男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:付き合いたての土曜夜のお家デート。完璧だったはずなのに、数日後に突然男が振られたワケ



突然、連絡が来なくなった。

マッチングアプリで出会い、2回デートをした奏多。最初は、奏多から“いいね”が来たし、デートに誘ってきたのも彼のほうからだった。

でも二度目のデート後、お礼を送り合った途端に連絡が途絶えた。

最初は「何かあったのかな」と心配をした。でもどうやら、彼は私に対する興味を失ってしまったらしい。

「こんなはずじゃなかったのに…」

誰もいない部屋でひとり、奏多からの連絡を待ち続けている自分が惨めになってくる。自尊心もボロボロだ。

20代の頃まで食事会へ行けば、いいなと思った相手から必ず連絡が来たし、ずっとモテてきた。自分で言うのもなんだけれど、スタイルだっていいし顔も悪くない。

ただ今年で33歳になる私は、まだ結婚できていない。

かなり焦っているのに、どうして真剣交際できる人が現れてくれないのだろうか…。


Q1:男女ともに、気がついていなかった女側の問題は?


奏多と出会ったのはマッチングアプリだった。

30歳を過ぎると急に、出会いの数が減った。周りが結婚し、食事会の数も減り、誘われても誘える子がいないので声もかかりにくくなっていく…という悪循環だった。

そんななか、マッチングアプリは私にとって救世主だった。いろいろな人に出会えるし、条件も細かく設定できる。

私の絶対に譲れない条件は、「20代後半から30代迄・年収1,000万以上・爽やか・最低限の大学を卒業している人」…という、東京だと当たり前の基準の人だ。

決して、高望みはしていない。

そして、ぴったりの条件の人が“いいね”を送ってきてくれた。それが奏多だった。



何度かやりとりを終え、まずはお茶をすることになった私たち。待ち合わせたホテルのカフェで、奏多は爽やかに私を迎えてくれた。

「初めまして、奏多です」

身長は180cmくらいある。合格だ。そして爽やかな笑顔も素敵だった。

「初めまして美咲です」
「写真と全然変わらないですね…むしろお綺麗です」

嬉しそうに私を見つめる奏多の視線が嬉しい。

元々学生時代ミスコンに出場していたくらい、私は容姿に自信がある。芸能人級ではないと思うけれど、「美咲ちゃんは本当に美人だしスタイルもいいよね」と褒められてきた。

「ありがとうございます」

そっと微笑みながら奏多を見つめる。すると奏多はよりいっそう嬉しそうな表情になった。

「本当に、美咲さんって綺麗ですね。よく言われると思いますが」
「いえいえ、そんな」
「お仕事は何をされているんですか?」
「私は美容クリニックの受付をしています」
「だから肌とかまでそんなに綺麗なんですね!」

奏多のキラキラとした視線が眩しい。真っすぐ見つめてきてくれる奏多を、私も見つめ返した。

「美咲さんって、アプリを通じて何人とお会いしましたか?」



実は、会うのは奏多で5人目だ。でも毎回、数回デートをしたあと、なぜか相手がフェードアウトする。

「5人目」と正直に言うと印象が悪いかもしれないと思った私は、微妙に数を減らして言うことにした。

「…奏多さんで、2人目です」
「そうなんですね。1人目の人はどうでしたか?」
「いい人だったんですけど、結局一度会ってお茶をして、それっきりでした」

マッチングアプリで過去に出会った人のことを、どこまで話すのが良いのかわからない。

でも奏多の反応を見ていると、私の答えは正解だったらしい。

「美咲さん、お綺麗だから絶対人気だろうなと思って。会ってくれてありがとうございます」
「こちらこそです。奏多さんも人気ですよね、絶対」
「いや、僕はどうなんですかね。でも真剣に出会いを探してます」

年収1,500万、明治大学卒の商社マン・35歳。

アプリ上での条件は素晴らしいし、爽やかで、実際に会ってみても性格も良い。モテないはずがない。

そして誠実そうときた。

― この人と、交際したい…。結婚したい。

そう思った。この日はお茶だけで解散となってしまったけれど、奏多はちゃんと次のデートも誘ってきてくれた。

「よければ、今度は食事しませんか?」
「はい、ぜひ♡」

でもこの次のデートで、奏多の気持ちはどうやら変わってしまったらしい…。


Q2:美人なのに毎回次に進まない女。デートの敗因は?


