TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月〜金曜7:00〜)。11月28日(月)放送の「GENERATION」のコーナーでは、視聴者を交えて「FIFAワールドカップカタール2022」に見る“スポーツと政治の在り方”について議論しました。

◆熱狂の裏で巻き起こる外国人労働者&LGBTQ差別問題

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは、“スポーツと政治”。

この秋開催されている「FIFAワールドカップカタール2022」。日本代表は、強豪のドイツとスペインに勝利し、決勝トーナメントに進出。各国代表が熱い戦いを繰り広げています。

その熱狂の裏で、開催国カタールのスタジアム建設に関して、10年間で外国人労働者6,750人以上が死亡したと、イギリスの新聞紙「ガーディアン」が報じています。給料の未払いや炎天下での長時間労働など劣悪な環境があったとされています。

また、イングランドなど7チームがLGBTQなどへの差別反対を表現する「ワンラブ腕章」の使用を予定していましたが、「政治的なメッセージを禁止する」としてFIFAが警告し断念しています。

Health for all.jp代表の茶山美鈴さんは、イスラム法下における「カファーラ」という制度に言及。

これは外国人労働者の人権を蔑ろにする側面があり、2020年には改正されたものの、FIFAがカタールでのサッカーW杯開催を決めたのは、2010年。茶山さんは「2010年の時点でFIFAがこの法律の存在、そしてカタールがスタジアムの建設を行う能力があったのか、外国人労働者に対する人権を保障することができたのかなど多角的な視点から開催地を決めなければいけなかったと思う」と指摘します。

これに異を唱えたのはNPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さん。「そんなことを言ったら、(スポーツの国際大会は)先進国だけでしか開催できなくなる」と反論。スタジアム建設の際の6,750人以上とされる死者数についてはあくまで「ガーディアン」の報道であって、カタール政府は別の見解を示しているとし、「FIFAなり第三者機関がちゃんと調査するべき」とも。

その上で「それぞれの国が抱えている問題を、先進国やFIFAなどが上から目線で批判できるかと言えば違う」と主張。ドイツで同性婚が合法化したのは2017年で、アメリカ・フロリダではLGBTQに関する法案が今まさに議論されているところであり、「カタールに文句を言える権利がある国があるのか」と疑問を呈します。

問題は問題として対処する必要があるものの、先進国以外はスポーツの大会を誘致できない、できたとしても不当な扱いを受けることはあってはならないと訴え、「民主主義のプロセス、社会が発展するプロセスはそれぞれペースがある。成熟している国がそうではない国に『もっと早くしろ』と言うのは違う」と語気を強めます。

獨協大学特任教授の深澤真紀さんは、「イスラム教vs.先進・欧米というような簡単な対立構造にしてはいけない」と危惧。というのも、そもそもキリスト教的な価値観にも同性愛差別や女性差別は内包されていると説明します。

それを一部のリベラルな人たちが書き換えてきたものの、例えばアメリカで言えば、トランプ元大統領の支持者たちが同性婚に反対するなど「実は今、欧米は揺り戻しが起こっている」と言います。

近年、欧米ではセクシャルマイノリティを包括したモスクを作るなどの新たな動きがあるとし、「私たちはイスラム教に対する勉強が足りず、(理解が)遅れている。差別がある」と深澤さん。イスラム教が完全に多様化したわけではないものの、問題を一つひとつ考えていく必要があり、「“遅れたイスラム教”と“進んでいる先進国”という問題にするのではない」、「私たちが上から目線でいくのはおかしい」と訴えます。

さらに「そもそも欧米のスポーツビジネスの在り方自体が、オリンピック委員会やFIFAなどをモンスター化させてしまった。それを無視してカタールだけを槍玉にあげるのではなく、全ての問題を見ていかなければならない」と注視すべき点を挙げます。

大空さんは、深澤さんの意見に大きく頷き、「オリンピックにしろ、サッカーW杯にしろ、ある種の民間組織に権力が集中し、国家がそこにおもねる。その構造は全く正しくない」と訴えます。

大空さんとしては「何のためにやるのか」が大事であり、スポーツの政治介入についても、試合自体がネガティブに捉えられることを懸念。さらには「選手たちの努力が踏みにじまれてしまうような言論封じが一部ある。そういうものを持ち込まないことこそが大事であり、そもそもスポーツは政治と表裏一体」とも。

ちなみに、キャスターの堀潤は先日、パレスチナで女性のサポートをしている女性活動家の方と話をしたことについて言及。その女性活動家によると、イスラム世界で女性の権利が抑圧されているのはイスラム教における神「アラー」の教えではなく、政治的な色合いで後々慣習的に植え付けられたもので、本来の教義ではないと話していたそうで、堀は「スポーツイベントも非常に多くの政治的な思惑が渦巻いているなかで、こういった現象が議論されているということは、忘れてはいけないのではないか」と補足します。

◆スポーツで政治的な主張をすることは良くない!?

カタールの人口は約280万人。そのうちカタール人は約25万〜30万人で、労働力は外国人に依存しています。宗教はイスラム教であり、公共の場での飲酒禁止や同性愛行為は違法と定められています。また、外交については国際会議のホストやスポーツ大会の開催など積極的に推進しており、2030年までに先進国入りを目指しています。

Twitterスペースに参加していた視聴者からは「政治の問題も話としてはあるだろうが、それはそれ。選手の戦いとは切り離して考える必要がある」との意見があがりました。大空さんは「そもそも政治的な主張をしてはいけないというルールがおかしい」と声を大にします。

深澤さんも「そもそもFIFAは今回ロシアの出場を認めていない。それは完全に政治的な判断」と指摘した上で、あくまでも政治的利用に使うなというのは「国家が人権を抑圧するような政治利用はするべきではない」という意味だと力説。人権と政治は別という人もいるものの、「人権を守ることも政治。特に日本人は政治という言葉を忌避している」と持論を述べます。

そして、「今、私がお茶を飲むことも政治のひとつ。生きることと政治は一緒である」と自身の政治観を唱え「これを学生にすごく言いたい」と熱望。「政治のことを考えないのが正しいと思う風潮が、この20〜30年日本にある。特にスポーツの世界はそうで、今はスポーツウォッシングとか言われてしまっているが、それは本当に良くない」と案じます。

これに対し、大空さんは「それは上の世代の責任もある」と指摘。なぜなら政治的な対立に直面し、学生闘争などを行い、社会が大きく歪んでいくなか、生きやすい今の社会を作ったのはそうした世代だから。「それを変えていかないといけない。そのためには対立、対立と言っていてはダメで、フラットにしていかなければ」と訴えていました。

※この番組の記事一覧を見る <番組概要>番組名:堀潤モーニングFLAG放送日時:毎週月〜金曜 7:00〜8:00 「エムキャス」でも同時配信キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/番組Twitter:@morning_flag