男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:「彼女はいるんだけど、うまくいってなくて…」そう言って口説いてくる男の本音とは



金曜24時。

「麻布十番の二の橋までお願いします」

僕はタクシーの運転手に行き先を告げたあと、隣に座っている桃子に、もう一度確認を取る。

「本当に二の橋で大丈夫?家の前まで行くよ?」
「遠回りになっちゃうので、大丈夫です。昌也さんのお家、広尾ですもんね?」
「そうだけど…」

こんな寒空の下、女性を少しでも歩かせるのは申し訳ない。しかも、桃子は歩きづらそうな靴を履いている。

「別に家に上がったりしないから、家まで送ってくよ。遠慮なく言ってね」
「ありがとうございます。昌也さんって、優しいですね…」

桃子の大きな瞳が、僕に何かを訴えかけてくる。

今日のデート、確実な手応えしかない。それに次のデートの約束もしている。だから、今日は我慢してこのまま紳士的な態度を貫くと決めている。

「ここで大丈夫です!ありがとうございました」

桃子は、二の橋でさっと降りて、ひらひらと手を振ってきた。

これが、桃子との最後のデートになるなんて、この時の僕は思ってもいなかった…。


Q1:40歳で未婚。これって女からするとダメなの?


桃子とは、僕の友人・陸斗の彼女の紹介で出会った。

食事をする際に、陸斗の彼女が連れてきてくれたのが桃子だった。

「昌也のタイプ、先に伝えてあるから。可愛い子が来るよ」

陸斗から事前にそう聞いていたものの、実際に現れた桃子は僕のタイプだった。陸斗と彼女に、僕は心底感謝した。

「昌也は僕の大学時代からの友人で。本当にいいやつなんだけど、奇跡の独身だから」

陸斗から絶妙な紹介を受けていると、桃子は急に食いついてきた。

「昌也さんは、本当に独身なんですか!?」
「うん、そうだよ」
「こんな素敵な人がまだ独身でいてくれたなんて…」

過去に何かあったのだろうか。桃子はとにかく、僕が独身かどうかを気にしている。



「昌也さんは、離婚歴も一度もないんですか?」
「うん、一度もないよ」

大手IT企業に勤める僕は、今年で40歳になった。年収は1,200万を超えている。結婚に多少焦ってはいるものの、別に問題はないだろう。

「そうなんですね…。世の中の女性は、見る目がないですね!」

桃子の言葉に、思わず裏の意味を勘繰ってしまう。これは多少なりとも、僕のことをいいと思ってくれている…という意味で合っているだろうか。

昌也とその彼女のナイスパスにより、この日僕たちは楽しく1軒目を終えることができた。

「とりあえず、後でLINE繋げるから、あとは勝手に二人でやってね」

そして店を後にすると、昌也と彼女は「帰る」と言うので僕と桃子は顔を見合わせる。

「えっと…この後、どうする?もし時間あれば、もう1軒どうですか?」

僕の誘いに桃子は笑顔で頷く。

「もちろんです!行きましょう!どこか良いお店知っていますか?」
「僕が好きな店で良ければ」

こうして、僕たちは西麻布にあるお気に入りの店、『ウォッカ トニック』へ流れ着いた。



「昌也さんって、お洒落ですね。普段からこういう素敵なお店でよく飲まれているんですか?」
「いやいや、全然。普段はもっとカジュアルな店で、ひとりでビール飲んだりしているよ」

たくさん質問をしてきてくれる桃子のおかげで、僕たちの会話は途切れることなく続いていく。

「じゃあ昌也さん、お料理得意なんですか?」
「いや、得意というほどじゃないけど…。ひとり暮らしも長いし、なんでもできるよ。あと料理すると同時に片付けもするから、基本的にキッチンはピカピカかも」

家事が嫌いなわけではない。むしろ得意かもしれない。

「すごい…家も綺麗なんですか?」
「家も綺麗なほうかなぁ」
「奥さん、いらないですね(笑)」
「いや、それとこれは別だけど(笑)。でもある程度は家事ができる人がいいかな」

そんな会話をして、この日は解散することになった。そして2週間後。僕たちは初デートをすることになった。


Q2:完璧な流れのデートの中で、女が感じていた違和感は?


正式な初デートとして、僕は西麻布にある和食店のカウンター席を予約した。

「ここのお店、全部美味しそうですね」
「うん。何を食べても美味しいよ。とりあえず適当に決めちゃっていいかな?」
「はい、お願いします」

適当にいくつか頼んだ料理が出てきた後、僕は本題に入る。

「桃子ちゃんって、今は彼氏いないんだよね?」
「はい、いないです。昌也さんは?今誰かいらっしゃるんですか?」
「まさか。誰もいないよ!」
「そうなんですね。良かった」

― 「良かった」!?良かったって、なんだ?

8歳も年下の桃子に完全に惑わされている自分がいる。でもこの時間も嫌いじゃない。そしていい感じに日本酒も回ってきた僕たちは、2軒目へ行くことになった。

「桃子ちゃん、どこか良いお店知ってる?あればそこへ行こうよ。桃子ちゃんがどこへ行くのか、知りたいな」
「六本木に、よく行くワインバーがあって。そことかどうですか?」
「行こう!」

タクシーに乗り、僕たちは桃子が行きつけだという店へと流れ着いた。



通い慣れている様子の桃子は、店員さんとも親しげに話している。

「桃子ちゃん、行きつけなんだね」
「行きつけというか、実はオーナーが知り合いで。昌也さん、何飲みますか?」
「どうしようかな…ここ、ワインバーか…。実は僕、ワイン弱いんだよね」
「え!?そうなんですか?早く言ってくださいよ〜」

来る前に言えなかったけれど、ワインを飲むと二日酔いがひどくなるときがある。だから僕はワイン以外を飲みたかった。

「いや、一旦ワインで大丈夫」
「なんかすみません…ちなみに、ここつまみも美味しいんですよ!」
「そうなんだ。せっかくだし何か頼もうか。オススメはなんですか?」

店員にオススメを聞くと、「キャロットラぺ」だった。それをオーダーした後で僕たちはワインを飲み進める。しかし飲みながらつまみを食べ、僕は思わず言葉に詰まってしまった。



「あ…これ、もしかしてレーズン入っているタイプだった?」
「昌也さん、レーズン苦手でした?」
「レーズン、ダメなんだよね…。あとクリームチーズと野菜が混ざっているのもダメで」
「このキャロットラペ、全体的にダメじゃないですか」
「想像していた物と違ったな」
「とりあえず、ワイン飲みましょう!」

こうして桃子の乾杯に付き合っているうちにだいぶ酔いも回ってきた。

「桃子ちゃん本当に可愛いよね」
「そんなことないですよ〜」
「桃子ちゃん、今彼氏いないんだよね?僕とかどうかな」
「…もう少し、デート重ねてからでもいいですか?」
「もちろん」

完全に断られたわけではないし、この先も何度か会ってくれるという意味でもある。だから僕はこの先の二人の関係に期待をしてしまう。

「じゃあ今日は帰ろうか」
「そうですね」

お会計を済ませて外へ出る。そしてタクシーを拾い、桃子を乗せて送り届けた。

流れもスムーズで、悪いところはなかったはず。それなのに、このデート以降桃子からの連絡はかなりそっけなくなってしまった。


▶前回:「彼女はいるんだけど、うまくいってなくて…」そう言って口説いてくる男の本音とは

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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女が男に感じたことは?