2週間後にやってきた奏多とのデート。私はこの日をかなり楽しみにしていた。このデートのために洋服も買い、ヘアサロンまで行った。

艶やかなロングヘアは巻いているかどうかわからないくらいナチュラルに巻き、化粧だってファンデは塗っているものの、まるで素肌かと見間違えるくらいの素肌感を意識しながら仕上げた。

その甲斐あってか、私をひと目見た途端に奏多は思わず息を呑んだ。

「…美咲ちゃんって、本当に美人さんだよね」
「ありがとうございます」

そういう奏多は今日はスーツで、それがまたよく似合っている。それに彼が予約してくれていた『酒家 の元』も素敵なお店だった。



「美咲ちゃんって、食べ物だと何が好きなの?」
「私は、こういう感じの和食が好きです!」
「本当?よかった〜。じゃあ店選びは正解だった…ってことかな?」
「はい、そうですね♡」

気が利くし、センスもいい。30代の独身男性で奏多みたいに条件がいい人は奇跡だ。彼を逃したら、また結婚難民になりそうだ。

だから私は、このデートを何としてでも成功させたいと思っていた。

「豚舌焼売」を食べながら、奏多の様子を観察していたけれど、奏多もだいぶ前のめりだし、私に相当興味があるらしい。



「じゃあ美咲ちゃんは、ひとりっ子なの?」
「そうなんです。だから兄弟とか姉妹がいる人が羨ましくて」
「そっかー…。僕、兄がいるんだけど。逆にひとりっ子が小さい頃は羨ましかったけどな」

話を聞いているうちに判明したのだけれど、奏多は東京出身で、しかも次男。さらに好条件だ。

「兄弟いるほうが楽しそうですけど」
「どうだろうね。まぁ兄貴のことは好きだけど。美咲ちゃんは実家には帰るの?」
「年に1、2回くらいですね」

私の実家は岐阜にある。帰るとしたら、お正月くらいだった。

「岐阜かぁ〜。ごめん、行ったことない(笑)」
「なんで謝るんですか(笑)岐阜、なかなか来る用事ないですよね」

奏多は会話上手で盛り上げてくれるので、一緒にいると楽しかった。

しかも会計時もスマートで、お手洗いから戻るともう会計が終わっていた。

「ありがとうございます」
「いえいえ。ここは男性が払うものなので」
「奏多さんって、素敵ですね」
「本当ですか?ありがとうございます」

こうして最後まで爽やかだった奏多とお店の前で解散した。すると、すぐに奏多から連絡が来た。

― 奏多:今日はありがとうございました!

すぐに返事すべきか悩んだけれど、翌日もLINEを続けたかったので、私は一旦保留にし、次の日の夕方に返事を打った。

― 美咲:こちらこそ、昨日はありがとうございました。

しかしこのLINEを送ったあと、奏多から返事が来なくなってしまった。

デートも盛り上がったし、そもそも最初は向こうから“いいね”を押してきている。だから、外見がタイプではなかったとかそういう話ではないと思う。

ここ最近、続いているこのパターン。やっぱり自分が歳をとってしまったから、モテなくなってきたのだろうか。

そうだとすると、もうどうしようもない。

この先どうすればいいのかわからず、私は鳴らないスマホを見つめている。


▶前回:付き合いたての土曜夜のお家デート。完璧だったはずなのに、数日後に突然男が振られたワケ

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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男がデート中にずっと疑問に思っていたコトは?