。

実際に会ってみて直感でいいなと思うか、もしくは自然と会話が盛り上がるか…。

聖也の場合、すんなりと食事へ行くことになるくらい会話がスムーズでしっくりきた。



そして食事が始まり、気がつけばワインボトルが半分くらい空いた頃。聖也が急に本音を話し始めた。

「僕、実は何人かに会ってみたんですけど、ここまで最初からすんなり行く人は初めてです。亜美さんって可愛いのに、話しやすくていいですよね」

― これまで何人くらいに会ったんだろう…?

そんな疑問が不意に頭をよぎる。でもマッチングアプリで何人かに会うのは自然な流れだし、むしろそれが良い点でもある。

でも私は、実際に会うのは聖也が2人目だった。

「嬉しいです。私も、聖也さんがこんなにも話しやすい人だなんて想像していなかったです。プロフィール的に、もう少し堅い感じの方なのかなと思っていました」
「プロフィール、堅いですか?(笑)」
「すごくいいと思います!でもNG事項も多かったので、もっと神経質な人なのかなと」
「そんなことないですよ!タバコとかが苦手なだけで。あと何を書いていましたっけ?」
「仕事への理解がある方がいいとか…?詳しくは忘れちゃいましたけど」

本当はしっかりと覚えていた。けれども聖也のプロフィールにダメ出しをしたところで私にはメリットは何もない。

「でもそれ、大事なので(笑)」
「そうですよね」

17時から会っていた私たちだけれど、もう22時前だった。そして解散する際に、きちんと聖也は誘ってくれた。

「良ければ、またご飯行きませんか?」
「もちろんです!ぜひ」

― すごい素敵な人に出会えて良かった…!

そう思い、私は心を踊らせながら帰宅した。ただここから予想外のことが起こる。


A2:間が開きすぎた。スピード感も大事。


私としては、初デートがあんなに盛り上がったので、すぐに次のデートが決まると思っていた。

でも「ご飯へ行きませんか」と言ったきり、彼からの連絡は来ない。私から連絡しても返信は遅かった。

― ん…?何これ、遅くない?

彼の行動に、違和感を覚える。

結局聖也と会えたのは、1ヶ月後。彼なりの誠意なのか、華やかな料理が話題の『クレアバックス』を予約してくれていた。



お店選びのセンスは良いし、実際に会うと返信が遅いことなんて忘れてしまうくらいいい人だ。

「すみません、出張とかが続いていてなかなか時間が取れなくて…」

ちゃんと謝ってくれるし、誠実さも感じる。

「全然大丈夫です。お忙しいのは重々承知なので」
「そう言ってもらえると助かります。何飲みますか?好きなものを飲んでください」
「いいんですか?じゃあ…シャンパンにしようかな」
「僕もそれにします」

だから私もつい、許してしまう。

「LINEの返信も遅くなっちゃって申し訳ない」
「いえいえ。男性って仕事に没頭していると、連絡遅くなりますもんね…って、さっきから聖也さん謝ってばかりじゃないですか(笑)。せっかく会えたんですし、楽しい話をしましょうよ」

― 会っているといい人なんだけどな…。

そう思ったので、私は貴重なこのデートを楽しもうと決めた。面と向かって話していると、聖也に悪い点は見当たらないから。

「亜美さんって、本当に素敵ですよね。今までの女性だったら怒ったりするのにまったく咎めないし…。そういう女性、最高です」
「お仕事が忙しいのは、仕方のないことですから。むしろカッコイイじゃないですか!」

正直、聖也が何を考えているのかわからない。だから「フォアグラのテリーヌ」を食べながら、私は次にどう出るべきか考える。



今回も盛り上がり、2軒目に行くことに。

「亜美さんまだいけますか?」
「はい!…って、そろそろ敬語やめませんか?」

敬語をやめて、距離をさらに縮めてみた。

でも聖也は私のことをどう思っているのだろうか。興味がある女性だったら、積極的に誘ってくるはずだしちゃんと返信も早いはず。

「仕事が忙しい」という言葉も、どこまで信じれば良いのだろう。

そんな疑問がフツフツと湧いてきてどうすべきかを考えていると、2軒目でうっかり私は酔っ払ってしまった。

「亜美ちゃん、酔ってる?」
「ふふ、少し酔っちゃったかも」
「大丈夫?ちゃんと帰れる?」
「うん、大丈夫」

私がしなだれかかっても手も出してこないし、あくまでも紳士的な聖也。その対応は嬉しいけれど、紳士的過ぎて彼の本心が見えなかった。

― もしかして盛り上がっていたのは、私だけ…?

そう思うと急に冷静になってきた。

婚活をしていると、自分のことにさほど興味のない人に対して労力と時間を注ぐほど精神的に疲れることはない。

ある程度相手からの興味を感じられないと、時間も無駄。それに結果としてこちらが辛くなるだけ。

もう一度だけ食事へ行ってみたけれど聖也のスタンスはあまり変わらず、相変わらず返信も遅い。

― この人は、先に進める気がないんだ。

そう思い、私は早々に気持ちを切り替えて次の人を探すことにした。


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