TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月〜金曜 17:00〜)。3月28日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【“中瀬親方”による2024年3月のおすすめ作品】

◆関脇漫画「そうです、私が美容バカです。」著 まんきつ(マガジンハウス)

「アル中ワンダーランド」や「湯遊ワンダーランド」など人気作品多数の漫画家・まんきつが惜しみなく推し美容を描く“超・美容探求マンガ”。

中瀬親方のコメント「本作で描かれているのは、美容歴23年のまんきつさんが実際に自分で試してきた選りすぐりの美容法なんです。そんな本作の注目ポイントは、『美容オタクも美容に興味がない人も楽しめるギャグエッセイ』です。

本作は、お金をかけずにすぐ真似できる美容法や多くの人が気になっているけど、一歩踏み出すのにものすごく勇気がいる“切開リフト”とか“脂肪冷却”といった、興味はあるけれどもなかなか手が出ないもの、美容医療の実際の体験記をまんきつさんが実践して『こうなりました』っていう結果を、めちゃくちゃセンスのある漫画で描いていて爆笑なんです。

個人的には、まんきつさんが美容法にハマっていくきっかけになった、彼氏に無惨にフラれるシーンがあるんですけれども、ここが大好きで。あと、まんきつさんが漫画を描きながら、『あれ? ここだけ痩せていれば、別に他が太くても痩せて見えね?』とか、独自の美容法を編み出したり(笑)。

彼女の美容の大敵は、乾燥と紫外線はもちろんだけど、“面倒くさい”というのが一番っていう言葉がすごく胸に刺さりました。そして、美容に全く関心がない人でも、作中のぶっ飛んだギャグが痛快で、ギャグエッセイとしてもすごく完成度が高くて楽しめるところが魅力です」

◆大関短篇小説集「あいにくあんたのためじゃない」著 柚木麻子(新潮社)

過去のブログ記事が炎上して仕事を干されたラーメン評論家、夢を語るばかりで実際に行動には移さないフリーター、番組の降板がささやかれている落ち目の元アイドルなどを主人公に描いた、この世を生き抜く勇気がむくむくと湧いてくる、全6篇からなる短篇集。

中瀬親方のコメント「本作の注目のポイントは、『社会の重圧を吹き飛ばす、まさに“強炭酸・読むエナドリ(エナジードリンク)”』。各短篇はさまざまな社会問題や身近なトラブルが題材になっています。最初に出てくる『めんや 評論家おことわり』は、タイトルだけでもすごくパンチがあるんですけど、ラーメン評論家に苦しめられた人たちが団結して復讐する物語で、どういうふうに復讐が成立しているのか見てほしいです。

著者の柚木さんが描くこのようなドロドロとした人間の底意地の悪さっていうのはすごく昭和的なんですけど、一方で非常に一番新しいところでもあって、そして、現代のSNSなどの小道具を取り入れることで、より現代に通じるリアルな一面を生んでいます。

そんな時代を切り取っていくという部分では、柚木さんはいま間違いなくトップランナーの作家だと思います。他人に自分のイメージをつけられたり、勝手にラベリングされたり、そういったものに対して、日々感じる反発やモヤモヤってみんなにあると思うんですけど、そういうモヤモヤをすべて吹っ飛ばしてくれる、まさにエナドリを飲んだときのような、心と体に力がみなぎる作品になっています。

ちなみに、(6篇のなかのひとつ)『商店街マダムショップは何故潰れないのか?』は、昔から続く商店街によくある、“誰が買うんだろう?”って思うような謎の高級マダムショップの裏側を垣間見ることができるお話で、めちゃめちゃ好みでした。皆さんも、6篇のなかで好みの作品が必ず見つかると思いますので、ぜひお読みください」

◆横綱映画「オッペンハイマー」3月29日(金)より全国ロードショー

第二次世界大戦下、世界の運命を握った天才科学者オッペンハイマーは、極秘裏に進められた原子爆弾製造計画「マンハッタン計画」に参加し、世界初の原子爆弾の開発へ乗り出していき……原爆の父・オッペンハイマーの栄光と没落の生涯を描いた話題作。

第96回アカデミー賞では、クリストファー・ノーラン監督が作品賞と監督賞、キリアン・マーフィーは主演男優賞、ロバート・ダウニー・Jr.は助演男優賞を受賞したほか、撮影賞、編集賞、作曲賞と最多7部門に輝いています。

中瀬親方のコメント「この作品の注目ポイントは、『“鑑賞”というより“体験”! 映画の力を思い知る凄まじい作品』という点です。

本作は、原爆に関する直接描写がないことで、いろいろと物議を醸したんですけど、今回、日本での公開にあたって、広島と長崎で先行上映し、先に(作品を)観ていただいてご意見をもらったり、感想を聞いたり、配給会社は非常に丁寧な形で公開に踏み切りました。

とにかくオッペンハイマーの半生に焦点を当てた作品なので、(本作を鑑賞するにあたり)必要以上に繊細に身構える必要はないと思います。まずそれを踏まえて、いろいろな感情が渦巻いて簡単には咀嚼しきれないけれども、どう考えどう感じるか、作品を観て自分で判断してもらいたいです。

アカデミー賞で7部門を受賞しているだけあって、すべてに圧倒されるんですね。まず場面場面で緊張感やストレスを大いに感じさせて、多くの登場人物が織りなす網目をかいくぐるノーラン監督の映画づくりに対する情熱を感じます。

そして、原爆の父と呼ばれたオッペンハイマーの科学者としての性。(劇中では)アインシュタインとかたくさんの科学者が出てきて、そのやり取りがまた時系列も含めていろいろと複雑なんですけれどもすごく興味深い。そしてオッペンハイマーという人は、実はかなり女性にだらしなくて、自分勝手だったところもあるんですけども、その人間らしさを大胆に演じ切ったキリアン・マーフィーは、演技を超越していて、最後はオッペンハイマー本人の顔に完全に生き写しになったかのように見えてくるほどリアルでした。

人の英知を結集して、結局、人を滅ぼすものを生み出して、いわゆる科学でパンドラの箱を開けてしまった事実はやっぱりすごく怖いことだし、嫌悪を感じるんですけれども、この映画の力を思い知るには、ぜひIMAXシアターで観てもらいたいです。

原爆実験のシーンが出てくるんですけれども、そこでの映像や音響体験は、人間が神の領域を侵食した瞬間に立ち会ったかのような疑似体験をしてしまったんです。改めて、原爆の“こんなものを誕生させたんだ……”という恐ろしさが身に沁みわたる、映画史上に残るシーンだと思いました。

映画で交わされる会話の多くは専門的な内容で、登場人物も多いので、観る前にオッペンハイマーの史実を予習しておくと、もしかしたら観やすくなるかもしれません。オッペンハイマーはこんな悲劇的なことも経験したんだということも含め、ぜひ観てもらいたい映画となっています」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回4月のエンタメ番付は、4月25日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>番組名:5時に夢中!放送日時:毎週月〜金 17:00〜18:00 <TOKYO MX1>「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)メインMC:垣花正(月〜金)アシスタントMC:大橋未歩(月〜木)、ミッツ・マングローブ(金)番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/番組X(旧Twitter): @gojimu番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu